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25.美少女たちを俺の式神(下僕)にする



 四十八人の幼児術師の面倒を見ることになった。結構な大所帯だ。

 拠点はここ、調布にある浅間の家。


『ゆーくん』


 と、葛葉が近付いてくる。


「……あの子らが生きてると知れば、妖術総監部がいよいよ出張ってくるわよ。ここは浅間の当主であり、総監部の一人……ももかの父の管轄だから」


 ……なるほどね。


「妖術総監部って、どこにいんの?」

「皇居よ」

「こ、皇居ぉ~」


 どういうことだってばよ。


『一般人に知られてないけど、皇居の地下には城があるの。そこが妖術総監部の拠点。日本政府はそのことを隠してるけど』


 ……なるほどね。妖魔ばけものの存在を、日本政府と総監部は隠したいわけだ。

 パニックになったら困るから。


『ゆーくんは死んだはずの四十八人の幼女たちを蘇生させた。そして、育てようとしてる。これだけ大きなことを浅間の家で行おうとすれば……』

「総監部も、黙っちゃいないってわけだ」


『ええ。近く、【懲罰部隊】が来るわ』

「ちょーばつぶたい……?」

『総監部直属の妖術師集団よ。総監部の意に沿わない術師に処罰を与えるの』


 ふーん……。


「ま、問題ねえよ。来るならウェルカムだ。こっちから行く手間が省けるしよ」


 総監部の拠点の正確な場所はわからないので、現状、転移で飛べない。

 けど懲罰部隊のやつがこっちに来れば、そいつから記憶を抜き取って、転移を使える。


 だから……ま、とりあえず今はほっとく。


『懲罰部隊を畏れないなんて……さすがね、ゆーくん』

『ま、それ以上の強者と、こやつは何度も戦い、死線を乗り越えてきておるからな』


 と魔王が得意げに言う。まあ、その強者代表である、おまえと戦って勝ったしな。


「お兄様」


 と、幼児術師四十八の一人、眼鏡をかけたおとなしそうな子が近付いてきた。


「おう。えっと……君、名前は?」

「はい、三号と申します」


 …………。

 ………………三号?

 なんだ、そりゃ……。


『先ほどももかが言っておったじゃろう。蠱毒の呪術を生き残ったものに、【ももか】の戸籍と名を与えるとな』


 ! つまり……。

 彼女らは名前を与えられてないってことか。


 番号で呼ばれてたってことか……。

 本当の名前を奪い、番号を与え、それで呼び合わせる……。


 ほんと、総監部連中はゴミだな。それをよしとするんだから。

 番号呼びって。囚人かよ。ふざけやがって。


「どうかしましたか、お兄様?」


 三号が小首をかしげる。


「いや……。なんか、かわいそうだなって。番号呼びなのが」

「まぁ……」


 つつつう~……と三号ちゃんが涙を流す。


「私たちを哀れんでくださっているのですね……。ありがとうございます、神兄様……」

「な、なんだよ神兄様……って」


「我ら四十八人の幼児術師にとって、貴方様は救いの神。よって、今後は神の兄……神兄様と呼ばせていただきます!」


 は、はずい……なんだ神って……。やめてくれよ……。


「かみおにーちゃん!」「かみにーたまぁ~♡」


 と残りの四十八人たちも、俺を神と呼ぶ。ひぃい……やめてぇ……。


『モテモテじゃの』


 魔王の奴、絶対楽しんでるだろ……!

 ったく……。


「やめさせてくれよ、三号ちゃん」

「無理です♡ 我らにとって貴方が救いの神であることは事実ですので。神兄様♡」


 もう救っちゃったからなぁ……。変えられないのかぁ。うーん、止めて欲しいんだが……。


「…………」

咲耶さくやさん痛いです痛い痛い痛い脇腹つねらないでっ」


 本物の妹が、めちゃくちゃ不機嫌そうに、俺に当たってきた。


「デレデレしちゃって……。ロリコン」

「ちげえよ!?」


 デレデレなんてしてないよ!? お兄ちゃん!

 三号ちゃんはニコニコしていた。


「うぉほん。で、名前についてなんだけど……やっぱあった方が良いと思うんだ」

「まあ、でしたら、神兄様がおつけになってくださいまし」


「俺が?」

「ええっ」


 ぞろぞろと、四十八人の幼児術師たちが集まってくる。みんなうなずいていた。


「ええーっと……」


 そんな急に名前をつけろって言われてもなぁ。

 わくわくとした目で、三号ちゃんたちが俺を見てくる。うーん……。


 ももか、三号……。

 もも……3……。


「よし、じゃあ、君は桃三ももみちゃんだ」

桃三ももみ……素晴らしい名前です! 神兄様っ!」


 気に入ってくれたようだ。

 ん……?


「なんか、今身体から、力が少し抜けたような……」

『!? ほほう、これは……なるほど……』


 魔王が何やらつぶやいていた。


『なるほどの』

「なんだよ……」

『いんや。その調子で、四十八人に名前をつけてやるのじゃ。さすれば、おぬしにとって都合のよいことがおきるぞ』

「都合の良いこと? ってなに」

『ふっふっふ、それは後でのお楽しみじゃわい』


 なんなん……?

