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26.俺の魔力量がヤバかった

 四十八人の幼児術師たちを、俺の式神にした。

 そもそも幼児術師たちは、妖刀使いであるももかと比べて、スペック面で劣っているらしい。


 幼児術師たちの能力は――

・結界の構築(ただし構築に時間がかかる)

・霊視(妖魔を見つける。ただし弱い妖魔しか見えない)

・妖魔への耐性(多少ある。だが肉体は強化されない)


 ……はっきり言って、妖刀使い以下。非術師と大差ない。


「すごいです、神兄様! 身体の底から、力があふれ出てきます!」


 桃三ももみちゃんが自分の身体を見ながら言う。

 彼女ら四十八人は、魔力経路パスを通して俺の魔力が供給されていた。


「まずは、魔力操作の基本技からやってみるか」


 俺の目的は、彼女らを妖魔と戦えるレベルに育てること。

 そうすれば妖刀使いたちの負担が減るからな。


 俺たちがいるのは、浅間の家の訓練所(土蔵)。せっかくだし、ここを使わせてもらおう。


「魔力には、強化の性質がある。魔力を全身に巡らせることで、身体は頑強になり、また腕力や脚力が向上する」


 俺は魔法で岩の壁を作り出し、それを人差し指で突く。

 どごぉおん!


「なんという怪力……!」「さすがかみにーさま!」「おつよい!」「かぁっこい~♡」


 きゃっきゃと幼児術師たちが歓声を上げる。

 いや、まだ力を試しただけなんだが……。かっこいい要素どこにあるんだ。


「とりあえず今は魔力があふれ出てる状態だ。それを外に出さず、身体の中にとどめる感じに」


 魔力操作――文字通り、魔力を自在に操る技術。

 これを覚えることで、身体を強化したり、魔法を使うことができる。

 まずは魔力を動かす感覚を覚えてもらわないといけないのだが……。


「むずかしい……」「全然うまくいかないわぁ」


 みんな魔力を出しっぱなし状態で、制御ができていなかった。


「まあ、一朝一夕でできるもんじゃねえからな。俺も最初の一年くらいは、ひたすら魔力操作の修行したし」


 だが欲しいのは即戦力だ。俺は全員の身体からあふれていた魔力を、強制的に身体の中にとどめた。


「悠仁、なんだか、あの子達からあふれてた力が外に出なくなったように見えるんだけど」


 とももかが言う。


「おう。俺が遠隔で魔力操作を行ったからな。外に出ないように」

「へえー……そんなことできるんだ」


 すると魔王が口を挟む。


『いや、普通なら無理じゃな』

「「え!?」」


 そうなの!?


「なんでお兄ちゃんが驚いてるの……?」


 咲耶さくやが呆れ顔。


「え、だ、だって遠隔魔力操作なんて簡単だろ……?」

『それは勇者のセンスが抜群に優れているからできることじゃ。通常、魔力は自分の身体から離れたら操作できん』


「まじか……。俺、魔法を出した後にも普通に操作してたけど」


 たとえば火球ファイアー・ボールを飛ばし、敵が逃げたら軌道修正……なんてよくやってたけど。


『普通それができんのじゃ。通常は魔法発動時に命令を加える。発動後に操作はできんのじゃ』

「そうだったんか……」


 てっきり普通にできるもんだと思ってた。


「すごいです、神兄様! めちゃくちゃ凄い技術をお持ちなのですね!」

「すさがです!」「やっぱりかみにーさまはすごい!」「常人にはできないことをやってのける!」「そこにしびれます!」


 四十八人の美少女から褒められまくる……。なんか恥ずかしいなこれ……。

 歩けただけで「えらいね!」って褒められた子供時代を思い出す感覚だ。


『ともあれ、これで彼女らの身体の中に魔力が巡ってる状態になったの』

「おう。桃三ももみちゃん、ちょっとこれ殴ってみて」


 俺は再び岩の壁を作る。

 ももみちゃんは躊躇なく壁を殴りつけた。

 どごぉおん!


「す、すごい……! こんな分厚い岩の壁を、たやすく砕いてしまいました!」

「これが、魔力操作による身体強化だよ」


 おー! と幼児術師たちが歓声を上げる。


「すごいわ悠仁。これなら、この子たちが妖魔との戦闘で命を落とす確率がぐっと下がるわ!」


 魔力で身体が頑強になった。これなら妖魔の攻撃にも耐えられるだろう。


「でもお兄ちゃん……。思ったんだけど、この子たちって魔力を自分で操作できるわけじゃないんでしょ?」


 咲耶さくやの言葉に、俺はうなずく。


「そうだな」

「戦いの時、自分の意思で魔力を出せないのって致命的じゃない?」


「え、俺が彼女らにずっと魔力を供給しつづけ、かつコントロールすれば良いだけの話じゃないか?」

「???????」


 咲耶さくやが困惑していた。


「そ、そんなこと……できるの? ずっと他人に魔力を流して、かつコントロールなんて」

「できるよ」『できんよ』

「どっちなの……!?」


 咲耶さくやが混乱する。


「いやいや、魔王さんよ。できるだろ」

『普通はできんよ。そんなことしたら魔力切れを起こすわ』


 魔王が解説する。


『体内魔力量には普通は限りがあるのじゃ。おぬしも最初はそうじゃったろ?』

「そうだな。でも訓練で量を増やしたんだ。結果、魔力切れが無くなった」


 はぁ……と魔王がため息。え、なに……?


