エピローグ2 現れたのはドラゴン!?
※3月28日に更新しました。
ジルバに呼ばれて玄関から出ると、そこには一人のイケメンがいた。
「どうもはじめまして、人間」
「……何者だ?」
目の前のイケメンが頭を下げると、アレンは警戒しながら睨み付ける。
こちら側は全員、目の前に現れた存在に警戒していた。
【人間】
そう表現するということは、この男が人間ではないということだ。
人間と同じようなルックスだが、明らかに人間離れした整った容姿でおかしいとは思っていた。
そんなイケメンが顔を上げ、アレンの質問に答える。
「俺が何者かなどはどうでもいいだろう。奪われたものをとりかえしにきただけだ」
「なに?」
イケメンの言葉に何の覚えもない俺たちは首を傾げる。
このイケメンと面識があるわけでもないし、そんな相手から奪うことなどできるはずもない。
というか、そもそもそんなことはしない。
しかし、そんな俺たちにイケメンから感じる威圧感が増大する。
「ほう……しらばっくれるのか?」
「「「「「うっ!?」」」」」
イケメンの威圧感に思わずたじろいでしまう。
俺以外の子供たちは威圧感に当てられ、倒れてしまう。
よかった、クロネやハクアがこの場にいなくて……
今の二人にはあの威圧感はまずい。
本気を出さずにあの威圧感を出せるのは、このイケメンは見た目以上の実力者である。
おそらくアレンたちでも三人がかりで戦わないといけないはずだ。
「……リオン、ルシフェル。合わせろ」
「おう」
「ええ」
アレンの指示にリオンとルシフェルが頷き、各々が臨戦態勢になる。
そして、戦闘が始まろうとした、そのとき──
(ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ)
「ぎゃあっ」
──何かが空から飛来し、イケメンを地面に叩きつけた。
激しい土埃のせいで詳しくは見えないが、イケメンが倒れていることだけはわかった。
十秒ぐらい経ち、ようやく土埃が晴れてくるとそこにはイケメンともう一人の人物がいた。
こちらも人間離れした整った容姿の女性で、全体的にボリューミーで男だったら確実に目線を奪われてしまうほどだ。
まあ、うちのメンツは色気より戦闘欲なので、奪われることはないのだが……
女性がこちらに頭を下げる。
「うちの旦那がすみません」
「「「「「旦那っ!?」」」」」
彼女の言葉に全員が驚いた。
たしかに見た目だけならふさわしいカップルに見えるが、先ほどのイケメンの様子から女に好かれるとは思わなかった。
あと、女性に一撃で気絶させられている姿とか、本当に情けないし……
そんな俺たちの反応を気にしなかったのか、女性が話を進める。
「私たちは子供たちを探しているんです」
「子供? たち?」
彼女の目的に全員が首を傾げる。
「子供」ということは二人の子供だろうが、「たち」ということは複数存在しているわけだ。
しかし、この場にいる子供たちは全員身元がはっきりしている。
つまり、二人の子供ではないのだが……
疑問を感じている俺たちに女性がある単語を口にする。
「アウラとシュバル、この名前に聞き覚えはありますね?」
「「「「「あっ!?」」」」」
全員が身元不明の子供の存在を思い出した。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
男性はリヒト、女性はシルトと名乗った。
二人はドラゴンで、リヒトが【聖光龍】ことホーリードラゴン、シルトが【暗黒龍】ことダークドラゴンという種族らしい。
普段は龍峰という場所で生活しており、人間の世界に干渉することはない。
二人が子供たちを探せなかったはこれで理由である。
子供たちがいなくなったことに気付いていたが、龍峰にある転移の魔道具を使ってしまったせいでどこにいっているのかわからなかった。
無闇に探しても見つかるわけではなく、逆に自分たちが見つかることで人間の世界に混乱を起こすことは避けたかった。
そのため、戻ってくることを期待して龍峰で待機していたのだ。
今回の一件でアウラが暴走した魔力を感知し、この屋敷にやってきたのだ。
「「いやっ」」
「「きゅるっ」」
ハクアとクロネ、子供たちはを真っ向から拒否した。
仲が良いので、子供たちにとってつらい選択だとは思う。
しかし、現実はそういうわけにはいかず……
「ハクア、クロネ。この子たちの親が来たんだから、返してあげないと……」
「いやっ。アウラと別れたくない」
「うん。シュバルだって、ここにいたいっていってるもん」
「「きゅるるっ」」
アレンの言葉に二人と二匹は反論する。
完全に聞く耳を持っていない。
「……滅ぼすか?」
なんかリヒトが怖いことを言っている。
国を亡ぼすほどの災厄といわれているドラゴンなのだから、恐怖を感じて当然だろう。
まあ、本来ならダークドラゴンであるシルトさんの方がそれっぽいのだが……
(ドゴッ)
「ぶへっ」
再びリヒトが変な声を上げ、地面に叩きつけられる。
顔面から地面にめり込み、ドラゴンとは思えないほどかっこ悪い体勢になっている。
もちろん、シルトさんの仕業である。
「ごめんなさい。この人は好戦的なところがあって……」
「え、ええ……なんとなくわかります」
優しげに話すシルトさんの言葉に少し戸惑った様子を見せるアレン。
彼がこんな様子を見せるのは珍しい。
それほどまでシルトさんが怖いのだろうか?
そんなシルトさんがハクアたちに話しかける。
「お嬢さん」
「ん? なに?」
「ひっ!?」
シルトさんに声をかけられ、ハクアは普通に、クロネはおびえた様子で反論する。
やはり、まだクロネには他人との交流は早いのか?
だが、そんな反応をされたことを気にすることなく、シルトさんが質問をする。
「二人はこの子たちと一緒にいたい?」
「うん」
「は、はい」
シルトさんの質問に二人ははっきりと答える。
俺たちはその答えに慌ててしまう。
なぜなら、災厄の存在であるドラゴンに子供を帰したくないと言ったのだから、本気で滅ぼされてもおかしくはない。
全員が臨戦態勢に入るが……
「なら、この子たちを大事にしてあげてね」
「「「「「へ?」」」」」
シルトさんから返ってきたのは想定していない答えだった。
俺たちは全員呆けた声を出してしまう。
「この子たちにとってこの二人は大事な存在みたいなの。だったら、一緒に過ごさせてあげるのが親として当然じゃないかしら?」
「な、なるほど……」
「私たちにも昔はそういう存在がいたのよ? まあ、寿命の差で100年ぐらいで別れちゃったけど……」
「そうなんですね」
この人たちにもいろいろあったようだ。
だから、ハクアとクロネに預けようと思ったのかもしれない。
しかし、それならどうしてリヒトはこんなに反対しているのだろうか?
「この人は私が説得するわ。それと、一つ頼みごとがあるのだけど?」
「なんですか?」
ドラゴンからの頼み事ということで、アレンが緊張した声を出す。
人間とは絶対に価値観が違うので、どれほど恐ろしい提案をされるか分かったものではないのだ。
しかし、想像よりも簡単な提案がきた。
「私たちをこの屋敷に住まわせてくれるか、私たち用に建物を建ててくれるかしら?」
「え? なんで?」
「子供の近くで住むのが親の務めじゃないかしら? 子供たちが帰らないなら、私たちがこっちに住めばいいじゃない」
「あ、ああ……なるほど」
シルトさんの提案にアレンは肯定するしかなかった。
同じ親として理解はしつつも、ドラゴンの頼みを断れなかった側面もある。
そして、この日からカルヴァドス男爵領には二匹のドラゴンが住むことになった。
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