表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/85

34.総監部のゲスをボコる



 総監部のお偉いさんのところへ向かう俺たち。

 道中、雑魚妖術師が行く手を阻んでくる……が。


「そい!」

「ほい!」

「せーい!」


 とまあ、大抵ワンパンで倒していく。だが、どいつもこいつも弱すぎた。

 大抵は妖魔を操ったり、妖魔の毒で何かしたり……そんな程度。


 ももかや咲耶のように、自分で異能を発動できるような奴はいない。

 また、桃三ももみちゃんたち式神のように、結界術を使ったり魔銀武器で戦う連中もいなかった。


 結論。


「異能者って弱いんだな……妖魔より、圧倒的に」


 確信した。妖魔とまともに戦えるのは、妖刀使いだけだ。

 懲罰部隊の連中も、姿を隠したり毒を使ったりするから対人戦では強いのだろう。

 それでも、異世界の魔法や技術を持った奴には到底かなわない。


 ……だから俺は、次々とバチボコにしていった。


 やがて、広いホールのような場所に出る。そこにはひとりの男が立っていた。


「……来たか」


 腰に刀を差した、五十歳ほどの男だ。

 ほぅ……。


「妖刀使いか?」

「違う」


 咲耶が首を振る。


「なんでわかる?」

「……わかるから。明らかに違うって」

「????」


 俺にはわからん。あの刀が妖刀の可能性だってあるだろうに。

 まあいいか。


「うちの馬鹿娘が世話になってるようだな」

「…………馬鹿娘? 誰のことだ」

「ももかだ」


 ……ほぉ。


「じゃあ、あんたが浅間の当主か?」

「その通り。わしは【浅間しい男】という」


 しい男はニタニタ笑いながら俺を見る。

 ……キモいな、このおっさん。


「つーか、あんたが総監部の一人?」

「おお、そのとおりだよ。霧ヶきりがみねくん」


「……“くん”とかつけるな。キモいぞ、おっさん」

「それは失礼した」

「で、あんたは俺がここにいる理由、わかってる?」


 しい男は「いやぁ? わしには皆目見当もつかんなぁ~」とヘラヘラ言う。

 カスがよ。


「てめえら総監部が俺と咲耶を狙ってきた。だから文句を言いにきたんだ」

「それはすまなかったなぁ~」


 まだヘラヘラ笑いながら、しい男は言う。


「しかしそれはわしの命令じゃない。総監部も一枚岩ではなくてな。それぞれが思惑で動いておる。霧ヶ峰くんをよく思わない連中が命を狙ったんだろう。すまなかったなぁ」


 ……なんだこのおっさん。キモすぎる。

 敵意はないようで、あるようでもある。なんなんだ?


「おっさんは俺を処分しようと思わないのか?」


 情報を引き出すために会話を続ける。


「処分? とんでもない! 君は大事な大事な男だからなぁ」


 しい男がニタニタ笑いながら近付く。俺の前に咲耶が立ちふさがる。


「お兄ちゃんに近付くな、ゲスが!」


 しい男は咲耶を見て、ふんっと鼻を鳴らした。


「失せろ、散り際の花の分際で、わしに話しかけるな」

「……っ!」


 散り際の花……?


『どういう意味じゃろうな……こっちの言い回しか?』


 いや、聞いたことない。


「貴様とももかには、もう利用価値はない。わしらが求めるのは次の新芽。そのために必要なのは、強い遺伝子を持った男児なのだ」

「ふざけるな……!」


 咲耶が妖刀を抜き、切っ先を向ける。


「わたしはともかく……ももかは一生懸命に妖魔と戦っている! ももかを馬鹿にするな!」


 強化した咲耶が斬りかかる。しい男はため息をつき、最小限の動きで回避。

 そして腹へ掌底を繰り出す――ぱしぃっ!


