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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第八章 成長した転生貴族は留学する
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8-1-5 死んだ社畜は首を傾げる


「そもそも浮かせる必要がないんじゃないのか?」

「「え?」」


 俺の指摘にシリウスとレヴィアが驚いたような声を漏らす。

 予想外の言葉だったのだろう。

 まあ、二人が考えている方向性とは真逆といっていいからな。

 だが、俺はそれでいいと思っている。


「浮かせるせいで余計な魔力を消費しているんだろう? だったら、浮かせなければいいと思うな」

「一応、遠隔操作などをするために考えているんだけど……」

「それで消耗が激しくなれば、意味がなくなるだろ? むしろ、デメリットしかないと思うな」

「むぅ」


 俺の説明にシリウスが考え込む。

 否定をしようにも、言っていることが間違っていないからだ。

 だが、自分達の考えていた方向性とは全く違うので、悩んでしまっているわけで……


「だったら、最初から自分の魔力の支配下に置いておくべきだな。そうすれば、消耗も減るし、操作もしやすくなるはずだ」

「けど、そこまで遠距離で攻撃ができないよ?」

「……そこまで遠距離から攻撃する場面があるか?」

「……よく考えたら、ないね」


 俺の指摘にシリウスが気付いた。

 魔法を使う者として、遠距離からの攻撃が有用であると思ったのだろう。

 しかし、だからといって際限なく距離を取っても意味はない。

 威力の高い魔法を放つのならまだしも、精密な操作が必要な魔法なら距離を取りすぎることが逆に駄目だからだ。

 シリウスが今回考えている魔法は後者である。

 とりあえず、シリウスにとって有用な方法を提案してみる。


「戦っている場所を一面氷で覆ってみればどうだろう?」

「どういうこと?」


 俺の言葉にシリウスが首を傾げる。

 まあ、これだけでは何を言いたいのかは理解できないだろう。

 説明を続ける。


「俺やレヴィアの【土属性】なら魔力を通すことで支配下に置くことができるけど、シリウス兄さんの【氷属性】は難しいだろう?」

「そうだね。氷がないんだから……」

「だからこそ、【氷属性】の魔法で周囲をまず凍り付かせるわけだ」

「それも魔力の消費が激しくない?」


 俺の提案にシリウスが質問してくる。

 たしかにその心配はもっともだ。

 空中に浮かせる魔法の消耗が激しいのに、全体を凍らせる提案も魔力の消耗が激しいと思ったのだろう。

 だが、何事にも抜け穴はある。


「別に全体を凍らせる必要はないんだよ」

「それって?」

「要は地面の表面だけを凍らせればいいんだ。土台を作っているだけなんだから」

「土台?」


 俺の説明にシリウスは悩む。

 どうやらまだ理解できないようだ。

 まあ、俺がしたい事は明らかに普通ではないからな。

 こんなことをしようとするなど、魔法を使えるものの中でもトップクラスの人間ぐらいだろう。

 むしろ、そういう者達でも基本的にはやらないのではないだろうか?


「俺が言いたいのは、凍り付かせることで周囲を兄さんの支配下に置くわけだ」

「そこは理解できているよ。けど、どんな目的で? 相手の動きどころか、味方の動きも阻害しかねないけど……」


 俺の説明にシリウスが聞いてくる。

 なるほど、確かに言う通りである。

 これは味方が周囲でいる状況では使えない可能性が高い。

 シリウスが前線で戦うことで、目の前からくる敵には使うことはできるかもしれないが……


「まあ、それは使い方次第だな。とりあえず、周囲を兄さんの支配下に置くことで、魔法を自在に扱うようにするんだ」

「というと?」

「要は氷の土台があるから、そこに砲台のようなものを作ればいいわけだ。そうすれば、少し離れたところだったとしても、近くから魔法を使うことができるわけだ」

「なるほど……土台があるおかげで、魔力の消耗も少なくて済むわけだね? でも、味方の動きを阻害する問題は解決していない気が……」

「まあ、これは集団戦では使えないだろうな。あくまでも相手が固まっている状況でしか使えないだろうし……」

「う~ん……使いどころが限られるね」


 俺の説明を聞き、シリウスは悩む。

 有用な方法ではあるが、いつでも使えるわけではない。

 使えるように練習をすべきか困っているのだろう。


「けど、アリス姉さんと組んだら、いい方法だとは思うな」

「そうだね。アリスなら氷の上を自在に動けるからね。同じ【氷属性】だからかな?」

「おそらく、そうだと思うよ。といっても、疑問に思うことがあるけど」

「疑問?」

「アリス姉さんは魔法の原理とか詳しくないだろ?」

「そうだね」

「魔法を感覚的に使っているわけだ。まあ、それ自体に問題はない」

「問題はないの?」

「自分の魔力を使っているからな。自分の体を動かしているようなものだから、感覚的に扱ってもさほど問題はない」

「ああ、なるほど」


 俺の説明にシリウスが納得する。

 理論派の人間には理解できないかもしれないが、魔法だって感覚で使うことができる。

 いや、むしろ感覚で使った方がいいまである。

 魔法というのはイメージ──理論的にやるよりは感覚でした方が良い結果になることが多い。

 それを理論でやろうとしていたからこそ、前までの学院では大した生徒がいなかったのだ。

 逆に冒険者のような実戦を経験している者たちは学生に比べて良い魔法を使っていたわけだ。


「でも、シリウス兄さんが作った土台はアリス姉さんの支配外だろ? だったら、自分の感覚ではどうにもできないと思うんだけど……」

「そういうことか……たしかに、謎だね?」

「おそらく【属性】以外にも理由はあると思うんだけど……」

「思いつかないなぁ」


 二人で首を傾げる。

 ずっと一緒にいるが、アリスのことをすべて理解できない。

 あんなに単純な人間なのに……







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