12.魔法で分身を作り妹を休ませる
屋上で妹のレベル上げをした。
一限目が終わるころには──。
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【名前】霧ヶ峰 咲耶
【種族】人間
【レベル】10
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この通り、一気にレベルは10倍になった。
『勇者の補助魔法あってこそじゃな』
「どーゆーこった?」
『我が見ている限り……妖刀が魔物と相性悪いのじゃな』
「相性が悪い?」
『うむ。妖刀は妖魔特攻──つまり妖魔にだけ効果を発揮するらしい』
なんだそりゃ。
「でも……わたし、魔物倒せてるよ?」
『それは勇者の補助魔法がかかっておるからじゃ。妖刀をお主の魔力が覆っておる。それで倒せるのじゃ』
裏を返すと、俺の魔力なし(補助魔法なし)では、妖刀装備の咲耶は魔物を倒せないと。
「ようするに、魔物でのトレーニングには、世界扉と俺の魔法が必須ってわけか」
『うむ。咲耶でそれなら、ほかの妖刀使いも同じじゃろう』
ほかの妖刀使いか。
「そーいや妖刀って何本あるんだ?」
「12本だよ」
「12……少なくないか?」
咲耶の話では、現代で妖魔を倒せるのは妖刀持ちだけだ。
つまり、現代で妖魔を倒せるのは12人しかいない。
「12人で世界中守るなんて無理じゃね?」
「妖魔はほぼ日本にしか発生しないの」
「ほぉん? 海外では?」
「全くないわけじゃないけど、日本ほど頻繁じゃない。だから妖刀使いは日本限定」
「なんで日本だけ?」
「……わからないの。一切解明されてない」
「へぇ……」
一説では日本は陰の気が溜まりやすいとか、大災害が多いからとも言われているが、確証はないらしい。妖術師は人手不足でもあるそうだ。
「12人は全国に散らばって、妖魔が出たら近くのやつが倒す」
「妖刀使い以外は?」
「妖魔観測とか、結界で遠ざけるとか」
なるほど。
「東京はおまえ一人で守ってるのか?」
「……ううん。他にもいる」
「協力すればいいのに」
「……みんな、個性が強いから」
ふぅん。本当の理由じゃなさそうだ。
『それはどうして?』
『兄貴の勘ってやつだ』
まぁ、そのうち会うだろう。全員国内にいるんだから。
「そろそろ一限目が終わるわ。戻らないと……あ……」
くらりと咲耶が崩れかける。
「よっと」
倒れる前に抱きとめる。
「大丈夫か?」
「…………」
顔が赤い。風邪か?
『いや、風邪じゃないと思うぞ、勇者よ』
魔王がくっくっと笑う。なに?
「なんで赤い?」
「……お兄ちゃんがかっこいいから……」
「え?」
「なんでもないっ! 離れて!」
ぐいっと押しのけられるが、またふらつく。
「なんでそんなふらふらなんだよ」
「……関係ない」
ふと気づく。妖魔は夜出る。夜戦って、昼は学校。……寝不足じゃないか?
「図星か。夜は妖魔退治、昼は学校……そりゃ体調崩すわ」
「嫌。妖刀に選ばれたから、やらないといけない」
責任感の強い妹だ。
「いいから寝なさい。【睡眠】」
咲耶がかくんと眠る。
『おねえさまっ! 何を!?』
「大丈夫。眠らせただけだ」
布団を出し、屋上に寝かせる。外から見えない結界と雨対策もしておく。
「帰蝶、見張り頼む」
『当然。でもおねえさまは授業をサボりたくないはず』
「大丈夫。【分身】」
咲耶に触れて魔法を発動。咲耶の体がぶれ、もう一人現れる。
『おねえさまがもう一人!?』
「触れた相手の分身も作れる魔法だ。行動も思考も本人そっくり。解除すれば経験も共有される。これで本体が休んでも問題ない」
『……すごい。この魔法があれば、おねえさまも無理しなくて済みますわ』
やっぱり我慢してたんだな。
『おまえ、ちょっと見直しましたの』
その時、分身咲耶が抱きついてきた。
「どうした?」
「ちゅき……♡」
「ふぁ!?」
頬にキス。
「咲耶さん!?」
「ちゅき♡ おにいちゃんやさしい……♡」
「魔王! バグってるぞ!?」
『正常だと思うぞ』
「おかしいだろ!?」
分身は本体と同じはずだが、こんな態度の咲耶は見たことない。
「致命的なバグだ!」
『魔法は問題ない』
「じゃあ何が!?」
『さぁてな』
分身咲耶が押し倒してくる。
「お兄ちゃん、アイラのことちゅきなの? 付き合うの?」
「いや……別に……」
「じゃあ、さくやのことちゅき~?」
「……家族としてな」
「やったぁ~♡ ちゅきなの~♡」
「やめろ分身! 本体が思ってもないことするな!」
『魔法は正常だよ。魔法はな』
「じゃあ何が……!」
騒いでいても、本体の咲耶は安らかに寝息を立てていた。
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