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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第四章 小さな転生貴族は暴走する 【少年編3】
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4-11 小さな転生貴族は母の凄さを知る

※3月18日に更新しました。


「……シルフィアは大丈夫だった。確かに深い傷だったけど、応急処置が的確だったおかげで傷は塞がった」

「それはよかった」


 クリスの言葉に俺は胸を撫で下ろす。

 それは他の全員も同じで、みんなシルフィアの無事を喜んでいた。


「じゃあ、何があったか教えてくれるかしら?」


 そんな嬉しいのも束の間、真剣な表情のエリザベスが俺に説明を求めてくる。

 アレンやクリス、リオンさんとルシフェルさんも同様で、俺の方に意識を向ける。

 これは俺の義務であり、一刻を争う事態でもあるのですぐに説明をした。


「詳しいことはわからないけど、ハクアとクロネが誘拐された」

「……誰が犯人かわかるの? というか、グレインがいたのにそんなことができる人間がいるとは思わないんだけど?」


 俺の説明にエリザベスが質問する。

 彼女の言わんとしていることはわかる。

 元々、二人を誘拐できないということで護衛の役目は俺だったのだ。

 それなのに、こんなにあっさりと誘拐されてしまい、とても申し訳ない気持ちになってしまう。


「僕がいないところを狙われたんだ。少し距離を開けていたせいで気づくのが遅れたんだ」

「どうして離れたの? 私はグレインに二人の護衛を頼んだんだけど?」


 エリザベスが疑問を投げかけてくる。

 俺に責任があると言っているのだろう。

 いくら理由があったとしても……


「……ごめんなさい」

「謝るだけじゃ状況はわからないわ。ちゃんと言って」


 謝る俺にエリザベスが問い詰めるように文句を言ってくる。

 俺は詳しい理由を言えなかった。

 なんせ、兄妹仲が悪いせいで、少し距離を置いている隙に狙われたなんて言えるわけが……


「グレイン様に対してクロネ様が恐怖を抱いているようだったので、少し距離を置こうという話になったんです。グレイン様が離れていたのはそれが理由です」

「リュコっ!?」


 そんな俺の努力もむなしくリュコが暴露してしまった。

 俺は思わず彼女に文句を言おうとするが、その前に反撃を受けてしまう。


「今はハクア様とクロネ様のことが一番大事でしょう? ならば、どういう状況だったかはしっかりと説明すべきです」

「うぐっ」

「グレイン様はクロネ様に嫌われている事実を知られたくはないでしょうが、なぜ離れたのかを伝えないと話が進まないです」

「たしかに……いや、そういうわけじゃないよ。別に知られたくないとか、そういうことじゃないし……」

「そこはどうでもいいです。とりあえず、グレイン様がきちんと情報を伝えないことが問題なんです」

「……」


 リュコに論破されてしまった。

 確かにその通りかもしれないが、この状況で言いづらかったのも事実だ。


「それは知っていたわ。というか、クロネは私以外に警戒心が一杯だったわね」

「っ!? 知っていたの?」


 エリザベスの言葉に俺は驚いてしまう。

 そんな俺の様子にエリザベスは呆れたような表情で説明する。


「私はクロネの母親よ? わかっていて当然じゃない。というか、他の子供たちのことだって、いろいろと知っているつもりだわ」

「……たしかにそうだね」

「グレインはシリウスに当主を任せて、のんびりしようとしているわね。アリスのことを近接戦闘だけのおバカさんだと思っているわね」

「……」


 まさかそこまで理解されているとは思っていなかった。

 前者の方は見ていればわかると思うが、後者については悟られるようなことはしていなかったつもりだ。

 これが母親というものだろうか?

 だが、この状況でそんな暴露をしないでほしかった。

 シリウスはともかくアリスから向けられる視線が痛い。


「クロネに怖がられないように少し距離を置いたんだ。そうするべきだと思ってね」

「まあ、お兄ちゃんとして当然の行動ね。それでグレインたちとシリウスたちで別れたのね?」

「うん。まさかそこで狙われるとは思わなかったよ。一ヵ月も何もなかったから、少し油断していたよ」

「まあ、そうね」


 エリザベスも納得する。

 理由も聞けば、俺の行動も間違ってはいないと気付いたのだろう。

 あくまで兄としては、だが。


「過ぎたことをどうこう言っても仕方がないわ。今はどんな対策を立てるかを考えないと」

「うん、そうだね。でも、どうするの?」

「おそらくだけど、ガフ伯爵と聖光教による誘拐なのは確実だけど、問い詰めてもしらを切られるわ」

「それはそうだね」


 エリザベスの言葉に俺は頷く。

 俺だって犯人の目星ぐらいはついていたし、この場にいる全員がその結論に辿り着いているだろう。

 だが、確実な証拠がなかった。

 これが現代日本だったら、指紋や証拠写真などの決定的な証拠で追い詰めることができるのだが、この異世界にそんな便利なものはない。

 どうするべきか……そんなことを悩んでいると、クリスが口を開いた。。


「……私の実家に援護を頼もう」

「「えっ!?」」


 いきなりの内容に俺とエリザベスは驚いてしまった。







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