36.崩壊する東京を、止める
俺はシェイプシフターをぶっ倒し、反則剣をすぐさましまった。
「お兄ちゃん……すごいね! さっきの剣!」
咲耶が駆け寄ってくる。もう彼女を縛っていた呪いは消えていた。俺は安堵の息をつき、その頭をなでる。
「おう」
「それと……妖刀なんだけど……」
「ああ、もう抜け殻さ」
妖刀の呪いは解け、異能は失われた。
「そう……」
「あ、でも大丈夫。新しい武器はすぐ作れる。俺に一つ、アイディアがあるんだ」
「アイディア……?」
「おう。だから落ち込むな」
「……うんっ」
俺が散々やらかしたせいで、逆に「俺なら何とかできる」と信じてくれるようになったらしい。
『これで一件落着、かの』
「いや、まだだ。しい男以外の総監部連中が残ってる」
俺は咲耶を連れて奥へ進む。
やがて会議室のような場所に着いた。
障子扉が周囲に浮かび、その向こうに人の気配がある。
「よぉ」
俺が手を上げる。
「やっぱりな、シェイプシフターども」
「!? こいつらも……?」
「ああ」
障子扉の向こうで、やつらが歯ぎしりしていた。
「何故だ!? 何故貴様は帰ってきた……!!!!!!!!!!!!!」
「あん? 何言ってんの……?」
「貴様さえいなければ、【才賀レイ】様が天下を獲っていたのに!」
「才賀……レイ? 誰それ」
「我ら、逆異世界転移者の首魁である!」
ふぅん……才賀レイ、か。
「そいつも異世界から来たのか」
「そうだ。才賀レイ様が妖魔を率い、この世界を支配する! それを……勇者! 貴様が来たせいで、裏で進めていた計画がパーになった!」
切れ散らかすシェイプシフター。だが、俺には関係ない。
「貴様さえ帰ってこなければ……!」
「おまえ、それでいいのか?」
「なんだと……?」
障子扉がずる……と横にずれる。真っ二つに斬れていた。
「遺言だぞ、今の……」
扉の向こうに、顔なしの老人たちがいた。ぐしゃりと倒れていく。
「お、お兄ちゃん……今何したの……?」
「風の魔法……風刃で、ちょいと切った」
「これが……本物の風刃……。相手に気づかれないうちに命を奪う魔法……」
『あの鎌鼬とかいう雑魚が使う屑異能とは比べものにならんじゃろ?』
「うん……やっぱりお兄ちゃんは強い」
さて。
「総監部は皆殺し……いや、全員シェイプシフターだったわけだが」
「……まずいね。このことを知ってるの、わたしたちだけ。つまり……総監部殺しの犯人にされる。敵は日本政府、妖術界全体ってことに……」
「ん? だから? 異能者が何百と襲いかかろうが、この世界の連中総出で来ようが、問題ない」
咲耶は目を丸くしたあと、ぷっと吹き出した。
「それもそっか」
「おうよ。んじゃ帰ろう……」
と、そのときだった。
【許さん……ゆるさんぞぉおおおおおおおおおおおおおおおお!】
ごごごごごお……! 建物が振動する。
「な、なに!?」
動揺する咲耶の隣で、俺は結界を張る。
「おいおい……まだ生きてんのかよ……」
「生きてるって……まさかシェイプシフター!? 倒したのに!?」
「あいつ……分身をいくつも作れるんだ」
分裂し、その細胞のひとかけらさえあれば、何にでも化けられるのが奴の厄介なところだ。
総監部に化けていただけでなく、他にも化けていたらしい。
【こうなったら貴様を生き埋めにしてやる! この総監部本部……皇居ごとなぁ!】
『いかんぞ! やつは大黒柱にも擬態しておった! 失われれば建物は完全に崩壊する!』
【それだけじゃねえ! 皇居周辺……東京の地下にも擬態していた! つまり俺が消えれば! 皇居まるごと、東京の中心部も! ぜんぶ崩落だぁ!】
……やれやれ。
