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35.妖刀を破壊し、新なる武器を作る

 とりあえず、危機は去った。

 総監部、そしてその建物に擬態していたシェイプシフターは、すべて倒した。


「悠仁……!」


 ももかと式神48人が、俺のもとへ駆け寄ってくる。


「なんか途中で色々あったけど……でも、やったのね?」

「ああ。それと……」


 俺は総監部で起きたことを報告する。

 父親――浅間しい男がシェイプシフターだったことも含めて。


「……そう。じゃあお父様は、敵側の人間……ううん、妖魔だったのね」

「ああ。どの段階で成り代わったのかはわからんがな」


 シェイプシフターは、擬態した人間の性格すら完全にトレースする。

 つまり――浅間家で行われていた蠱毒の儀式も、オリジナルのしい男が仕組んだ可能性は高い。


 ……とは、言わなかった。

 ももかは寂しそうにしながらも、口元をほんの少しだけ緩めていた。

 きっと「自分に酷いことをしたのはシェイプシフターであって、オリジナルではない」と思いたいのだろう。


『ありがとう、ゆーくん』


 ももかの式神・葛葉が静かに告げる。


『あの子のために、黙っててくれて』


 ……葛葉には察しがついているらしい。今も昔も、あの子の親はクズだということに。


『優しい嘘も、必要よね』

「……ああ」


 俺はももかに近づいた。


「ももか。おまえの妖刀についてだが……」


 妖刀には十八歳で死ぬ呪いがあることを告げる。


「え、知ってるわよ……?」


 きょとんとされる。そういえば妖刀使いは最初から告知されていたんだったな。


「皆を守って死ねるなら本望よ。それが何か変?」

「……浅間のような古い家柄は、生まれた時からそう言い聞かされてるから」


 咲耶がフォローを入れる。ったく……妖術界ってやつは腐りきってやがる。

 幼い子に「十八で死ぬ」と言い聞かせるなんて!


