閑話11 とある場所で黒幕は笑う
※黒幕視点です。
本編登場はまだまだ先ですね。
(???視点)
「ハハハッ、どうやらうまくいったようだな」
一人の男が水晶を見ながら、嬉しそうなに高笑いをした。
その水晶には遠く離れた場所での光景が映っていた。
それはカイザル帝国にて、勇者たちが召喚された場面であった。
「今まで何度も挑戦し、そのたびに失敗してきたことだが……ようやく成功したぞ」
男は水晶を見ながら、感慨深げにそう呟いた。
その水晶の先には、偉そうな男と二人の女性が話していた。
女性の後ろには不安げな男女が多くいた。
おそらく、見ず知らずの状況に陥り、不安でしかないのだろう。
むしろ、この状況で皇帝と話している女性二人の胆力の方が異常と言えるだろう。
まあ、男としては、その二人がいた方が都合がいいわけだが……
「しかし、【聖剣】が使える者が二人、【聖女】が一人か……思ったよりも少ないな」
男は召喚された集団たちを見て、そう呟く。
男としては、もっと戦力が欲しかった。
だが、予想より少なくて、がっかりしてしまっていた。
「まあ、ゼロの可能性もあったにしてはよくやった方か?」
しかし、少なくとも存在しているということを慰めにする。
ゼロだった場合は失敗と言わざるを得ないからである。
男は気持ちを切り替える。
「む?」
そこで男はあることに気が付く。
彼の視線の先には一人の少女がいた。
オロオロしている集団の中で、しっかりと状況を確認していた。
他にも何人か同じように確認しているが、それでもこの少女はより落ち着いていた。
イレギュラーな状況に耐性でもあるのだろうか、それは男にはわからない。
だが、一つだけ嬉しい誤算があった。
「まさか、こんな代物がくるなんて……これは面白くなりそうだ」
男は口角を上げ、ニヤリと笑った。
その存在は彼の計画の成功率を格段に上げてくれるような存在だった。
ぜひとも最後まで生き残ってもらいたい。
「しかし、俺が直接手を出すにはいかないからな……一体どうしたら?」
男は顎に手を当てて、考え込む。
いくら素晴らしい素材だとはいえ、元々は普通の学生なのだ。
まだまだ弱く、簡単に命を落とす可能性がある。
どうにか生き残らせたいが……
「仕方がない、来るべき時に手助けをするとしよう。強力な武器でも与えるとするか」
とりあえず、男は自分にできることをすること決めた。
といっても、まだまだ先の話ではあるが……
男はそう決めると、視線を水晶から虚空へと移した。
もちろん、そこには何もない。
いや、この空間にはその男と水晶以外何もなかった。
「ああ、その時が楽しみだ。あの女は一体、どんな反応をしてくれるかな? 自分の管理している世界が壊されたとしたら……くくくっ、ははははっ」
男は高笑いを始めた。
その表情は愉悦に歪んでおり、明らかに普通とは言い難かった。
だが、それを指摘する者はここにはいない。
男以外の者がいたとしても、それを指摘することができる者などいないだろうが……
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※追加の説明。
ちなみに、閑話9,10の話は第七章の本編と時系列的にはほぼ同時期です。
といっても、一年の中で一緒というだけで、多少のずれはありますが……
あと、地球と異世界の時間の流れが違うという設定です。
これは作者が間違っているとかではなく、今後の展開を考えてでの設定なので悪しからず。




