表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第四章 小さな転生貴族は暴走する 【少年編3】
92/618

4-28 小さな転生貴族の父は悩む

※3月25日に更新しました。


「下がっていなさい、クロネ。お前にはまだ早い」


 いきなり現れたクロネにアレンが告げる。

 まだ三歳の彼女は戦闘に参加するどころか、この戦場にいること自体がまだ早すぎる。

 今回の場合は彼女も誘拐されたから、ここにいるだけだ。

 しかし、クロネも言い返す。


「ハクアとアウラをたすけないといけないの。だったら、わたしもたたかう」

「駄目だ。いくらそのドラゴンがいても、お前に危険が及ぶのは見過ごせない」


 アレンは全く聞く耳を持たないが、俺も同意見ではある。

 おそらくクロネは黒い龍──シュバルがいるので戦闘に参加できると思ったのだろう。

 というか、なんであんなに大きくなっているんだ?

 さっきまで毛玉だったはずだが……

 この世界のドラゴンにはそんな変身能力あるのだろうか?

 何の情報もないので生態が謎である。

 アウラは暴走し、シュバルは制御できている──もしかすると、精神状態や魔力の使い方などが関係しているのかもしれない。


「でも、アウラのぶれすにたいこうできるのは、このシュバルだけ」

「だが、お前を危険にさらすわけには……」

「わたしはしゅばるがまもってくれるからだいじょうぶ。おとうさんたちはアウラを止めてあげて」

「いや……」


 アレンはなかなか頷かない。

 解決するためには猫の手も借りたい、だが自身の子供を危険にさらしていいものか、と。

 そんなアレンに叱責が飛んでくる。


「アレン、もたもたするな。今はその娘の手を借りた方が良い」

「リオン」

「お前もさっきの相殺を見ただろう。あれならその娘が傷つくことはないはずだ」

「う……」


 リオンの指摘にアレンは反論できない。

 アレンも認める戦闘のプロであるリオンの言葉──それは大抵正しい。

 受け入れるべきだが、アレンの父親の部分が許さない。

 アウラが再びブレスの体勢に入る。


「くるぞっ」

「ぐっ」


 リオンの言葉にアレンが回避行動をとる。

 自分では止められないことが分かったので、即座に行動をとることができた。

 だが、俺は魔力の膜を張るだけでそれ以上のことはしなかった。

 なぜなら──


「シュバルっ、ぶれす」

『ぐるあっ』


(ブワッ)


 シュバルとアウラのブレスが相殺される。

 体格は圧倒的不利なはずなのに、なぜかシュバルはブレスを相殺できている。

 しかも、消耗度合いは明らかにアウラの方が上である。

 これは一体どういうことだ?


「もしかして……」


 俺はあることに気が付き、それぞれの魔力の流れを視てみる。

 アウラの方は明らかに魔力が少なくなっていた。

 暴走で消耗するのが激しいのだろうが、これはまずいかもしれない。

 このままアウラが暴走した状態で魔力を無くせば、命を落とすことになりかねない。


「父さんっ!」

「なんだっ?」


 俺はアレンに呼びかける。


「ブレスの防御だけでもクロネたちに任せよう」

「何を言っている。クロネを危険にさらすわけには……」

「このままじゃ、アウラがまずい」

「なんだと?」


 俺の言葉にアレンの表情が変わる。

 状況が深刻であることを察したのだろう。


「アウラの魔力がだいぶ消耗している。なくなったら、どうなるかわからない」

「……わかった。防御だけならクロネに任せよう。だが、それでは解決にはならないぞ」


 ようやくアレンもクロネの参加を受け入れた。

 だが、アレンの言っていることももっともだ。

 こちらがやられる可能性が低くなっただけで、制限時間が無くなったわけではない。

 むしろシュバルが現れたことでアウラがより暴走しており、制限時間がより短くなった。

 だがこれはチャンスかもしれない。


「父さん、リオンさん」

「「なんだ?」」

「どこでもいいから、アウラに傷をつけてくれ」

「「?」」


 俺の指示に二人は首を傾げる。

 これだけで理解できないのは仕方がないだろうが、今はそれを説明している時間はない。

 正直この作戦は賭けで、俺の命も危ない可能性がある。

 しかし、今は手段がどうとは言っていられない。


「とりあえず、傷をつけてくれたらいいから。死なない程度に」

「あ、ああ……わかった」

「手加減はあんまり得意じゃないが、頑張るわ」


 俺の指示に戸惑いながらも、二人はアウラに立ち向かった。






ブックマーク・評価等は作者のやる気につながるのでぜひお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