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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第四章 小さな転生貴族は暴走する 【少年編3】
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4-21 小さな転生貴族は聖騎士と戦う2

※3月20日に更新しました。


「では、こっちも攻めさせてもらおう」


 青年は片手剣を構える。

 先ほどから持っていたが、どう見ても普通の片手剣である。

 一般的な冒険者でも持っているが、聖騎士という身分にしては異質である。


(タッ)


 青年は駆け出す。

 まるで重さがないような軽い足音で、そのスピードも速い。

 だが、見えないわけではない。

 青年はそのまま下から片手剣を振り上げようとして、それに合わせてリュコが反撃しようとする。

 その直前、俺は叫んだ。


「リュコ、避けろっ!」

「っ⁉」


 俺の指示にリュコは一気に距離を取った。

 先ほどまで彼女がいた場所を片手剣が振り抜かれる。

 完全に回避したはずだった。


(スパッ)

「「えっ⁉」」


 しかし、リュコのメイド服が斬られていた。

 片手剣の軌道と同じ切れ目だった。

 しかし、片手剣は当たっていなかった。

 ここから導き出される答えは……


「【風属性】か」

「一発でバレちまったか」


 俺の指摘に青年が苦笑する。

 だが、まだ余裕がありそうな様子だ。


「もしかして、剣先に見えない風の刃が?」

「そういうことだろうな」


 リュコも気付いたようだ。

 一瞬ではあったが、剣先に魔力が集中していたのがわかった。

 しかも、剣先のない部分まで伸びていた。

 つまり、見えない刀身──風の刃があり、リュコの服は斬られたわけだ。


「そこまでわかるか。なら、自己紹介させてもらうよ。俺は聖騎士第十席──【風刃】のヴァンだ」


 青年は自信満々に宣言する。

 おそらく、名前の通り風の刃で聖騎士になったのだろう。

 避けたはずなのに、斬られてしまう。

 見えない刃はそれだけで脅威となる。

 魔力感知できれば良いが、青年──ヴァンは上手いこと斬る直前にだけ魔力を放出していたのだ。

 つまり、その時々で長さを調節できるわけで、事前に察知するのは難しい。


「距離を取っても意味がないぞ。【風刃乱撃】」

「「くっ」」


 ヴァンが片手剣を振るい、小さな風の刃が幾重にも放たれる。

 ほとんどは防ぐことはできたが、逃した刃が俺たちの体を傷つける。


「【炎連撃】」


 遠距離では不利と悟ったリュコが一気に距離を詰める。

 炎を纏った拳を連続で放つ。


「わかっていれば、簡単に避けられるな」


 しかし、ヴァンには当たらない。

 獣人の身体能力を見切っているのか。


「【ストーンショット】」


 リュコの攻撃を避けた先をめがけ、俺は石の礫を放った。

 俺に背を向けており、完全に死角だったはずだ。


(グイッ)

「なにっ⁉」


 だが、石の礫はヴァンに当たる直前に軌道を逸らしてしまった。

 もちろん、俺が意図したわけではない。


「どこに狙っているかさえわかれば、こんな芸当もできるんだよ」

「まさか風で逸らしたのか」


 ヴァンの言葉に俺はすぐに理解した。

 先ほどまで攻撃に使っていた魔法を防御に使っただけだ。

 まさか死角からの攻撃に対処できるとは思わなかった。


「【炎舞脚】」

「それもわかってるよ」

「なっ⁉」


 リュコの背後からの蹴りを避け、ヴァンは彼女の背中を片手剣の柄で打ち付ける。

 バランスを崩したリュコはゴロゴロと転がって、再び構える。

 明らかに見えていなかったはずの攻撃にすら的確に対処したということは……


「もしかして、空気の揺らぎすらわかっているのか」

「おいおい、これもわかっちまうのか。坊主は天才って奴だな」


 俺の指摘にヴァンは肯定する。

 しかし、全く余裕は崩さない。


「タネがわかっても、どうすることもできないがな」


 その理由は簡単である。

 見えない攻撃と防御に感知技術──それらを使って、今まで勝利してきたのだろう。

 だからこそ、俺たちに負ける未来が見えないのだ。







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