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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第四章 小さな転生貴族は暴走する 【少年編3】
95/618

4-31 小さな転生貴族は魔力暴走を起こす

※3月25日に更新しました。


(ズキズキッ)

「かはっ!」


 全身に痛みを感じ、俺はその場に膝を突く。

 口から血を吐き出し、頭もガンガンぶつけたように痛い。


「「グレインっ⁉」」


 アレンとリオンさんが心配げに近づいてくる。

 しかし、その前に俺は地面に倒れてしまう。


「があああああああああああっ」


 痛みがさらに増す。

 全身を何かが走り回るような感覚である。


「何が起こっているんだ?」

「俺にもわからん」


 アレンとリオンさんはまったく状況が理解できていないようだ。

 そんな中、状況を理解した者が現れる。


「おそらく、体内で魔力が暴走している」


 ヴァンだった。

 魔法で聖騎士となるレベルだから、俺の体内で起こったことを理解したのだろう。


「わかっているなら、どうにかしてくれ」


 アレンがヴァンに頼み込む。

 魔法は専門外なので、できそうなヴァンに頼んだのだろう。

 しかし、ヴァンは首を横に振る。


「すまないが、できない」

「なぜだっ!」


 アレンは怒鳴る。

 息子の命がかかっている状況で、焦っているのだろう。


「先ほどのこの子がやった【魔力吸収】ができればいいが、俺には使えない。当然、俺の部下たちも使えない」

「そんな……」


 アレンが膝から崩れ落ちる。

 自身の無力さを嘆くように顔を手で覆う。

 リオンさんも悔しげな表情を浮かべる。

 これが死んだときの身内の反応か。

 まさかこっちの世界でそれを見ることになるとは……

 申し訳ない気持ちになってしまう。


「グレイン様っ!」


 リュコが俺に近寄ってくる。

 しかし、対処法がわからないので、どうすることもできない。


「リュコ……なかない……でくれ」

「そんなこと無理ですっ!」


 俺の頼みをリュコは断る。

 好きな人には笑って欲しかったが、この状況では流石に無理か。

 俺も酷い注文をしてしまった。

 しかし、せっかく異世界に転生したのに、まさかこんな早くに死ぬなんて……女神さまにも申し訳ないな。

 流石にもう一度転生なんて事はないだろうな。

 やばい、意識が遠のいてきた。


「シュバル、お願い」

『きゅるっ』


 クロエとシュバルの声が聞こえ、不意に左腕に痛みが走る。

 全身を駆け巡っていた痛みとは違い、噛まれたような痛みだった。

 しかし、そこからは不思議な感覚だった。

 暴れ回っていたものが抜けていき、代わりに魔力が入ってくる。

 その魔力が中に残っていた魔力と混ざり合い、徐々に沈静化していった。


「おにいちゃん、大丈夫?」


 左腕の痛みが消え、目の前にクロエが現れる。

 先ほどまでグルグルしていた視界は明瞭になっており、はっきりと彼女の顔が見えた。


「ああ、大丈夫だよ。ありがとう」

「えへへ」


 右手で頭をなでてあげると、クロエは嬉しそうに目を細めた。

 彼女の反応に頑張った甲斐があったと感じる。

 今までの彼女なら俺から近づくどころか、自分から近づいてくることすらなかった。

 それが今では頭をなでさせてくれるのだ。

 兄冥利に尽きる。


「何が起こったんだ?」

「わからん」

「信じられない」


 アレンとリオンさん、ヴァンは状況が理解できていないようだ。

 もちろん、俺も理解はできていない。

 だが、助かったことだけはわかっている。

 これで大事な人を悲しませることはないだろう。


「グレイン様っ!」


 リュコが勢いよく俺に抱きついてくる。

 彼女の立場なら、この反応は当然だろう。

 しかし、場所が良くなかった。


(ズキズキッ)

「っ⁉」


 先ほどまで噛まれていた左手を挟まれ、激痛が全身を走る。


「グレイン様っ!」


 心配げなリュコの声を聞きながら、俺は気を失ってしまった。







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