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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第四章 小さな転生貴族は暴走する 【少年編3】
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4-4 小さな転生貴族は屑に出会う

※3月16日に更新しました。


「まったく……これだから平民上りは困るんだよ。平気で上に突っかかってくる」

「……すみませんでした」


 男の言葉にアレンが頭を下げるが、内心いらついているのは端から見てもわかる。

 この男──ガフ伯爵の部下が先ほどエリザベスに痛めつけられたのだが、アレンとしては元々の原因がそちらだろうと思っている。

 だが、立場上それを指摘することは得策ではないため、頭を下げているわけだ。


「自分の嫁ぐらいしっかり教育をしておけ」

「……それはごもっともですね。ところで、今回はどういうご用件でしょうか?」


 イラッとしながらも流し、アレンは話を進めようとする。

 両手をぎゅっと握っていることから、かなり怒りが溜まっているようだ。

 その怒りが爆発する前に話を変えようとしたのだろう。

 そんなアレンの様子に気付いた様子もなく、ガフ伯爵は太った体を軽く揺らしながら厭らしい笑みを浮かべながら口を開く。


「私が聖光教の信者であることは知っているな?」

「……はい、何度かお聞きしたことはありますね」


 ガフ伯爵の言葉にアレンは頷く。

 聖光教はこの世界の宗教の一つで、光神アウラという神様を崇めているらしい。

 国民全員が聖光教であるというルミエール聖教国で発祥し、他国にも信者が多数いるので人数ならば最大宗派と言われている。

 もちろんこの国にも信者はおり、ガフ伯爵もそのうちの一人であることはおかしな話ではない。

 だが、この状況で言われるのは嫌な予感しかない。


「実は聖教国でとあるお告げが出たのだ」

「お告げ、ですか?」


 ここでアレンも嫌な予感がしたようだ。

 別に聖教国でお告げがあることはおかしな話ではない。

 真偽がどうかはわからないが、神様を崇めているのであればそういうことが行われているのが当然だろう。

 だが、わざわざ伯爵自らがここまでやってきて、そんな話をするのは明らかにおかしかった。

 うちは別に聖光教に入っているわけではないのだ。

 ガフ伯爵は話を続ける。


「なんでも【聖女候補】が現れたそうだ」

「【聖女候補】ですか?」

「ああ、そうだ。【聖属性】を有する者が現れたというお告げがあってな……」

「っ!?」


 ガフ伯爵の言葉にアレンが驚く。

 その条件に当たる人物に心当たりがあるからだ。

 だが、その反応がよくなかった。

 ガフ伯爵の表情がさらに厭らしくなる。


「お告げでは【南】、【光と闇】、【混在】という内容だったのでもしやと思ったが、心当たりがあるようだな」

「……ええ、そうですね。私はその【聖属性】の適性を持つ者を知っています」

「ほう」


 素直に答えたアレンの言葉にガフ伯爵が少し驚く。

 もっと嘘をつかれると思ったのだろう。

 だが、腹芸が得意ではないアレンはこういう場合にあまり嘘はつかない──いや、つけないと言うべきか。

 アレンの良いところではあるのだが、貴族であるのならばもう少し腹芸をできるようにはなった方が良いと思う。

 まあ、無い物ねだりをしても仕方のない事だが……


「それは誰なのだ?」

「私の娘ですね。名はハクア、現在三歳になります」


 ガフ伯爵の言葉にアレンはあっさりと答える。

 ハクアというのは三年前に生まれたクリスの子供で、俺の妹である。

 なぜか【聖属性】の適性を持っている。

 ちなみに、同じ日に生まれたエリザベスの娘の名前はクロネで、【闇属性】の適性を持っている。

 といっても、あくまで適性があるだけで魔法が使えるわけではない。

 とりあえず、時期を見てルシフェルにでも頼もうと両親は考えているようだ。

 なんせ、どちらも珍しい属性のため、何を教えていいのかわからないからだ。


「おお、男爵の娘なのか。ならば、話は早い」

「何がでしょうか?」

「その娘を引き取らせてもらおう。聖光教の聖女として裕福に暮らせるぞ」


 厭らしい笑みを浮かべながらガフ伯爵がそんな提案をしてくれる。

 「娘の幸せを願うのならば従うべきだ」といっているつもりだろうが、その表情から明らかに自分の欲望のためにそんな提案をしているのだろう。

 もう少しまともな顔をしていれば、そんなことも気付かれないだろうが……

 いや、この男は自分には権力があるので、そんなことを気にする必要がないと思っているのだろう。

 現に伯爵を相手に断ることができる人間なんてそうはいない。

 爵位だけで言うなら、上には公爵と侯爵がいるのだが、そこまで人数がいるわけではない。

 貴族と言っても、大半が伯爵以下なのだ。

 もちろん、うちもその一つなわけだが……


「お断りします」


 アレンはあっさりと拒絶の意思を示した。







改訂始めました。

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