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32.総監部に、カチコミ

 総監部に殴り込みに行く。今までは黙って見逃してきたが、俺はともかく、咲耶にまで手を出してきやがったからな。


 夜。場所は皇居上空。ここに妖術総監部の本拠地があるらしい。


『しかし、どこに入口があるのかの?』

「妖術で隠蔽されてるわ。基本、総監部の連中しかわからない」


 ほぅん。


「咲耶は行ったことないのか?」

「あるけど、そのときは総監部の手下に呼ばれてだったし」


 なるほど。つまり咲耶も入口は知らないわけだ。


「ま、問題ないけどな」


 俺は封絶界を展開する。皇居全体を、すっぽりと包み込むように。


『なるほど、燻り出し作戦じゃな』

「そーゆーこと」


 いくら間抜けな妖術師の集まりでも、これだけの異変には気づくだろう。で、護衛が出てきたら捕まえて、お偉いさんのところまで案内させりゃいい。


 やがて、ぞろぞろと黒装束の連中が出てきた。


『間抜けが釣れたようじゃな』


 懲罰部隊の連中は、頭上を飛ぶ黒龍――魔王を見てガタガタ震えている。


「ひぃ!」「な、なんだあれは!?」「特級妖魔か!?」


 随分と阿呆な連中だな。


『特級の妖魔が、おぬしらみたいな雑魚妖術師に見えるわけなかろうに』


 懲罰部隊は妖刀すら持っていない。あれでは四十八の式神以下だ。

 俺は魔王の背から飛び降りる。


「よぉ。俺が誰かわかるな?」

「霧ヶ峰悠仁……」

「正解。じゃあ雑魚の皆さん、俺を案内してもらおうか。総監部のお偉いさんたちのところに」


 懲罰部隊は動揺しつつも、懐から札を取り出す。


「ここが戦場なら、実力差を理解しないやつから死んでくぜ」

「だまれ!」


 ずずずぅ、と空間から何かがにじみ出てくる。


「また魚妖か」

『虫怪もおるようじゃな』


 魚に虫けら。それを操るのがこいつらの戦法か。なんだ、その程度か。うちの妹の方がよっぽど強いぞ。


 ……なのに、なぜ総監部は咲耶を殺そうとしたんだ?


 怒りよりも困惑が勝った。答えが欲しい。

 胸の奥に湧いた「なぜ」という疑問を解き明かしたかった。


「はぁ!」


 咲耶が妖刀を抜き、魚妖どもを蹴散らす。


「お兄ちゃん! 何ぼうっとしてるの!?」

「……悪い。ちょっと考え事をな」

「そんな余裕ある?」


 咲耶が苦笑する。……咲耶。


「なぁ……」


 なぜ総監部は咲耶まで処分しようとした?

 問いかけかけて、やめた。咲耶が答えを知っていても、口にするはずがない。

 やはり答えは総監部のお偉い連中に直接聞くしかない。


「食らえ! あの化け物を!」


 討伐部隊が妖魔を操り、俺を攻撃させる。


「氷天雪地!」


 瞬間、吹雪が吹き荒れ、魚や虫どもが凍りついた。


「助太刀にきたわよ、悠仁!」


 ももかと式神たちが武装して現れる。いつの間に――。


『わたくしが応援要請しておきましたの』


 ひらりと、帰蝶が咲耶の前に姿を現す。なるほど、そういうことか。


「ここは私が片付ける! さっさと本部へ行きなさい!」


 ももかの氷の異能で魚妖が凍りつき、鈍った虫どもは式神たちが次々と串刺しにしていく。

 これなら任せておける。


「さんきゅー、ももか」


 俺は近くに倒れている懲罰部隊の男の頭に手を置く。

 記憶を読み取る魔法で、アジトへの入り口を突き止めた。


「咲耶、行くぞ」

「うん!」


 俺はももかたちに後を任せ、秘密の抜け道へと向かった。

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『捨てられ聖女は万能スキル【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる』

― 新着の感想 ―
…まさか…マッチポンプパターンか?
これもう総監部はとっくに特級妖魔に乗っ取られてていいように誘導されてない…?
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