4-22 小さな転生貴族は聖騎士と戦う3
※3月20日に更新しました。
「ははっ、どうした? さっきと違って、防戦一方だな」
ヴァンが笑いながら俺たちを煽ってくる。
無数の風の刃が縦横無尽に飛び回る。
見えないのが非常に面倒である。
見えないのであれば魔力を感知すれば良いと思うが、意図してか少ない魔力で風の刃を放っているのだ。
威力が低くなるデメリットがあるが、感知しづらいというメリットにもなる。
(ガガガッ)
「っ⁉」
「甘いな。タイミングが丸わかりだぜ?」
リュコは一気に距離を詰めようとするが、足下を削られて止められてしまう。
調子が上がってきたのか、先ほどよりも魔力感知が鋭くなっている。
このままでは徐々に不利になってしまう。
早めに決着をつけないと……
「【ストーンキャノン】」
俺はスイカぐらいの大きさの塊を放つ。
大きければ風の影響を免れるのでは、と思ったからだ。
しかし、その目論見は簡単に砕かれる。
「残念だったな。威力が高いなら、それ相応の風を起こせば良いだけだ」
「くっ」
俺の攻撃は簡単に吹き飛ばされ、部屋の壁に直撃する。
近くにあったいろんな調度品に何度も当たり、地面に落下した。
調度品が壊されたことで、聖光教の人間が慌てふためく。
高級なのだろうか?
「……」
その光景に俺はある考えを閃く。
しかし、上手くいく保証はなく、それは賭けであった。
果たして、やるべきだろうか……
「グレイン様」
そんな俺の様子に気付いたのか、リュコが声を掛けてくれる。
彼女の瞳はまっすぐで、俺のことを信頼してくれているのがわかる。
なら、やることは一つだ。
「リュコ、合わせてくれ」
「わかりました」
俺の命令と共にリュコは走り出す。
まっすぐ最短距離でヴァンに向かっていく。
この一撃に懸けているのか、今までよりも速い。
「【ストーンバレット】」
彼女に合わせて、俺も魔法を放った。
先ほどよりも軽い、片手で持てるほどの石の礫だった。
こちらも限界の速度で放った。
「同時攻撃か? いや、少し魔法の方が早いか」
俺たちの攻撃を見て、ヴァンが即座に反応する。
両方の動きを見て、どちらに対応すべきかもすぐに決める。
即座に魔法をを展開する。
「回転して威力を上げたようだが、俺には意味がないぞ」
風の魔法によって軌道を曲げられ、石の礫は地面にたたき落とされる。
今までと同じだが、ここからが違う。
だが、俺の狙いは直接当てることではない。
(ガッ)
「なっ……がはっ」
地面に落ちた石の礫は予想外の軌道で跳ね上がる。
下から腹部に衝撃が加わり、ヴァンはくの字に体を折り曲げる。
だが、流石に軽い石の礫では大したダメージにはならない。
一度、地面にぶつかったのも威力が減った原因かもしれない。
ヴァンは即座に顔を上げ、反撃しようとしたが……
「【炎狼牙】」
すでにリュコが近くにいた。
彼女の炎に覆われた手が交差し、まるで狼の牙のようにヴァンの体に直撃する。
風属性で避けることを前提に戦っていたせいか、ヴァンは必要最低限の防具しか身につけていなかった。
そんな軽装備ではリュコの攻撃には耐えきれない。
「マジ……かよ……」
炎に体を包まれ、ヴァンは前のめりに倒れた。
だが、その表情はどこか満足げだった。
「やった……勝った」
そんなヴァンの横でリュコは地面に膝を突く。
俺を信じて、かなり限界まで頑張ってくれたのだろう。
そんな彼女の表情はとても嬉しそうだった。
グレインたちは格上のヴァンに勝てました。
作者のやる気につながるので、読んでくださった方は是非とも評価やブックマークをお願いします。




