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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第八章 成長した転生貴族は留学する
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8-1-13 死んだ社畜は国王に頼まれる


「おお、話が逸れてしまったな」

「今のが本題ではないんですね」

「そんなわけないだろう。そんなことで呼び出すなど、馬鹿らしいではないか」


 俺の反応に国王が笑う・。

 流石にシャル王女──いや、シャル嬢の呼び方についてが本題ではなかったか。

 まあ、そんなことで呼び出すことなど普通はないだろう。

 親馬鹿そうな国王なら、一概に否定はできないが……

 それにそんな話であれば、城内の状況について聞かれることなどなかったはずだ。

 そして、今までの話から総合すると……


「それでグレイン君に頼みたいことなのだが……シャルロットを留学に連れて行って欲しい」

「やはりそうですか……」

「流石にこれだけ伝えれば、推測できるか」


 国王が真剣な表情で用件を伝えてきた。

 それは予想通りのことだった。

 だが、それでも聞いておかないといけないこともある。


「一応、理由を聞いても良いですか?」

「もちろん、城内が不穏だからだ」

「そこは理解できますが……留学するほどですか?」


 国王の言葉に俺は質問する。

 娘を心配する父親として、危険なところに置きたくない気持ちは理解できる。

 だが、それでも王城の中だ。

 他の場所に比べれば、大分安全だと思うのだが……そんな俺の考えは、どうやら甘かったようだ。


「今の城内では何が起こるかわからん。シャルロットのことを完全に守り切れないのだよ」

「……というと?」

「今の城内にいる【国王派】は全体の7割と言ったところだろう」

「過半数はいますね」

「だが、逆に言うならば、【反国王派】が3割近くいるということにもなる。それがどういうことかわかるか?」

「……数の上では有利だとしても、一定数いるということですね。そして、それだけいれば、水面下の工作もさほど難しくはない、と?」

「そういうことだ」


 俺の説明に国王は頷く。

 国王が心配しているのは、シャル嬢が狙われることではない。

 彼女は生まれや立場から狙われることから避けられぬ運命なのだ。

 女の子にとっては酷な運命かもしれないが、それは仕方がない。

 周囲がいかに守ってあげるかがカギとなってくるわけだ。

 守る側からすれば、襲撃するルートさえ把握することで守ることはさほど難しい事ではない。

 しかし、今の王城内では……


「何かあったんですか?」

「先日、シャルロットの食事の中に毒物が混入されておった」

「それは……」


 いきなり告げられた真実に俺は目を見開く。

 まさかそんなことを言われるとは思わなかったからだ。

 想像以上にやばい出来事であった。


「もちろん、毒味がおったおかげで食べる前に回避することはできた。そやつは三日ほど腹を下しておったがの」

「……もしシャル嬢が口にしていたら?」

「毒に慣れている毒味ですらそうなっていたのだ。もっと酷い事に……命の危険もあったかもしれないのう」

「……」


 かなり不味い状況だったようだ。

 いつの出来事かはわからないが、その後に俺たちは普通に会っていたはずだ。

 何の気もなしに話していたが、それを知っていたら……


「それで犯人はわかっているんですか?」

「いや、見つからなかった」

「見つからなかった、ですか? 探したんでしょう?」


 国王の言葉に俺は驚く。

 事件が起こったのに、なぜ犯人がわからないのか?

 前世のサスペンスなどのトリックなどがあるはずもなく、見つけることもできそうなものだが……


「毒が入っておったのはスープ──それがシャルの元に運ばれてくる間に様々な人の手に渡っておるのだよ」

「それは?」

「まずは作ったコック。しかも、一人では作っているのではなく、調理をしている間に複数のコックが作業しておった。だが、コックの中に犯人がいるとは思えない」

「どうしてですか?」


 国王の言葉に俺は首を傾げる。

 複数人のコックが調理をしていて、犯人を特定できないのなら理解できる。

 だが、コックの中に犯人がいないと考えるにはどんな理由があるのだろうか?


「調理中に毒物を混入しているのであれば、私たちの料理にも毒が入ってもおかしくはないだろう」

「あ……」


 国王の説明にようやく理解できた。

 コックが調理中に毒物を混入しているのであれば、大鍋に混入している可能性が高いはずだ。

 個々の料理を盛っている皿に混入することもできなくはないだろうが、それは考えにくいと思う。

 狙ってシャル嬢に毒を盛ろうとしているのであれば、彼女にサーブされる皿へ的確に毒を盛らなければいけない。

 料理を運ばないコックたちがそんなことをできるとは思えない。


「ということは、シャル嬢の皿に直接毒が盛られた、ということですか?」

「その可能性が高いだろうな」

「だったら、そこから犯人は特定できるのでは?」


 一つの疑問が消え、新たな疑問が増えた。

 コックが消えたのであれば、犯人の候補が少し絞ることができたはずだ。

 だったら、犯人の目星を付けることができるのでは……







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