 まあ、いいか。俺はその後も、幼児術師たちに名前をつけていく。


 二桃にとう桃三ももみ四桃しとう桃五とうご……。

 全員に、桃をつけてあげた。どうやらももかを名乗ることが、彼女らにとっての憧れだったらしい。


 ちなみに一号は、いない。一号が現在のももかだからだ。


 で、四十八人のももかたち、全員に名前をつけ終わった。


「なんか……身体がだるい……」

「!? お兄ちゃん、大丈夫? 熱?」


 咲耶さくやが俺を心配してくれた。


「大丈夫。なんかちょっとだるいだけだ」

「……いろいろあったもんね。今日はもう寝ましょう」

「そーだな」


 そういや、今日ももかの家に泊まりに来てるんだったな。いろいろあって忘れそうだったけど。


「!? ゆ、悠仁っ。悠仁ぃ! 大変よぉ!」


 ももかが声を張り上げる。え、なに……?


 ももかの隣には……なんか、凄い美少女が立っていた。

 みんな、ももかに顔が似てる。それも全員だ。


 い、いやいや……さすがにこれおかしいだろ!?


「なんでみんなももかの顔してるんだよ!?」

「それは、おぬしが名をつけたからじゃな」


 魔王が人間姿で顕現し、桃三に近付いて、じろじろと見やる。


「やはり。おぬしと、この四十八のももかたちとの間に、魔力経路パスが通っておる」

「ぱ、魔力経路パス……?」


 なんだそりゃ……?


「文字通り、魔力の通り道じゃ。こやつらに名をつけたことで、勇者とこの四十八人の間に、魔力の通り道ができたのじゃ。これにより、この子らはおぬしから魔力供給を受けておる」


 ……なんだそりゃ!


「なんで名前つけただけで、魔力が共有されるんだよ」

『我ら魔物には、そういうシステムがあるのじゃ。配下となるものに名をつけることで、主と配下の間に魔力経路パスを作り、供給するというシステムがの』


 そんなのあったのかよ!

 つーか……。


「俺魔物じゃあないし、この子らも魔物じゃあないだろ」

『ふむ……。そうなんじゃよなぁ。じゃから、不思議なのじゃ。魔物でもないおぬしが、一体どうして』


 すると、葛葉が言う。


『多分だけど、この子達、ゆーくんの式神になったのかも』

「式神に……」


『ええ。名をつけて、配下とし、力を与える。それは……式神契約と似てるわ』


 なるほど、と魔王がうなずく。


「つまり、勇者はこの四十八人に名をつけたことで、少女達を自分の式神にした。勇者の魔力をこの子らに分け与え、結果、進化したというわけじゃの」


 なるほど……。


『人間を式神にしちゃうなんて、前代未聞よ。普通は、帰蝶や葛葉わたしみたいな人外と結ぶものだし』

『前代未聞ですわ……。ナニモノですの、この人……』


 代々妖刀使いたちに仕えてきた式神がそういうんだから、まじで人間を式神にした例はないんだろう。


「ああ、やはり……神兄様は素晴らしい、特別なお方ということですねっ!」


 桃三がそう言うと、他の子らも「かみにーさますごい!」「天才かみにーさまっ」と褒め称える……。いや……。


「ももか、それに……おまえらも。みんな同じ顔で……嫌じゃあないか?」

「「「ぜんぜん」」」


 と全員が否定する。


「アタシたちは元々、運命共同体! 姉妹だもの! 顔が同じでも、全然変じゃあないわ!」

「そうです、ももかお姉様の言うとおりです! ね、皆さん!」


 うんうん、と幼児術師たちがうなずく……。まあもう、幼児じゃあないんだが。


「神兄様の式神げぼくとなれたこと、本当に嬉しく思います♡」

「いやげぼくって……よせよ。お前達をそんな風に見るつもりないから」


「ああっ! なんと慈悲深いおかたっ! 優しくて素晴らしいですっ!」


 そんな風に全肯定されてる姿に、咲耶さくやが「きも……」と辛辣な言葉を吐く。


「ああ……咲耶さくや、違うんだよ。別にプレイを強要してるわけじゃあないだよ!?」

「お兄ちゃんご主人様プレイとか……マニアックすぎるでしょ」


「違うんだってばもぉお!」


 こうして、四十八人に名前をつけたことで、彼女らを俺の式神にしたのだった。


『それにしても、式神を四十八体も作れるなんて、これもまた前代未聞ね』

『式神は主を分けて作られる。通常なら一体作るだけでもやっと。四十八体も作れるなんて、もはや異次元、規格外すぎますわ……』

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― 新着の感想 ―
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顔は一緒だが性格が違えばずれてくるやろう。某ミサカミサカうるさいクローンみたいに
せっかく48人いるのに顔は一つになるのはもったいないなと思いました、 九割九分九厘つまらない要素でしかないな、と
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