「俺を直接殺せないからって、人質作戦かよ……」
ずずずず……建物が沈む。東京の中心部が崩落し、大勢の人間が死ぬ。
「お兄ちゃん……もう駄目……」
「大丈夫」
【無駄だ! 反則剣は異能による傷しか治せん! 地盤沈下は異能じゃない! だからなおせない! はーっはっはぁ~~~!】
『ふっ……今度は我の出番のようじゃな……』
【なにぃ!?】
『我がただのリアクション担当ではないことを教えてやろう……』
ぴたり。地面の揺れが止まった。
「な、なに? 何が起きてるの……?」
「魔王が時間を止めたんだよ」
「じ、時間を止めた!?」
こんな手を残していたとは。
「【世界時間停止】。一部地域しか止められない時間停止の上位互換。失われし古代魔法だ」
古代魔法。それは異世界ですでに失われた奇跡の魔法。現代の俺は習得していない。
『魔力をかなり食うから、連発はできぬがの』
「おいおい、なんでバトルで使わなかったんだよ?」
『時間を止めて一方的になぶり殺すなど卑怯。我との神聖なる決闘で使う気はなかったのじゃ』
「なるほどね」
これで東京沈没は一時停止だ。
「でも……どうするの? 東京が沈む事実は変わらないよね……」
「今は止めてるだけだからな」
……ふむ。
「魔王、このまま止めといてくれ」
『承知した。どうするのだ、勇者よ……?』
「俺に考えがある。【転移】」
俺は転移し、東京の上空へ。
「さて……やりますか」
パンッ、と柏手を打ち、広範囲に魔法陣を展開。
「万象引斥力」
ずずずずず……。
『!? こ、皇居が……浮いていく!?』
『沈みゆく東京を重力魔法で浮かせておるのか』
『東京を浮かせる!? そんなこと……』
『極大魔法じゃ。修練を積んだ才能ある魔法使いだけが扱える超高難易度魔法。街を浮かすことも可能なのだ』
『で、でも東京の人たちは!?』
『安心せい。勇者が魔法で外に飛ばしておる。浮かせているのは無人の土地じゃ』
魔法で東京を上空へ打ち上げる。
「魔王、時間停止を解け」
『承知した』
浮かんだ大地が落下を始める。
【な、なんだぁ!? どうなってるのだぁ!?】
動揺するシェイプシフター。どうやら大地の中にまだ残っているらしい。
【まあいい! この土地ごと押しつぶしてやる! 死ねええええ!】
「死ぬのはてめえだ」
俺は反則剣を取り出し、構える。
『お兄ちゃん……何を!?』
「勇者の魔法は見せた。今度は勇者の剣術だ」
俺は光の剣を構えた。
「ガイアス流勇者剣術奥義……」
【くたばれぇええええ!】
光の剣を振る。
「陽光晴天衝……!」
魔力を込めた光の奔流が、大地をまるごと消し飛ばした。爆音と衝撃波。天地が鳴動する。
『ガイアス流勇者剣術……古の勇者ガイアスが残した剣。一部とはいえ東京を吹き飛ばす威力……ふっ、おぬしも奥の手を隠しておったか』
魔王が古代魔法を隠していたように、俺もこれを隠していた。塵も残らず吹き飛ばす威力ゆえだ。
『して……この後どうするのだ?』
「反則剣、発動!」
掲げると、失われた大地が元に戻っていく。地盤沈下も止まった。
『ど、どうなってるの……?』
「勇者剣術で街を壊した。で、反則剣で直した」
『……異能で壊して、異能の傷として治したのか!』
「そーゆーこと」
無論、シェイプシフターが擬態していた部分も治してある。
『……こんな派手なことしなくても修復でなおせなかったの?』
『ここまで広範囲は無理じゃ』
『そっか……』
剣術でシェイプシフターもろとも消し飛ばしたので……。
「これにて……一件落着!」
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