8-1-9 死んだ社畜は聞き流す
今回の話から、突然謎の人物が……
いきなりの登場に不安に思うかもしれませんが、気にせず流してくれると幸いです。
作者の思い付きで突然ぶっこんだキャラなのですが、今後の展開(二章ぐらいあと)にちょうどいいと思ったので入れました。
少しどころかかなり雑なキャラになっている気もしますが、大事なキャラ(の予定)ですので気にしないでください。
落ち込むシリウスを慰め、学長との話を俺たちは準備のために帰宅しようとした。
「グレイン=カルヴァドス様ですね?」
「はい?」
だが、門を出てすぐにいきなり話しかけられた。
声をかけてきたのは40歳ぐらいのおじさんだった。
もちろん、見たことはない。
しかし、油断をすることはできない。
普通の見た目をしているが、その服の下には鍛えられたからだがあるようだ。
少しの仕草でそれが分かる。
「私は陛下の使いです。グレイン様を連れてくるよう、申し付けられました」
「陛下が?」
内容に俺は驚きを隠せない。
まさか陛下に呼び出されることがあるとは思わなかった。
男爵の息子程度では早々会うことができるはずもなく、最後に会ったのはいつだっただろうか?
まあ、会うような用もなかったので、それも仕方がないのかもしれない。
だからこそ、こうやって呼び出されるとは思わなかった。
「えっと、どういった用件で?」
「それは私から伝えることはできません」
俺の質問に男性は首を振る。
伝えられていないのだろうか?
いや、これはこんなところで話すべきではない、ということだろうか?
国王からの用件、明らかに普通のことではないだろう。
ならば、こんな人通りの多い誰が聞いているのかわからない状況で話せるはずもないだろう。
「俺だけですか?」
「はい、そうですね。グレイン様だけを連れてくるように言われております」
「どうして?」
「内密に話したいことだそうで、人目につくような行動は避けるべきということです」
「なるほど」
面倒そうな匂いがしてきた。
国王が何を話したいのかはわからないが、確実に面倒事だろう。
聞きたくない気持ちはあるが、こうやって呼び出された以上は向かわないといけないだろう。
相手は国のトップなのだから……
「わかりました。今からですか?」
「はい、すぐにでも」
俺が了承すると、男性は出発を促す。
どうやらこの人はせっかちなようだ。
だが、少しは待って欲しい。
「じゃあ、行ってくるよ」
「聞いていたからわかってるよ。こっちはまかせて」
「よろしく」
シリウスに後のことは頼み、俺は男性の後をついていった。
背後では俺に対して文句を言うアリスたちの声が聞こえてきた。
留学のための準備をするため、一緒に買い物に行こうと約束をしていたのだ。
それを反故にすることになったわけだから、彼女たちが怒っても仕方がない。
だが、流石に買い物のために国王からの命令を断る方が難しいだろう。
あとで何らかの埋め合わせはしないといけないが……
「ほう……」
「どうしました?」
少ししてから、男性が感心したような声を漏らす。
そんな反応をされる意味が分からず、俺は質問してしまった。
「噂でグレイン様のことを聞いていましたが、真実だとは到底思っていませんでした」
「噂とは、そういうものですからね。過剰に話を盛られることなんて、ざらにありますよ」
「ですが、どうやらその噂は本当だったようだ」
「何の噂か、聞かない方が良いでしょうね」
男性の言葉に俺は噂の内容を聞かないように決めた。
どうせろくでもない内容に決まっている。
俺の精神的に聞かない方がいいはずだ。
「先ほどから何度か撒こうとしているのですが、不可能なようです」
「さっきからおかしな挙動をしていたのは、そういうことですか……というか、どうしてそんなことを?」
男性の言葉に俺は質問してしまう。
この数分の間に男性は俺の方を振り向くことなく、進み続けていた。
もちろん、指示を出すこともなかった。
ただただ進み続けていたのだ。
しかも、目的地である王城にまっすぐに向かわず、裏路地などの入り組んだ道をあえて通っていた。
普通ではないスピードで……
「興味本位ですね」
「え?」
「噂のグレイン=カルヴァドス様の実力を確かめるため、このようなことをしたのですよ。といっても、私が確かめることができるのはこの程度のことだけですが……」
この程度とは、先ほどまでの動きのことだろうか?
あれは俺だからついて行けたが、シリウスやレヴィアならついていくことはできなかっただろう。
アリスとティリスはついてこれるのかもしれないが、あの二人は身体能力に優れている。
一般的な例ではないだろう。
「あなたなら、他の手段でも試せるのでは? 例えば、手合わせとか?」
「そちらは私の専門ではないので、無理なのはわかっていますよ」
「そうですか? 明らかに場馴れしてそうな雰囲気ですが……」
男性の言葉を謙遜だと思い、俺はそんなことを聞く。
アレン達ほどではないが、ガルドやウィズ──少なくともA級冒険者クラスの実力はあるように思う。
だが、そんな俺の言葉に男性は首を振る。
「私の専門は諜報と暗さ……掃除をすることですから、グレイン様と真正面から戦うような実力はありませんよ」
「……そうですか」
男性の言いかけたことを俺は聞かないことにした。
何かとんでもないことを言いかけていたが、隠そうとしているのなら聞いていないふりをした方が良いだろう。
面倒ごとに巻き込まれたくないしね。
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