33.魔法で皇居破壊
皇居に侵入する俺たち。
総監部連中は、この地下にいるらしい。
懲罰部隊の男から記憶を読み取り、入り口へ向かう。
「ここ……?」
咲耶が困惑気味に尋ねる。俺たちが立っているのは、皇居の中にある池だ。
「どうやらこの池が転移門になってるらしい」
「そうなんだ……前と違う……」
咲耶がここに来たときは、また別の入り口だったらしい。
「入り口は定期的に変わるんだと」
「なるほど……でも、どうやって入るの? 池に飛び込むの?」
「読み取った記憶によると、登録された妖術師を感知して、池の水が左右に割れて中に入れるようになるらしい」
裏を返せば、招かれざる客である俺たちでは、その仕掛けは発動しないということだ。
「じゃあ、どうするの?」
「こーすんの」
俺は右手を前に突き出し、火の魔法を発動した。
どごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!
ぶしゅうううううううううううううううう!
『なるほど、火の魔法で池の水をすべて蒸発させるのか。さすがじゃの』
水が消え、札で作られた門のようなものが姿を現す。あれが入り口だろう。
「……お兄ちゃん。今のめちゃくちゃ大きい炎、なに? 火の上位魔法?」
「え? ただの火球だけど?」
「……………………ほんっとさぁ~……」
咲耶が大きくため息をつく。え、なに……?
「ももかの炎の異能でも、池の水を全部干上がらせるなんてできないんだけど」
「それはももかが修行不足なんじゃないの?」
「ももかは! 妖術師の中で最高の炎の使い手なのっ!」
「? え、だから?」
またため息。
「……お兄ちゃんってほんと、常人じゃない」
『その通り。こやつは人間じゃないのじゃ』
ひどくない?
……まあ事実だしな。
「そうだ、咲耶」
「なに?」
「この先は敵がたくさんいるだろう。俺はお前を守る」
「う、うん……ありがと……」
あれ、なんで顔赤らめてるんだ?
「でも、おまえは俺を守らなくていい。俺の身に何かあったら、自分の身だけを守れ。いいな?」
「…………」
妹が、少しすねたように唇をとがらせる。
「……つまり今のわたしじゃ、お兄ちゃんを守れないくらい弱いって言いたいの?」
「んー……微妙にニュアンスは違うけど、まあそんな感じ」
あんま気を遣っても意味ないだろうから(この子には特に)、はっきり言う。
「俺や親父を守ってくれてたことには感謝してる。本当にありがとう。だからこそ言う。咲耶、今のお前は弱い」
きつい言い方になっただろうか……。
すると咲耶は、ふふっと微笑んだ。
「そっか」
「? 怒らないの? 馬鹿にしやがってって」
「ううん。だって異世界帰りのお兄ちゃんと比べたら、私たち妖術師が弱いのは事実だし」
「そっか」
咲耶が続ける。
「でも今の私は、なんでしょ?」
「おうよ」
俺は笑って妹の頭をなでる。
「鍛えていけば、将来はもっともっと強い女の子になれるさ」
「……将来、か」
咲耶が、少し寂しそうに笑った。
「どうした?」
「……ううん。いいね、未来に……希望を持てるのって……」
「……?」
それじゃまるで、未来に希望を持てないみたいじゃないか。
『我もそう感じた。どうにも咲耶は、将来を考えていないように思えるのじゃ』
……将来を考えてない? どういうことだ?
『わからん。じゃが異世界にもおったぞ。咲耶と同じ顔をしたやつらが。今ここで死ぬ覚悟を決めた、嫌な目をした連中を。我は幾人も見てきた』
死を覚悟、か。常住戦陣って意識か、それとも別の理由か……。
「早く行こうよ、お兄ちゃん」
「ん。ああ……」
俺はうなずいて札に触れる。すると、一瞬で別の場所へ飛ばされた。
「おお、やっぱ転移の術か」
そこは長い廊下。武家屋敷を彷彿とさせる造りだ。どこまでも続いている。
……で。
「予想通り、熱烈歓迎ってことね」
廊下には虫がうじゃうじゃ待ち構えていた。妖魔の頭に札が貼られている。
一斉に虫怪どもが襲いかかってくる。
「火球!」
どごぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!
炎の玉が虫怪どもをなぎ払い、爆風が地面も天井もベキベキと引き剥がしていく。
「よし」
「よしじゃないよっ! お兄ちゃんっ!」
咲耶が声を荒らげる。
「どうした?」
「ここ! 皇居!」
「おう、そうだな。で?」
「皇居壊しちゃ駄目でしょ!? 人住んでるんだよ!?」
あ、そういやそうだった。
「あんま派手な魔法は使えんな。万象斥引力とか禁止か」
「なにその物騒な名前の魔法!?」
「え、超重力で広範囲の敵を潰す魔法だけど」
「ぜっっっっっったい使わないでねっ!」
まあ確かにここ人の住処だしな。強すぎる力は封印しとこう。
『次が来たぞ』
廊下の奥からひゅんっと何かが飛んでくる。
「わかってるよ」
ぱしっ、と俺は正面からそれを受け止める。
「矢!? 狙撃!?」
「みたいだな」
ばきっ、と矢を手で砕く。
「ふはははっ、かかったな阿呆がぁ!」
黒装束の男が奥から現れる。
また懲罰部隊のお出ましだ。
「その鏃には毒が込められておるのだ!」
「へえ、毒」
「そうだ! 妖魔の毒を流用した、インド象でも一発で倒れる猛毒だ!」
「ほーん……なんかゲームで聞いたことあるな、そのフレーズ」
「なにぃいいいいいいいい!?」
懲罰部隊の男が驚く。
「ば、バカな!? なぜ毒が効かない……へぶし!」
俺は男の顔面にパンチ。野球ボールのように吹っ飛び、天井に突き刺さった。
「しまった、また家壊しちゃった」
敵相手に手加減って難しいなぁ……。
「お、おまえ……どう……なってる……? 毒は……?」
「俺、外出るときは状態異常無効の魔法かけてるからさ」
『毒使う魔物なんて普通におったからの。とりあえずかけとくのはエチケットみたいなもんじゃ』
なー? と俺と魔王が言うと、男は気絶。咲耶があきれ顔。
「いやほら、皇居壊してないでしょ。そんなに……ね? ね?」
「はぁ……インド象でも倒れる毒を無効化するとか……」
「心配ご無用、たいした毒じゃなかったし。この魔法で防げない毒使いなんて、普通にいたし向こうじゃ」
「そういうことじゃない……」
じゃあどういうことだってばよ……?
「もういいよ。先いこ」
「お、そうだな。修復も忘れずにっと」
壊した天井も一発で直す。
「ん? どんだけ壊しても修復で直るから、いいんじゃね?」
「やめて、ほんとやめて」
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