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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第三章 小さな転生貴族は怪物たちと出会う【少年編2】
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閑話4 先輩メイドは過去を話し、提案する

※3月9日に追加しました。


サーラの追加設定。

書いているうちにお気に入りになったので、書いてみました。

見た目のイメージは大人の女性です。


「ちょっといいかしら、リュコ」

「あ、サーラ先輩」


 グレインの元に戻ろうとするリュコをサーラが呼び止める。


「大変だったみたいね」

「ええ。ですが、グレイン様のおかげで私はふっきれました」

「それは良かったわ」


 リュコが元気に答えるとサーラは嬉しそうにする。

 サーラはメイドの先輩であり、拾われてきたリュコのことを妹のように気に懸けていた。

 だからこそ、今回の出来事は結果として良かったと思っている。


「それで何か用ですか?」


 流石にこれだけのために話しかけるとリュコは思わなかった。

 サーラはシリウスとアリスの専属メイドであり、リュコよりも多忙である。


「エリザベス様から魔法の訓練を受けるという話を聞いたわ」

「そうですよ」


 別に嘘をつくことではないので、リュコは正直に話す。

 だが、すぐに浅慮であったことに気付く。

 もしかして、先輩を差し置いて奥様に気に入られるのは良くなかったのか、と。


「じゃあ、私もあなたに指導するわ」

「え?」


 予想外の言葉にリュコは驚く。

 どうしてそんな話になったのだろうか、と。


「メイドの仕事ですか?」

「違うわ」


 サーラは首を振る。

 先輩として指導をするなら、てっきりメイドの仕事についてだと思ったが、どうやら違うようだ。


「リュコには私の過去を話したことがあったかしら?」

「いえ、聞いたことはないです」

「私はアレン=カルヴァドス男爵の殺害を依頼された暗殺者よ」

「えぇっ⁉」


 とんでもない過去を暴露されてしまった。

 そんなことをカルヴァドス男爵家の屋敷で話してもいいのだろうか?


「安心しなさい。今の私は暗殺を失敗して、カルヴァドス男爵家に雇われたメイドの一人よ」

「……」

「流石に暗殺しようとしている人間を子供の専属メイドにはしないでしょ?」

「たしかにそうですね」


 納得のいく理由にリュコも頷く。


「カルヴァドス男爵の叙爵を快く思わない貴族が暗殺を目論んだの。そこで依頼されたのが当時は裏の世界で名が通っていた私だったわ」

「サーラ先輩にそんな過去が……」

「当時の私は自分の実力に自信を持っていたわ。暗殺を失敗したことはない、どんな相手も殺すことができる、とね」

「……」


 サーラの独白にリュコは何も言わない。

 暗殺について嫌悪感があるのだろう。

 普通の感覚であれば、当然である。


「でも、それは間違いだったわ。上には上がいる──私はあっさりと旦那様に敗北したわ。まったく手も足も出なかった」

「そんなに差があったんですね」

「それ以来、私は足を洗ったわ。正確に言うと、ヘッドハンティングされたからね」

「ヘッドハンティング?」

「シリウス様とアリス様の専属メイドにならないか提案されたわ」

「暗殺者相手に?」


 予想の斜め上をいく答えだった。

 何をどうしたら、そんな提案をするのだろうか?

 【巨人殺し】ともなると、常人には考えないことができるのか?


「旦那様も奥様方も心配していたわ。自分たちへの悪意が子供たちに向けられることを」

「あ」


 リュコはようやく理解できた。

 アレンが何を心配して、そんな提案をしたのかを。


「まあ、私が暗殺を失敗した情報は裏の世界に広まったから、カルヴァドス男爵家を狙う輩は一気に減ったわ。そういう意味では私の失敗も役に立った訳ね」

「どれだけすごい人だったんですか……」


 リュコは驚きのあまりこれ以上言えなかった。

 まさか自分の先輩が裏世界の人間を慄かせるほどの人物だとは……


「そんな私の技術をリュコに受け継いでもらおうと思ったの」

「暗殺をですか? 私はそんなことをするつもりはないですけど」

「違うわ。暗殺は私のかつての仕事で、受け継いでもらいたいのは戦闘の技術よ」

「戦闘の技術ですか?」


 リュコは理解できず、首を傾げる。

 何が違うのか、わからなかった。


「私の技術は暗殺に役立つから使っていただけ。使い方次第ではそれ以外のこともできるわ」

「その技術が私の役に立つのですか?」

「ええ、もちろん。同じ魔法戦士型だとしても、エリザベス様とリュコではタイプが違うはずよ」

「そうなんですか?」


 リュコは思わず聞き返してしまう。

 まさかそんなことを言われるとは思わなかった。


「エリザベス様は魔法で身体能力を高めた上で戦っているわ。でも、リュコにはその必要はないわね」

「……私に獣人の血が流れているからですか?」

「ええ、その通りよ。だから、その身体能力を活かして、私の技術を身につけるべきだと奥様方が提案したの」

「お二人が……」


 エリザベスとクリスからの提案であることに少し驚いた。

 だが、二人の言葉は間違いではないだろうから、信じることができた。


「わかりました。ご指導お願いできますか?」

「もちろんよ。でも、私の指導は厳しいわよ」

「覚悟しています」


 サーラの脅しをリュコははね除ける。

 どんな厳しいことでも今の彼女は超えることができると思っていた。

 グレインを支えることができるのならば、どんなことでもやっていこうと決めたのだ。






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