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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第四章 小さな転生貴族は暴走する 【少年編3】
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4-3 小さな転生貴族は父親を心配する

※3月15日に更新しました。


「旦那様、お客様がいらっしゃっています」

「ん? 今日は来客の予定はなかったはずだが……」


 屋敷に戻ると、執事のジルバに話しかけられてアレンは首を傾げる。

 アレンなので来客の存在を忘れている可能性があったが、それならばエリザベスからのお叱りの言葉があるはずだ。

 つまり、本当にアレンにも覚えがない予定のようだ。

 しかし、貴族が事前に相手方に伝えずに来客するはまずないと思うのだが……


「ガフ伯爵です。今はクリス様とエリザベス様が対応されています」

「ガフ伯爵だと?」


 ジルバが来訪者の名前を告げた瞬間、アレンの表情が硬くなる。

 周囲にいた者たちは俺も含めて彼の表情の変わりように驚く。

 彼は滅多に怒ることはないし、大抵優しげな笑みを絶やさない。

 しかし、今の彼からは普段の雰囲気を感じることができない。

 一体、ガフ伯爵とは何者なのだろうか?


「用件は旦那様が戻られてから話すとおっしゃっていますが、相手方の雰囲気からあまり良くない話だと……」

「ああ、そうだろうな。あの男が自分から来ているということは、うちにとって良くない前触れのはずだ」


 二人の話で俺はそのガフ伯爵の評価は駄々下がりだ。

 まだ合ったことはないが、俺の中で相当な屑である印象になってしまっている。

 この二人が嫌っているので、それぐらい悪い評価となったわけだ。


「お前たちは自分たちの部屋にいてくれ。リオンとルシフェルは子供たちの面倒を見てくれ」

「おう、わかった」


 アレンの指示にリオンさんが答える。

 普段ならば多少面倒そうにするのだが、アレンの態度から真剣さが伝わったからかあっさりと指示を受け入れる。

 ルシフェルさんの方はアレンに質問をする。


「アレンはどうするのですか?」

「相手が呼んでいるなら、俺は行かないとだろう。会いたくはないが、あっちの方が権力は上だからな」

「普段は権力とか無頓着なくせに」

「まあ、いざとなったらお前たちがいるからな。多少の無茶ぐらいできるさ」

「そうですね。人間の国で立場を無くしたら、ウチで引き取るというのも一つの手ですかね?」

「……そうなったら頼むとするよ」


 アレンとルシフェルが冗談みたいな話をしながら笑う。

 だが、内容が内容だけに笑いながら話さないで欲しい。

 いくら伝手があるからといっても、現在ある権力を手放そうとするのはどうかと思う。

 当主になりたくない俺が言えることではないが……


「父さん、大丈夫なの?」


 俺は心配になって、思わず聞いてしまう。

 相手が伯爵ということは、おそらく貴族のいざこざなどが起こるだろう。

 アレンが対処できるとは思わないのだが……

 だが、そんな俺の質問にアレンは自信満々に答える。


「お前たちが心配するようなことはないさ。大人しく遊んでいなさい」

「でも……」


 本気で心配なので、俺は食い下がろうとする。

 別にその伯爵がアレンに直接危害を加えないとは思うが、間接的にならやりようはあるだろう。

 それを避けるためにもどうにかついていこうとするが……


「心配しすぎだぞ、グレイン」

「……仕方がないでしょ」

「リズとクリスがいるなら、問題はないはずだ」

「……たしかにそうですね」


 リオンさんの言葉に俺は納得する。

 普段は脳筋なのに、たまに的確なことを言う。


「もう少し、俺のことも信用してくれないか?」


 そんな俺たちの会話にアレンが悲し気に言う。

 といっても、自分自身が信用されない理由がわかっているはずだ。

 戦闘面の能力が高い分、それ以外の能力が低いということを……


(ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ)

「「「「「っ!?」」」」


──突然、何かが爆発したような音が聞こえ、全員が臨戦態勢になる。

 明らかに何かが爆発した音だった。

 ガフ伯爵とやらが何か問題を起こしたのだろうか?


(((ダッ)))


 三人の大人がいきなり駆けだした。

 先ほどの音を聞き、まずいと感じたのだろう。

 普段の訓練がいかに手加減されているのかが理解できる反応だった。

 まさか魔法馬鹿で近接戦闘ができなさそうなルシフェルさんがあれほど早く動けるとは……


「あっ、追いかけないと……」


 三人の反応に圧倒されてたことに気が付き、すぐに三人の後を追いかける。

 おそらく応接室の方だろう。

 俺は足に【身体強化】をかけ、廊下を駆け抜ける。

 俺の少し後ろをリュコがついてくる。

 本来ならば止めるべき立場なのだが、彼女はこういうときに俺の意思を尊重してくれる。


「ん?」


 応接室の近くに来ると、俺は異変に気が付く。

応接室の開かれたドアの前には先ほど駆け抜けていた三人が立っていた。

三人とも呆然とした様子で部屋の中を見ていた。

 膠着状態で動けないといった様子ではない。

 むしろ状況がわからず、どう動けばいいのかわからない様子だった。

 俺は三人に近づき、部屋の中を覗き見る。

 そこには──


「がはっ……きさ……ま……」

「そっちが先に剣を向けてきたのよ? いくら伯爵様の部下だからって、やっていい事と悪い事があるわ」


──エリザベスが騎士の首を掴み、地面に叩き伏せていた。

 騎士は睨み付けているが、彼女はまったくそれを意に介していない。

 よくよく見てみれば、騎士とその周りの絨毯が黒く焦げていた。

 先ほどの爆発音はエリザベスが起こしたのだろうか?

 状況はわからないが、まさかアレンより先にエリザベスが問題を起こすとは思わなかった。








改訂始めました。

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