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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第八章 成長した転生貴族は留学する
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8-1-14 死んだ社畜犯人が分からない


「いや、それもできなかった」

「どうして?」


 国王が首を横に振り、俺は疑問に思った。

 今までの話から、シャル嬢の料理に毒を盛ることができる人間は絞られたはずだ。

 そして、そこから【反国王派】に関係する人物を調べれば、犯人を見つけることができると思うのだが……


「結果として、シャルの元に皿を持ってくるまでの間に毒を混入できる者がいなかった」

「【反国王派】もですか?」

「ああ、そうだ。もちろん、関係ありそうな全員を調べたがな……だが、誰も毒を混入することはできなかった」

「それはありえないのでは?」


 国王の言葉を俺は理解できなかった。

 シャル嬢の皿に毒が盛られていたことは確実だ。

 そして、シャル嬢の皿のみに毒が混入していたのであれば、調理をしたコックが犯人である可能性はほぼ消える。

 ならば、毒を混入したのは調理終えてから、シャル嬢の元に運ばれてくるまでの間のはずだ。

 その間をかかわった人物はそこまで多くいるわけでもない。

 そこから【反国王派】をあぶりだせば、犯人である可能性が高いと思ったのだが……


「正確に言うと、毒を混入できるタイミングのあるものは複数いた」

「その中に【反国王派】は?」

「もちろんおったよ。といっても、【国王派】もいたがな」

「だったら、その【反国王派】の人物が犯人の可能性が高いのでは?」


 国王の話を聞き、俺は思ったことを口にした。

 聞く限り、犯人を見つけ出すことはできそうな気がするが……


「その者には不可能じゃよ」

「どうして?」

「なぜなら、毒を持っておらんかったからだ」

「っ!?」


 国王の言葉に俺は驚愕の表情を浮かべる。

 たしかに、国王の言う通りであれば、その人物が犯人である可能性は低い。

 俺は【反国王派】がシャル嬢の命を狙っているというストーリーで犯人を推測してきた。

 シャル嬢の命を狙っているのであれば、そう考えるのが当たり前だからだ。

 しかし、その人物が毒を持っていなかった。

 これはどういうことなのだろうか?


「本当に毒を持っていなかったんですか?」

「ああ、全身をくまなく調べたが、毒らしきものはもっていなかったよ」

「どこかに隠したのでは?」


 俺は思わず質問をする。

 持っていなかったのであれば、毒を混入した後に隠した可能性もあるはずだ。

 ならば、それを探せば証拠になるはずなのだが……


「残念ながら見つけることはできなかった」

「探したのは部屋だけですか?」

「もちろん、調理場から食事をする場までのルート周辺もくまなく調べたさ。だが、それでも見つけることはできなかった」

「……」

「それにその者が関わったのは、私たちに料理を運んでくる行程のみだ。ならば、毒を混入したのは、その場である可能性が高かったはずだろう」

「……そうですね」


 国王の言葉に俺はわからなくなる。

 毒が混入されていたのは事実である。

 しかし、毒を混入できた人物がいない。

 これは一体、どんなトリックを使ったのだろうか?

 実際に現場を見なければ、わからないかもしれない。

 いや、素人の俺がいったところで、何もできない可能性の方が高いだろう。


「流石に証拠もなく、その者を犯人扱いをすることはできなかった。無罪放免、となったよ」

「でしょうね……ですが、犯人は野放しのまま、ですか」

「そういうことになる。つまり、次はいつシャルロットが狙われるか、わからないのだ」

「……」


 想像以上にやばい状況である。

 おそらくその事件のせいで城の中は厳戒態勢になっていると考えられる。

 しかし、犯人が野放しである以上、いつどのような状況で襲われるのかわからないのだ。

 しかも、相手はまったく悟られない方法でシャルの皿へ的確に毒を混入することができたわけだ。

 厳戒態勢の中、シャルの命を狙うことなど造作もない事かもしれないのだ。


「だからこそ、グレイン君とともに留学へ連れて行って欲しいのだよ」

「……わかりました」


 これは承諾するしかなかった。

 流石に王女の命が危険にさらされている状態でこの国に置いていくことなどできるはずがない。

 いくら異常な能力を持とうとも、普通の感性ぐらい持ち合わせている。

 知り合いの女の子を見捨てることなどできるはずもない。


「本当か?」

「ええ、もちろん」

「ありがとう。シャルロットにぜひ伝えてくれ」

「? 陛下が伝えればいいのでは?」


 国王の言葉に疑問を感じ、俺は首を傾げる。

 どうして自分で伝えないのだろうか?

 その疑問を国王はすぐに告げた。


「私には無理だよ。シャルロットは城内におらんのだから……」

「え? じゃあ、どこに?」

「キュラソー公爵家だよ。あそこは今の城内より安心だからな」

「ああ、なるほど」


 国王の言葉に俺は納得した。

 城内にはいろいろな派閥の人間が混在しているせいで、敵味方が入り乱れている状況になってしまっている。

 だが、キュラソー公爵家は【国王派】の筆頭貴族──その屋敷に反国王派が存在する可能性はかなり低い。

 たしかに、それは安全な場所だ。







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