『あのな、勇者よ。魔力量はほんとは増やせんのじゃ』

「え!? そうなの!?」


『うむ。正確には三歳までなら魔力量を増やせるが、それ以降は増えんのじゃ』


 あれぇ? そうだったの!?


「でも俺、増えたけど……。あれだろ、魔力を空になるまで使って、そんで世界樹ユグドラシルしずくを飲めば魔力量が増えるんだろ」

『なんじゃそれは!?』


 魔王が驚愕する。


「いや、俺、聖武具なしってことで王都を追放されたんだ。そのとき地下に捨てられてさ」

『地下……』

「うん。地下で世界樹を見つけて。その樹からしたたり落ちる雫を飲むと体力も魔力も回復してよ。魔力を消費→雫で回復を繰り返してたら、いつの間にか魔力切れしなくなった」

『……なんということじゃ』


 はぁ……と魔王がまたため息。なんだよ……。


『世界樹は異世界に九本しかない特別な樹じゃ。その存在は秘匿され、まず見つからん』

「はぁ……普通にあったけど」

『地下の奥深くに世界樹があるとは誰も思わんのじゃ。そしてその雫で魔力量を増やす方法など、聞いたことがない。異世界の常識が根底からひっくり返るぞ!』


 そ、そうなんだ……。この訓練法、そんな新発見だったのか……。


「なんでお兄ちゃん、異世界行ってきたのに、異世界のこと知らないの……??」


 咲耶さくやのド直球質問。


「いや仲間もいなかったし、現地ガイドもいなかったから、異世界の常識わからないんだよな……」

「そう……異世界【でも】ぼっちだったんだね……」


 やめて、咲耶さくやさん。そんな哀れみの目で見ないでっ。


『まあ何はともあれ、主には無限に等しい魔力量がある。二十四時間、四十八人に魔力を供給し続け、コントロールしても問題ないじゃろう』


 まあ、日常生活のときは魔力が邪魔だろう(強すぎて)。

 そのときは魔力供給オフにすればいい。


「お兄ちゃん、魔力を使えるってことは、この子達も魔法が使えるってことよね?」

「理論上はな」


 俺はアイテムボックスから初心者向けの魔導書を取り出す。


「ほい、魔導書。それを全部読んで理解すれば、魔法が習得できるぜ」


 桃三ももみに渡すと、彼女は首をかしげる。


「神兄様。これ……なんて書いてあるのか、わかりません……」

「え?」


 俺が覗くと、普通に読める。だが咲耶さくやは首をかしげていた。


「日本語じゃないわ」

「え、まじ……? 俺の目には日本語に見えるんだけど……」


 そこで魔王が言う。


『当然じゃ。おぬしは召喚勇者だからの。勇者達は儀式で次元を渡る際に、脳の構造が作り変えられるのじゃ。その結果、異世界語を自在に読め、しゃべれるようになるんじゃ』

「!? そうだったのか!」


 だから異世界で文字も読め、言葉も通じたのか。


『この子らは召喚者じゃない。だから異世界語をまず理解するところから始めねばならん』

「こっちの人たちが魔法を習得するのって……もしかしてめちゃくちゃ難易度高い?」

『激高いの。まず異世界語を習得、その後に魔導書を理解し、自在に操れるようになるために訓練をする……。初歩の火球ファイアー・ボールを覚えるだけで、現実世界の子らなら五十年はかかるじゃろうな』

「ご……!?」


 そんなにかかるのかよ……。


「さすがです、神兄様っ!」


 桃三ももみちゃんが尊敬のまなざしを向けてくる。


「一般人では五十年かかる代物を、ソンナお若いのに習得してらっしゃるなんて!」

「すごぉい!」「やばぁい!」「すごすぎー!」


 四十八人がキャッキャと褒めてくる。

「お兄ちゃんって……自分がどれだけ凄いのか、全然理解してないのね……なんでなの?」

『まあ、異世界の常識を教えてくれる仲間や師がいなかったからじゃのう』


「そう……異世界でも陰キャボッチだったから……」


 咲耶さくやさん、その目やめてっ。お兄ちゃん泣いちゃうから。

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『捨てられ聖女は万能スキル【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる』

― 新着の感想 ―
サクヤがまじでうっとおしい
26話にして異世界ボッチだったことが判明してて草
クソみたいな召喚でも流石に異世界語翻訳はデフォルトで付いてたか
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