14.浅間ももか、ピンチを勇者に助けられる
《ももかSide》
アタシ、浅間ももか。高校1年生。
優秀な妖刀使いを輩出する名門、【浅間】家の現当主。
……まあ自慢じゃないけど、超がつくほどのエリートだ。
妖術総監部も困ったときにはすぐアタシのもとに泣きついてくる。
アタシは頼られている。日本の未来を背負っている。
他の十一人の雑魚妖刀使い(まあ一部だけは認めてやってるが)とは、一線を画す天才。
そんな天才ももか様は、東京・大田区へやってきていた。
「このあたり?」
アタシの肩の上には、1匹の子狐が乗っている。
この子は葛葉。代々、浅間家に仕える式神だ。
『そうねぇ……この近くに咲耶ちゃんと、あの強そうな人の匂いがするわぁ』
葛葉は鼻が利く。相手を追跡したり、強さを測ったりできる。正直めちゃくちゃ優秀な式神だ。これ以上ない最高の相棒。
そして……アタシの妖刀、緋刀【梅】。
死花十二刀の中でも突出した異能を持つ一本だ。
緋刀【梅】と葛葉。この二つを使いこなすアタシこそ、最強の妖刀使いなのだ。
……アタシ以上に強いやつなんて、いてはいけない。
『あらあら、気が立ってるわね。冷静さを欠いたら、大けがしちゃうわよ?』
「ふん、怪我なんてするわけないでしょ」
『そうねぇ……』
葛葉が後ろを向く。
アタシは手に持った緋刀【梅】を、鞘から抜いた。
がきぃん!
「ふん……」
背後を見ると、虫怪が凍りついていた。
緋刀【梅】の異能で、凍らせたのだ。
『ひーふーみー……十体ね。さすがももかちゃん。一瞬で十体の虫怪を凍らせるなんて』
「ふん! こんなので褒められてもうれしくないわよ」
そのまま進む。
葛葉が霧ヶ峰咲耶の家を案内する。アタシは友達でもないので場所は知らない。
『……ももかちゃん! 気をつけて……血の匂いがする。それに……強い妖魔の匂いも』
「! ふっ……」
アタシは笑った。やっとエリートにふさわしい相手が現れたようね。
葛葉に敵の場所を聞き、現場へ急行する。
「うぐ……」「いでえ……」「腕がぁ……」
一般人が何人も倒れている。腕や足に深い切り傷。黒いモヤのような陰の気が体から漏れている。
『ももかちゃん! 来るわ!』
一陣の風とともに、1匹の妖魔が現れる。
イタチのような姿だが、尻尾が折れ曲がった刃――鎌のようになっている。
『鎌鼬だわ! 名持ち《ネームド》よ!』
特別な力を持つ妖魔は識別名を与えられ、名持ちと呼ばれる。
「…………」
手に汗がにじむ。体が震える。でも……これは武者震いだ。
「ふんっ。やっと、このアタシにふさわしい敵が現れたじゃないの」
妖刀を構える。名持ちを討てば浅間の名はさらに高まる!
死んだ母様、姉様、妹たちも喜ぶわ!
「さぁ、鎌鼬! いざ尋常に勝負!」
緋刀【梅】には身体強化の型はない。だが……そんなものなくても無敵の異能がある!
鎌鼬は風に乗り超高速で迫る。
『鎌鼬は風を操る。風に乗って斬りかかってくるわ』
強いが、その能力は判明している。
ガキィン!
「ギギ……?」
「おっそいわねぇ」
鎌鼬の鎌を受け止める。目にもとまらぬ速さのはずだ。
「残念だったわね。アタシの緋刀【梅】の能力よ」
ぱきぱきと鎌鼬が凍っていく。
「緋刀【梅】の能力は熱操作。一の型【氷天雪地】は、あたしの領域に入った敵の熱を奪う」
奪った熱は刃に蓄えられる。
「死になさい……!」
一刀両断。奪熱で動きを止め、蓄熱した刃で斬る――。
「緋刀【梅】こそが最強よ」
鎌鼬は塵となって消える。
『今のやつ……妖術師を50人も食ってるわ……』
「そう……」
強敵だった。アタシは黙祷する。
母様、姉様、妹たち。喜びなさい。アタシが討ったわ……。
「いやぁ、強いねお嬢ちゃん」
「!?」
そこに作務衣姿の男――人間のようだが。
『逃げて、ももかちゃん。そいつが……鎌鼬の本体! さっきのは分体よ!』
本体は分体より強い。
「おれの鎌の1本が壊れた。いいねえ、強くて活きのいい女だ」
五本のうちの一本が分体……つまり本体は五倍の強さ。
「おれは威勢いい女が泣き叫ぶ姿が大好物なんだぁ~……」
悪寒が走る。これは武者震いじゃない……怖い……いや、違う!
「【氷天雪地】!」
冷気のフィールドが発生する。
「近づけば凍らせるわ!」
「近づかなかったら意味ないんだろぉ?」
びょうっと風が吹いた。
ぼとり……。
「ひ、きゃぁあああああああああああ!」
腕が……! 妖刀ごと、両腕が切断されていた!
「いい声で啼くなぁ……」
『ももかちゃん!』
葛葉が動くが、式神は物理攻撃できない。フィールドも消えている。
「……両手両足の指、すべてが鎌になるんだよ。分体は小指の鎌で作った一本さ」
つまり分体の二十倍の強さ……!
『ももかちゃん!』
「……葛葉。逃げて。総監部に知らせて」
『子供を置いて逃げられるわけないでしょ!』
「逃げなさいよ馬鹿!」
寒い……熱が逃げていく。死が近い……やだ……怖い……
「これで……終わりだ……!」
鎌鼬の鎌が降る。
ガキィン!
「……え?」
黒髪の男子高校生が立っていた。
「おいおい、ひとんちの前で何騒いでるんだよ」
彼は鎌を刃ではなく背でつまんでいた。動きを完全に見切って……!
「通りすがりの高校生だ」
「まあいい、餌が増えた!」
鎌鼬が引き抜こうとするが――。
「!? 抜けぬ! なんてパワー……くそっ!」
鎌を折って脱出する。
「力は強くとも、速さではこの鎌鼬様には及ばない!」
地面を蹴り、姿を消す。
『速い! 匂いが追えない!』
姿は見えない。
「今のうちに逃げて! あんたじゃ勝てない!」
「いやぁ、そりゃ無理だな」
「なんでよ!?」
「傷ついてる女の子、ほっとけないだろ?」
……そんなこと、初めて言われた。
「それに怪我してるじゃん。早く治療しないと」
「ぎゃはあ! 死ねぇ!」
男子が手を払う。
パァアアアアアアン!
「ふんぎゃぁああああああああああ!」
鎌鼬は吹き飛んだ。張り手一発で。
「うるせえな。蚊かよ」
「……うそ」
分体の二十倍の本体を……張り手で……!?
「なに……あんた?」
「俺? 一般高校生だよ」
「いや……あんたみたいな一般人いるわけないでしょ!?」
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