「ももか。おまえが死ぬ必要はない。俺の反則剣で妖刀を破壊すれば呪いは解ける」


 反則剣【自身】にはデメリットがない。ももかを縛る呪いだって――。


 だが。


「……駄目。妖刀が失われたら、誰が妖魔を倒すの? 桃美たちじゃ高位の妖魔はまだ無理よ」


「まあ、魔銀武器を装備した式神たちじゃ、二級妖魔が限界だな」


 帰蝶がため息をつく。


『二級を倒せてる時点で普通じゃないですけどね』

「そーなの?」

『そーですわっ』


 妖魔の等級なんぞよくわからんが……。


「とにかく、妖刀の呪いがなくなったら妖刀は使えなくなる。それは困る」

「……わたしも」


 咲耶が俺を見やる。

 彼女は妖刀との契約を破棄したせいで、すでに異能が使えなくなっている。


「妖刀がないと、お父さんを……皆を守れない」


 ……まったく、妖刀使いたちはどうしてこうも真面目なんだろう。だからこそ、応援したくなる。


「大丈夫。俺に任せろ。アイディアがある」

「「アイディア……?」」


「ああ。そのために……帰蝶、葛葉。二人にも協力してほしい」

『わたくしたち……?』

『一体、何を?』


 俺は告げた。


「魔剣を作る」

「「『『魔剣……?』』」」


「ああ。魔力を糧にして異能まほうを発動させる剣――それが魔剣。妖刀を、魔剣に生まれ変わらせる」


 現状の妖刀は、使用者の魂を糧に異能を発動させる呪いの剣。

 それを魔力を糧とする剣に変える。


「でも……お兄ちゃん。わたしやももかは魔力を持ってないよ……?」

「ああ。だから帰蝶たち、式神に魔剣のコアになってもらう」


「! そうか……式神は魔物と同じで魔力を持ってる……!」

「そう」


 剣がハード、式神がソフト。その組み合わせで魔剣を作る。

 ハードの元は、この欠陥品の妖刀だ。


『しかし勇者よ、新たな武器を創造できるのか?』

「ああ。ゼロから作るわけじゃない。妖刀から呪いを取り外し、帰蝶らを組み込むだけだ」


『しかしそうなると、本来の妖刀たちが黙っておらんのではないか?』

「知らん。咲耶、ももか、妖刀を貸せ」


 二人はうなずき、妖刀を渡してくれた。


「サンキュー」


 俺は欠陥品ようとうを手に取り、反則剣を出現させる。

 その瞬間――ぐらりと体から力が抜けた。


 ……気づけば、真っ白な空間にいた。


「なんだここ……?」

【ここは……精神世界だ】


 目の前には二本の妖刀が浮かんでいる。


「ほぉ……で?」

【何故呼ばれたか理解しているか?】


「知らん。誰だおまえら」


 妖刀から黒いモヤがあふれ出し、妖魔の姿に変わる。

 血でできたドロドロの怪物――桜。

 炎と氷をまとう鳳。


「おまえらが咲耶とももかの妖刀の意思か」

【しかり!】

「用件は?」

【貴様を殺す!】


 妖魔が襲いかかってきた。

 血の怪物が俺を押しつぶし、鳳が炎で焼いてくる。


【貴様さえいなければ処女の魂を食べ続けられた!】

【異世界の勇者など不要!】

【現代は妖刀だけで十分!】


 ……はーあ。


「うざ」


 ボッ……! 血の化け物が吹っ飛んだ。


【さ、桜ぁ……!!!!】


 あれが血の妖刀、桜の化身か。


「妖刀がいれば十分? ざけんな、産業廃棄物が」


 俺は鳳の化身へ歩み寄る。


【ひっ! く、来るなぁ!】


 鳳が炎と氷を吐く。だが俺は動じない。


【な、なぜだ!? ここは妖刀の精神世界! 妖刀以外は異能を使えぬはず!】


 俺の手には光の剣があった。


【そ、それは反則剣!? なぜここで!?】

「知るか。反則剣にはてめえらのルールは適用されない」


 鳳の眼前まで歩み寄る。


【ひ、ひいい! お願いします! ももかにはもう手を出しません! だからぁ!】

「なるほど、ももかには“手を出さない”か」

【そ、そう!】


 俺は反則剣を振り上げた。


「でも他の子には手を出すんだろ?」

【そ、それは……】


「だったら駄目だろ」

【ま、待て!】


 さっき吹き飛ばしたはずの血の妖魔が止めに入る。


【俺たち妖刀を消したらヤバいぞ! もう妖魔を倒せなくなる!】

「ば~~~か」


 鼻で笑う。


「妖刀がなくても、魔銀武器で倒せる。魔剣があればなおさらだ」


 俺は反則剣を突きつけた。


「古い時代の欠陥武器は用済みだ。消えろ!」


 反則剣が妖刀の力の根源を破壊する。


【【ぎゃああああああああああああああ!】】


 悲鳴を残して消え――俺は目を覚ました。


「お兄ちゃん……?」

「おう……どれくらい経った?」

「一分くらい……?」

「そか。悪いな、ぼーっとして」


 妖刀は沈黙し、邪悪な気配も消えていた。


「いくぞ。【錬成アルケミー】!」


 物質を変換する魔法を発動。

 咲耶の妖刀には帰蝶を、ももかの妖刀には葛葉を組み込む。

 まばゆい光が広がり――二本の呪刀は剣へと変わった。


 一振りは直刀。鞘には桜と幕の意匠。

 もう一振りは短い双剣。鞘には梅に鶯。


「おめでとう。血刀【桜】は血の魔剣【桜幕】へ。緋刀【梅】は緋の魔剣【梅鶯】へと進化した」


 咲耶が桜幕を、ももかが梅鶯を手に取る。


「力を吸われてる感じがしない……」

「これが……魔剣……すごい……! 握ってるだけで力があふれてくる!」


 異能も問題なく使えるようだ。よし。


「「ありがとうっ、お兄ちゃん(悠仁)っ!」」

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『捨てられ聖女は万能スキル【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる』

― 新着の感想 ―
他の妖刀は?合体して勇者に立ち向かえ(笑)
モチーフは花札か…
呪い刀は不要、魔剣に変えたか。 妖刀の意思も邪悪まものだったな。 七福塵って妖魔に与する存在なんかめ。 妖刀と世界ドア。 妖刀、他のも作り変えないと。 あと10本あるんだよな。
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