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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第四章 小さな転生貴族は暴走する 【少年編3】
93/618

4-29 小さな転生貴族は大人たちに怒る

※3月25日に更新しました。


「おらぁっ」

「はあっ」


 的を絞らせないため、リオンとアレンが同時に攻撃する。

 元冒険者仲間であり、同じ近接戦闘をする者同士なので、タイミングは完璧だった。

 アウラもどちらに攻撃すればいいのか判断しかねていた。


『グルルッ』

「ちっ」


 アウラは大剣で斬られることは流石にまずいと思ったのか、アレンの攻撃の回避を優先した。

 攻撃を回避されたことでアレンは舌打ちをする。

 しかし、アレンの攻撃を回避することに集中したせいで、リオンの方に意識を割けていなかった。


「おらあっ!」

(ドオンッ)

『グルアアアアアアッ』


 背後から殴られ、アウラは背中を大きく逸らせる。

 というか、明らかに殴った音ではないが、どうやったらあんな音が出るのだろうか?

 まるで砲弾が地面に着弾したような、そんな激しい音が聞こえてきた。

 だが、それでもほとんどアウラにはダメージが通らない。

 つくづくドラゴンという存在が恐ろしいと思ってしまう。

 そんな存在に嬉々として立ち向かうアレンとリオンの二人に対しても……


「はあっ」


 アウラに対して再び斬りかかるアレン。

 身体強化魔法をさらにかけたのか、先ほどよりもスピードが速い。

 身体強化魔法の重ね掛けは体に負担がかかりやすく、ほとんどの人間はまずやらない。

 だが、アレンのように頑丈である人間はごく短時間だが、重ね掛けした状態で戦闘できる。

 まあ、だからといって無傷というわけではないが……


『グルゥッ』

(ブウンッ)

「むっ!?」


 しかし、アレンが攻撃しようとした瞬間、アウラは背中を逸らせた勢いのまま倒れる。

 その勢いのまま尻尾が振りぬかれ、反射的にアレンはバックステップする。

 当然、攻撃は中断させられた。

 片手をつきながら勢いを殺すアレンにいつの間にか戻ってきたリオさんンが文句を言う。


「おい、完璧なタイミングだったじゃねえか。なんで攻撃しねえんだよ」

「仕方がないだろ。あそこで尻尾がくるなんて、予想でぉまおうp」

「あれぐらい回避──いや、はじけよ」

「お前と一緒にするな。こっちはどうにか傷をつけないといけないから、下手に攻撃以外に意識を割けないんだよ」

「なんだとっ!?」

「なんだよっ!」


 アレンとリオンさんが戦闘中にもかかわらず言い争いをする。

 俺がさっき「時間がない」と言ったことを忘れているのだろうか?


『グルアアアアアアアアアアアッ』

(ブワアアアアアアアアッ)


 アウラが再びブレスを放つ。

 本当に弱っているのかと思うほど威力があった。


(ブワッ)


 だが、そんなアウラのブレスもシュバルのブレスが相殺する。

 意外にやるな、シュバル。

 いや、これは指示を出しているクロネの方を褒めるべきだろうか?

 今まで彼女に嫌われていると思っていたので気付かなかったが、案外彼女にはこういう才能があるのかもしれない。

 これは一度両親に話した方が良いかもしれない。


「ねぇ……」

「「ん? ……ひぃっ!?」」


 二人が怪訝そうな表情を浮かべてクロネの方に向き、同時に悲鳴を上げた。

 どうしたのかと視線を向けると、そこにはまるですべてを飲み込んでしまいそうな闇を瞳に浮かべた無表情のクロネがいた。

 子供が浮かべてよい表情ではない。

 クロネは大きくため息をつき、二人に話を続ける。


「いまはよゆうがないの。どうしてそんなむだなことをするの?」

「そ、それは……」

「……こいつが」

「いいわけむようっ! もっとしっかりしなさい」

「「……はい」」


 三歳児に怒られ、気を落とす大人たち。

 本当に大丈夫なのか、この二人は?


「二人とも」

「「なんだ?」」

「僕が魔法で補佐する」


 俺が補佐すると伝えた瞬間、二人が少し驚いたような表情を浮かべた。

 いや、なんでそんな表情をするんだよ。

 元々、俺は魔法使いなんだから、近接戦闘の補助をするのが基本的な戦い方だろうに……


「できるのか?」

「それぐらいできるよ」

「いや……魔法使いっていうのは総じて大きな魔法をぶっ放したいという欲求があるから……」

「……そういう人間と一緒にしないでくれる? 僕はどっちかというと補佐の方が得意なんだから……」


 アレンの言葉に俺は思わず反論する。

 人のサポートに関して俺の右に出る者など存在するはずがない。

 なんせ前世では人のサポートをすることで信頼され、どんどん仕事が増えていき、最終的に疲労と交通事故で無くなった人間だぞ?

 なんか言ってて悲しくなった。

 まあ、俺ならばできるはずだ。


「あれだけ魔法が使えるのならいけるだろうな」

「……そういえば、俺はルシフェルやリズを基準に話していたな」

「まあ、俺の場合は最近一緒に訓練していたから、出来ると思っていたが……」

「なんだとっ! それだったら俺だって……」

「わかってないじゃねえか。それでよく親だって言えるな?」

「くっ……」


 俺をダシに二人が言い争いをする。

 はぁ……仲が良いんだか、悪いんだか……

 とりあえず、俺は怒鳴る。


「とっとと行け。あとは状況に合わせてサポートするから」

「「お、おう」」


 俺の声に驚き、二人がアウラに向かって駆けだす。

 まったくもう……

 俺はリズやリオンさんの奥さんたちの気持ちがわかった。

 こんな二人が旦那だとかなり普段から疲れるのではないだろうか?

 あと、違う方向でルシフェルの奥さんたちもしんどいんだろうな。

 俺はそんなことを考えながら、アウラの方に意識を向けた。







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