4-1 小さな転生貴族は成長する
※3月15日に更新しました。
「【サンドニードル・針地獄】」
(ドドドドドドドドッ)
地面に両手をついて魔力を流す。
地面が盛り上がり、槍のように鋭い針が辺りを覆った。。
直撃すれば、体を確実に貫くだろう。
「ふんっ」
(ドオオオオオオオオンッ)
「ちぃっ」
リオンさんが力強く蹴ると、大きなクレーターができた。
その衝撃で俺の作った針はすべて破壊された。
流石は獣王である。
俺が太刀打ちできるとは思ってなかったが、まさかここまで実力の差があるとは思わなかったので舌打ちしてしまう。
先ほどの魔法は俺の最大魔法の一つだった。
この世界に来て7年──ようやく上級魔法も使えるようになった俺が魔獣討伐に多用する魔法だ。
中級魔法の中でも最上位に位置しており、土があればあるほど威力も範囲も増す魔物討伐にはもってこいの魔法である。
しかし、リオンさんには通用しなかった。
単体用の魔法に切り替える。
「【炎砲】」
俺は右手から直径2mほどの炎の砲弾を放つ。
見た目だけなら範囲攻撃に見えるが、これはあくまで単体用の魔法である。
大きな炎の塊ではあるが範囲が広いわけではなく、この炎に当たった者にしかダメージは与えられない。
さらに勢いが強すぎることで貫通力が高まっており、周囲に被害を及ぼさず直線的に効果を発揮する。
「甘えよっ」
(ブワッ)
リオンさんは俺の魔法を片手で掻き消す。
自分の大きさほどの炎をあれだけで消すなんて、リオンさんがいかに異常であるかわかる。
まあ、それに準ずるうちの父親と魔王様もまたおかしな存在ではあるが……
けれど、俺だってこの魔法がリオンさんに効果があるとは思っていなかった。
「だから、甘い」
(ガンッ)
「うぐッ!?」
強力な魔法を目くらましに懐に潜り込んでいた俺は正面からリオンさんの拳を受けることになる。
どうにか木剣で防御をすることはできたが、潜り込んだせいで体勢が崩れて膝をついてしまう。
先ほどのクレーターができるほどの威力ではなかったが、生身の子供が喰らってよい攻撃ではない。
強化魔法を使ってなければ、確実に全身の骨が折れていた───いや、砕かれていただろう。
まあ、リオンさんも俺が強化魔法を使っているので、この威力にしたのだろう。
出会ってから一年──何度か手合わせをしているので、俺の実力の最低ラインは理解しているはずだ。
それをもとに最低ラインギリギリの攻撃をしたわけだ。
「はははっ、これで終わりだな。なかなかいい線だが、まだまだ俺から一本はとれんな」
「くそっ」
リオンさんの言葉に俺は思わず悪態をついてしまう。
完全に隙を突いたと思っていた。
この一年で身体的にも魔法的にも成長したため、まだまだ実力差はあっても隙を突けばいけると考えたが、リオンの言う通り甘かったようだ。
「おいおい、貴族の息子がそんな行儀悪い言葉を使うなよ。リズに怒られるぞ?」
「それはリオンさんも一緒だろう? こんなに地面を荒らして」
「この辺りは訓練用の土地なんだから、後で整備すれば問題はないさ」
「たしかにそうですね」
「そもそも半分はグレインのせいじゃねえか」
リオンさんが反論してくる。
流石に気付いたようだ。
俺はそれを気にせず、水筒をリオンさんに放る。
「ありがとな」
リオンさんは水筒の蓋を開け、中身を飲もうとする。
その瞬間、俺は魔力を変化させる。
「アクアボール」
「うぷっ」
中の水が形を変える。
いきなりの顔を包み込まれ、リオンさんは驚きの表情を浮かべる。
すぐに両手ではずそうとする。
「隙あり」
(ドンッ)
その瞬間を狙い、俺はリオンさんの腹部に攻撃を加える。
もちろん、俺の攻撃ではたいしたダメージにはなっていないだろう。
「これで一本ですね」
俺はそう言って、リオンさんの顔を覆う水を霧散させた。
改訂しました。
ブックマーク・評価等は作者のやる気につながるので是非お願いします。




