19.学校に隠れ潜む妖魔をワンパン
体育の授業で目立ちまくってしまった……。めちゃくちゃ嫌な予感がするぜ。で、放課後。校舎裏にて。
「おいクソ陰キャ……てめえ、調子乗ってんじゃあねえぞ」
「……だから速いんだってば、フラグ回収が」
俺の目の前には、クラスの男子たちが居た。正確に言えば、俺のクラスにいた野球部員たちだ。放課後、そそくさと帰ろうとした俺を、こいつらが引き留めたのである。
『こやつらを無視して帰れただろうに。なぜのこのこついてきたのじゃ?』
魔王が脳内で話しかけてくる。……まあ、別に付き合う必要はないんだけどさ。
『ちょっとばかし気になることがあってさ』
『ほぅ……なにか考えがあってのことなのじゃな? ならば、我は静観しよう』
「助かるよ」
「てめクソ陰キャぁ……! 調子乗ってんじゃあねえぞゴラァ……!」
クラスの野球部員が5人。仮に部員A~Eとしよう。Aが俺に詰め寄って、襟首をつかみ上げてくる。
「別に調子乗ってないよ」
「ざっけんな! おれらより目立ちやがって! 女子からキャアキャア言われてよぉ! 嫌がらせかぁてめぇえ……!」
いや、キャアキャア言っていたのはももかだけなんだが……。(ももかと咲耶は妖魔退治があるから帰って行った)
「嫌がらせなんてしてないよ。そりゃあんたの勘違いだ」
びきぃ! とAの額に血管が浮かぶ。
「むかつくんだよぉ! ちょっと前まではクラスの底辺だったてめえがよぉおお! クラスカーストトップの野球部員さまに口答えしてんじゃねえぞゴラァアアアアアアアアアアアアアアアア!」
『ちょっとこの若者、キレすぎじゃあないかのぅ……』
「だよな」
『む……? どういうことじゃ……?』
野球部員Aが持っていた金属バットで俺の頭をぶち抜こうとする。
「えーっとお……なんだっけ。そうだ。【此の地、此の時、此の空を隔つ。外界の目と耳、声と足を退け、我らが戦場を――理で封ぜよ】」
ずぉおおお! 一瞬で俺たちの周りに結界が展開される。
『これは、妖術師が使っておった認識阻害の結界……封絶界とやらだな』
『見よう見まねでやってみたんだが、ま、なんとかなったな』
『おお、さすがじゃな。おぬしは力の流れを読むのが得意じゃったな』
体内を流れる魔力。その流れを見れば、大抵の魔法(術)は見抜ける。見抜けるということは、模倣・再現できるということだ。俺はももかが封絶界を構築したところ(解いたところ)を見た。だから真似できる。
「これで多少暴れても問題ないな」
「死ねぇええええええええええええええええ!」
バットを振り下ろすまでの間に封絶界を構築し終えた。さて……。
「てい」
俺はバットを避けてAにカウンターを叩き込む。
「ぷげらぁあああああああああああああああああああああ!」
Aはぶっ飛んで地面を何度もバウンドする。しゅうう……とAの腕から黒いモヤが出て、とさ……と何かが地面に落ちる。
『これは……妖魔か! 蛇の形……あのピッチャーに憑いていたのと同じ妖魔!』
その通り。しかしまたしても魔王が妖魔の気配に気づけなかった。蛇の妖魔の潜伏がうまいのか、人に憑く妖魔の気配は探りにくいのか……。
「敵さん、怒ったようだな」
野球部員全員の腕に蛇の妖魔が巻き付いていた。妖術師ではないので名前や種類は不明だが……。
「問題ねえな……」
「死ねクソ陰キャぁ……!」「てめえはクラスの端っこでぶひぶひ言ってろ豚がよぉお!」
封絶界で他人から見えなくなっている。なら激しくやってもいいか。バットで殴りかかってくる野球部員たちを、俺はひょいっと回避し……。
「デコ……ピン!」
「ふんぎゃぁあああああああああああああああ!」
Bが吹っ飛び、腕の妖魔が消える。
ガキィイイイイイイイイイイイイン!
「うげぁあ! 腕がぁ……! 腕がぁああああああああああ!」
「あー……悪いな。避けなくて」
対物理障壁が自動展開し、後ろから殴りかかったCとDの攻撃を防いだ。鋼鉄より堅い盾を殴った反動で、腕は粉々になっただろう。
「ほい、小回復」
腕の骨は治しておいた。妖魔は障壁を殴った反動で消滅。残りはEだけ。
「ひ、ひぃいいいい!」
『完全に戦意を失っておるの』
「みたいだな」
「おい、野球部の部室ってどこだ?」
「な、なななな、ナンダよ急にぃ!?」
「だから、野球部の部室だよ。つれてってくんない?」
にこっと笑っただけでEは何度もうなずいた。
「わっ、わかった! だから殺さないでぇ! ひぃい!」
『オドされたって思ったんじゃろうな』
殺さないっての。俺は平穏に暮らしたいし、弱いモノいじめが大嫌いなんだよ。
『ああ、おぬしは聖武具なしだからという理由で、異世界の連中に虐げられておったからの』
「そーゆーこと」
Eに連れられ部室へ。部室には他の部員がいるはず。妖魔に憑かれていたのがこいつらだけとは思えない。
部室到着。部室棟は体育館から離れた校庭の端っこ。荒事になりそうなので封絶界を再展開。入ろうとして……ぴた、と止まる。
「封絶界、張っといてよかった」
「え? な、なんだって……?」
俺はEを抱えて後ろにジャンプ。
ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!
