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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第四章 小さな転生貴族は暴走する 【少年編3】
91/618

4-27 小さな転生貴族はドラゴンと戦う

※3月23日に更新しました。


『グルアアアアアアアアアアアアアアアッ』


 白い龍──アウラは縦横無尽に暴れまわる。

 聖光教の支部の人間が集まる場所のため広いはずなのに、アウラが暴れまわっているせいで酷く狭く感じてしまう。

 まあ、ドラゴンが暴れまるなんて想定するはずもなく、狭く感じるのも仕方がないことだろう。

 そんなアウラに二つの小さな影が近づく。


「さて、【龍狩り】を始めるか」

「おい、狩りはしないぞ」


 リオンさんの軽口にアレンが反論する。

 だが、そんな会話をしている二人でも表情は真剣そのものだった。

 目の前の相手がそれほど強敵であるということだ。


『グルアッ』

(ドオンッ)


 二人の接近に気が付いたアウラが右手を叩きつける。

 右手だけで人間を5,6人ぐらい叩き潰せそうなぐらい大きい。

 当然、それに見合った重量があるはずで、直撃すればまるで蚊のように潰されてしまうだろう。

 アレンはすぐに回避行動をとっていたが、リオンさんは下敷きになっていた。。


「おう、いてぇじゃねえか」

『グルッ⁉』


 自分の手の下から声が聞こえてきたことで、アウラが少し驚いた様子を見せる。

 なぜなら、確実に潰したと思った相手の声が聞こえてきたのだ。

 暴走しているはずなのに驚いて止まってしまった。

 そんなアウラの右手にリオンさんは攻撃する。。


「【獅子豪拳】」

(ドオオオオンッ)

『グルウウウウウウウウッ』


 右手を弾き飛ばされ、アウラは上体を逸らして下がる。

 あれほどの質量の相手を殴り飛ばすとは、一体どれほど鍛えればできるのだろうか?

 こと身体能力に関してはやはり【獣人】は恐ろしい存在らしい。

 【獣王リオン】という存在の凄さを俺は改めて感じる。


「ふっ」

(ブウンッ)


 リオンさんの攻撃でふらついているアウラの隙を突いて、アレンが死角から大剣を振るう。

 もちろん、致命傷にならないように攻撃はしているが、それでも十分にダメージが通るはずだ。

 おそらく人間ならば、確実に一撃で命を落とす。


(ガキイイイイイイインッ)

「「「っ!?」」」


 信じられない光景に俺たち三人は驚いた。

 アレンの大剣が白い鱗に弾き飛ばされたからだ。

 鱗ごと斬り裂くと思われたが、傷一つついた様子がない。

 流石はドラゴン、恐るべき堅さだ。。


『グルアアアアッ』

「くっ」


 驚いているのも束の間、アウラがアレンに対して反撃する。

 アレンはギリギリのところで回避するが、完全には回避できなかったようで顔の皮膚が抉られ、血が流れていた。

 完全に回避できていたと思ったが、思ったより攻撃範囲は広いらしい。

 いや、大きいからこそ範囲が広くなっているのか?


「どうやら斬撃はあまり効かないようだな」

「ああ、そうだな。だが、打撃も決定打にはならんみたいだ」


 アレンとリオンさんが先ほどの攻防から今後の作戦を考える。

 戦闘の最中にそんなことをやるのはおかしいが、こういう情報交換は大事である。

 予想外のことが起きた場合に作戦変更をすべきだからだ。

 まあ、こうもわかりやすくする必要はないが……


『グルアッ』

「「ちぃっ」」


 二人にアウラが再び襲い掛かる。

 先ほどの攻防から舐めてはいけない相手だと感じたのか、アウラの動きがさらに激しくなった。

 床や壁の破壊具合が恐ろしい。

 1時間も戦えば、この建物が跡形もなく消えてしまいそうだ。

 聖光教の建物だし、ハクアとクロネを誘拐するような奴らは滅べばいいが……


「どらあっ」

「はあっ」


 激しい攻撃をかいくぐり、懐に入り込んだ二人が攻撃する。

 しかし、固い鱗のせいでダメージは通らない。

 俺はドラゴンという存在の脅威を身にしみて感じる。

 アレンとリオンさんはこの世界でもかなり上位の実力者であり、この二人がいるのであればドラゴンだろうが簡単に倒せると思っていた。

 しかし、この二人がてこずるどころかダメージを与えることすらできないなんて、ドラゴンというのはどれだけ異常な存在だろうか?

 そりゃ、【国を亡ぼす災厄】とか言われるわ。

 だからといって、倒さないわけにはいかないが……


「【風纏(ふうてん)】」


 俺は全身に風を纏わせ、スピードを上げて駆け出す。

 防御としても役立つが、アウラが相手では大した効果はないだろう。


『グルアッ』


 俺の接近に気が付いたのか、アウラが攻撃を仕掛けてくる。

 近づいてくる巨大な手、俺は恐怖を感じる。


「遅い」


だが、風魔法を纏った俺に当てることはできない。

 身体強化も使っているので、かなりのスピードだろう。

 俺はアウラの攻撃をかいくぐって、下側に潜り込む。

 そして、ハクアを守っている腹の部分に触れる。


「【ドレイン】」


 これは相手から魔力を奪う魔法だ。

 直接触れた相手にしか使えない技であり、基本的に近接戦闘を行わない魔法使いは使わない。

 だが、近接戦闘も行う俺は使えるし、魔力が消耗したときには重用する。

 アウラの魔力の循環がいかれているならば、その魔力を奪ってしまえばいいという話だった。

 俺が潜り込むことができる隙を作るのを二人に頼んだのだ。


「えっ!? 魔力が吸収できないっ!」


 俺は自分の体に魔力が流れてこないことに焦る。

 アウラには確実に魔力が循環している。

 それなのに、流れてこない──その事実に驚愕し、俺は動きを止めてしまう。


「グレイン、危ない」

「えっ!?」


 アレンの声に俺は意識を戻す。

 だが、すでに目の前に巨大な手があった。


「(あ、これ死んだ)」


 大人でも軽々と掴めそうな巨大な手が勢いよく迫ってくる光景は子供の俺にとってはかなり怖い。


「どらあっ」

(ドゴッ)

「えっ!?」


 しかし、俺が死ぬことはなかった。

 リオンさんが迫る手を思いっきり蹴り上げたからだ。


「グレイン、いったん下がるぞ」

「う、うん」


 アレンに抱えられ、俺たちはアウラから距離をとる。

 しかし、その行動がよくなかった。


『すううううううううううううううっ』


 アウラが大きく息を吸い込む。

 レンとリオンさんが首を傾げる。

 ドラゴンが息を吸う──俺はその行為からある可能性に気が付いた。


「すぐに回避を──」

(ブワアアアアアアアアアアアアアアッ)


 俺が言い切る前にアウラはブレスを放った。

 正確に言うと、白い光のビームのようだった。

 そのビームは俺たち三人を包み込む──そう思ったが──


(ブワッ)


──それは俺たちに直撃する前に相殺された。


「わたしたちもたたかう」

『ぐるるっ』


 黒い鱗に覆われたアウラよりも二回り小さなドラゴンがおり、その背中にはクロネが乗っていた。

 まさかシュバルか?






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