「ほぉ! これを受け止めるか! やるなぁ婿殿ぉ~」


 にちゃあと笑うしい男。俺は顔面を殴ろうとする――が、咲耶を盾にしやがった。

 俺が拳を止めた隙に、間合いの外へ逃げる。


『性格はともかく、こやつは咲耶より剣の扱いが上手いな。……まあ無理もない。妖刀使いたちは強い武器を与えられた少女にすぎん。一方で、あやつは剣を習っている』


 確かに、間合いや先読み。剣の腕前だけなら咲耶を上回っていた。


「大丈夫か、咲耶」

「ふーっ、ふーっ……ふぅ……。ええ……ごめんね、お兄ちゃん。邪魔して」

「いや……」


 それより気になる。なぜ咲耶がここまで切れているのか。

 そして――。


「散り際の花って……?」

「ひひひっ、なぁんだ婿殿は知らんのかぁ!」


 しい男が笑いながら言った。


「妖刀使いはなぁ、みな十八で死ぬのだ!」

「…………………………は?」


 何を……言ってやがる、このおっさん。


「十八で死ぬ?」

「そうだ! 妖刀は若い処女の魂を喰う! 十八を過ぎた女は、妖刀に魂を食い尽くされて死ぬんだよ!」


 ……。

 …………。

 ………………なんだよ、それ。


「さ、咲耶……嘘だよな……? でたらめだよな?」


 咲耶は十六歳。もし本当なら、あと二年で……。


 咲耶は、ふるふると首を振った。


「ほんとだよ……。妖刀使いは十八で散華。妖刀に魂を喰われて死ぬの。そういう契約を妖刀と結んでいるの……」

「…………」


 嘘だろ……十八で死ぬ……?

 俺の妹が……?


『勇者よ! 気をつけろ!』


 しい男が迫り、俺の首に何かをつけてきた。


「ひひゃはっはあ! かかったなぁ阿呆がぁ!」


 黒革のベルト――【隷属の首輪】。


「それは呪具! 隷属の首輪! つけられた者は主に絶対服従! ひっひひ! 最強の種馬を手に入れたぞぉ!」


 しい男がゲラゲラ笑う。


「貴様のような強い遺伝子を持った男が欲しかった! ももかが貴様に懸想していることも把握済み! あとは子供を産ませれば、ももかは用済みだぁ! いひひひ!」


「お兄ちゃんを解放しろ!」


 咲耶が斬りかかる。しかし、剣術の腕はしい男の方が上。かわされ、殴り飛ばされる。


「貴様も用済みだ、散華者め。非術師の家庭から生まれ、妖刀に選ばれた希有な存在と思っていたが……たいしたことなかったなぁ」


 倒れる咲耶へ近付くしい男。


「そぉうだ、妾にしてやろう! 婿殿の子を産ませれば浅間の家は安泰よ!」


 ゲス笑い。


「知ってるぞぉ! おまえも兄に懸想してるんだろぉ! よかったなぁ、好きな男に孕ませてもらえて!」

「黙れ」


「え? ぷぎゃぁあああああああああ!」


 俺はしい男の顔面をぶん殴った。顔は発泡スチロールのように砕け散る。

 何度もバウンドし、転がるしい男。


「な、ぜぇ……なぜ主に逆らうぅ……」


 倒れるしい男の前で俺はベルトをつかみ、力づくで引きちぎる。


「こんな呪具で、この俺が支配されると思うか……?」


 解呪なんて使わない。物理で十分。


「てめえ……咲耶を傷つけやがって……!」


 ごぉおお……と魔力が吹き荒れる。


『勇者よ、サクヤに言われておったじゃろう? 力をセーブせいと』


 無視して進む俺。


「ひ、ひいぃ!」


 しい男が剣を振る――刃は触れる前に、ぱきぃんと折れた。


「刀が折れた!?」

「そんななまくら剣術で俺が傷つくと思うか!」


『これはいかんな。怒髪天とはこのことか。サクヤは我が守ろう』


 魔王が現れ、咲耶の前に結界を張る。


「存分に征くがよい」

「ああ」


 さらに力を解放。魔力の嵐。


「かわいそうにな、浅ましい男よ。おまえは手順を間違えた」


 魔王が言う。


「泣いて土下座し、どうか力を貸してくれと誠意と敬意をもって懇願すべきだった。それを……操り人形にしようとした」


 俺はしい男の胸ぐらをつかむ。


「貴様の敗因はただ一つ……怒らせちゃいけない男を怒らせた」


 俺はしい男を天井へ投げ飛ばす。

 どごぉん! と突き刺さるしい男。


 飛び上がり、魔力を込めた拳で殴りつける。


 どごぉん!


 殴る、殴る、殴る……!


 ドガッ!

 ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

★新連載です★



↓タイトル押すと作品サイトに飛びます↓



『捨てられ聖女は万能スキル【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる』

― 新着の感想 ―
八宝菜じゃなかった時点でろくでもないとは思っていたがやっぱりかー
妖刀の製作者が、異世界のアーティファクト、ワールドドアの製作者と同じ名前ってのが気にかかる。 妖刀もアーティファクトなんか? なら、使用者の魂奪うのは、改悪で足された要素? そんな要素は削除だ。
妖刀なんて産廃以下のゴミだから、全部へし折って、溶かして、フライパンにでもすれば、再利用できそう。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