「ひぃい! ぶ、部室が爆発したぁ……!?」
部室が木っ端みじんに吹っ飛んだ。無論、俺がやったんじゃない。入る直前に爆発したのだ。
『ほぉ……ふしゅー……このワタクシめの攻撃を避けたか……運の良い奴だ……ふしゅしゅ~……』
『でかい、蛇のモンスターじゃな』
下半身が蛇の巨大な妖魔がそこに居た。異世界のラミアに似ている。ラミア(暫定)が俺をにらむ。
『ふしゅ~……。貴様だな、ワタクシの可愛い可愛い子分たちを滅していた、なぞの妖術師はぁ~』
「そうだよ。あいつらの親玉がいると思ってな。退治に来たって訳だ」
『ふしゃははは! 退治ぃ~? このワタクシにかなうとでも思ってるのかぁ!? ふしゅしゅ~!』
魔王がため息をつく。
『愚かな奴よ。彼我の実力差もはかれぬとは』
『ふしゃははは! てめえはここで殺す! くらえええ!』
ラミアが俺をにらみ、周囲が石になり始める。
『ふしゃー! どうだぁ! これがワタクシ【石喰い】の能力!』
「ふぅん、視界に入れた相手を石にする能力ってところか」
『ふっしゃっしゃ! そうだぁ! どうだ怖いだろぉ? 恐ろしいだろうぉ? 死にたくなければ、ワタクシの可愛い子分の宿主になりなっさーい!』
「やなこった」
『な、なぁ!? なぜ貴様ぁ! 石化せぬのだぁ!』
「異常回復の魔法使ったからだよ」
『魔法だと!?』
異常回復は状態異常を回復する魔法だ。
『なんだそれは!? この能力は何十人もの妖術師を全員石に変えてきたのだぞ!?』
「俺は妖術師じゃあねえからな……で?」
「これで終わりか?」
『ぐ、ぬ、くそぉおおおおおおおおおおおおおおおお!』
ラミアが尻尾を叩きつける。俺はパシッと受け止める。
『な!? バカな! トラックを粉砕する一撃を片手で止めただと!?』
「異世界初心者ならともかく……異世界帰りの勇者に、トラックの一撃が効くかよ」
ぐいっと尻尾を引っ張る。ぶちぃい!
『うぎゃぁああああああああああ! 尻尾がぁあああああああああ!』
『ま、待て! 近付くなァ! この野球部員の命はないぞぉお!』
ラミアの体の中に人間がいた。
『どうやら妖魔に取り込まれてしまったようじゃの』
「なるほど。妖魔に憑かれるといずれああなるのか」
『ふははは! おまえ、殺せぬだろぉ!? ワタクシを殺せばこいつも死ぬぞぉ!』
「火球」
どがぁああああああああああああああああああああああん!
『ば、かな……ノータイム……だと……? 人質が……いた……のに……』
取り込まれた部員は無傷。
『ばか……な……あんな爆発に巻き込まれ……無傷……だと?』
「ん? 特定の誰かを魔法で傷つけないよう魔力操作しただけだが?」
『残念じゃったな、妖魔よ。相手が悪かったよ』
『ち、くしょぉお~……』
妖魔が塵となって消えた。多分滅せたのだろう。
「悠仁!」「お兄ちゃん!」
遅れて二人の妖刀使いがやってくる。
「お兄ちゃん。総監部から連絡があって、ここにやばい妖魔が潜伏してるらしいわ」
「なに? まだあの蛇妖魔のほかにもいるのかよ?」
咲耶がぽかんとした顔。
『ねえ、ゆーくん。もしかして……下半身が蛇の妖魔と戦った?』
「え、おう。あの雑魚妖魔な」
葛葉もぽかーんとしていた。
『雑魚って……お前何言ってますのっ!』
帰蝶が声を荒らげる。
『それは……石喰い! 何十人もの妖術師や妖刀使いを喰ったことのある、とてつもなく強い妖魔ですわよ!?』
「あー……なんかそんな名前言っていたなあいつ……。しかし、アレが強い……?」
「全然雑魚だったぞ」
「すごいわっ! 悠仁っ♡ 石喰いやっつけちゃうなんて! ちょーすごーい! 素敵~~~~~~~~~~~♡」
ももかが俺に抱きついてくるのだった。咲耶はハァ……とため息をつき、「ほんと……お兄ちゃんが、バケモノ過ぎる……」とつぶやくのだった。
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