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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第七章 成長した転生貴族は冒険者になる 【学院編2】
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閑話10-37 女子高生は異世界召喚される


「普通の感覚の持ち主なら、そんなことはしないわね。でも、権力に目の眩んだ人間はそのためになら、なんでもやるんじゃないの?」

「う~ん……そこまでやる人がいないと信じたいけど……」


 吉田さんの言葉に私は悩んでいるような声を漏らす。

 言っていることは理解できるのだが、流石にそこまでやる人間がいるとは思えない。

 いや、思いたくないだけかもしれない。

 成功なら万々歳かもしれないが、失敗なら失脚どころでは済まないからだ。

 自分の命だけならまだしも、一族郎党処刑なんてことにもなりかねないはずだ。

 いくら権力を得るためだとはいえ、そんな危険を冒すのだろうか?


「聖」

「なに?」


 悩む私に吉田さんが話かけてくる。

 真剣な表情なので、何か大事なことを言うのかもしれない


「こういう言葉を知っている? 「犯罪はバレなければ、犯罪じゃない」ってね?」

「……聞いたことはあるけど」

「そう言う権力を得ようとする奴らは「自分たちは大丈夫だ」と思って、そう言う悪事を行うのよ。それが人間ってものじゃないかしら」

「……」


 吉田さんの説明に私は何も言うことはできなかった。

 たしかにその通りかもしれない。

 人間とは強欲な生き物であり、自分の利益のためなら悪事を平気でするような人間もいるのだ。

 といっても、それはあくまでも一部の人間であり、ほとんどの人はそんなことをせずに日常を過ごしているのだけれど……


「とりあえず、そういう可能性もあるだろうから気をつけないといけない、ってことよ」

「理解はできたけど、私たちにどうにかする手立てはあるの? 少なくとも、そうなったら相手は貴族とかの可能性が高いでしょ?」


 吉田さんに私は質問する。

 私たちに失態させようとする人間がいるのはわかったが、それについては私たちだけでは対処できない気がする。

 直接的な妨害であれば、対処することは難しくない。

 だが、間接的な妨害になってくると、それは途端に難しくなってくる。

 反論しようとすれば、「必死だから」という理由で差も真実かのように話を広げられる可能性がある。

 逆に黙っていたとしても、「反論もできない」という理由で真実にされる可能性もある。

 そんなことをしている証拠を掴もうにも、噂の大元を見つけることはかなり難しいはずだ。

 うまく見つけたとしても、否定をされればそれだけで話は長引いてしまうことになる。

 他にもいろいろな理由はあるが、私たちに同行できるようなことではない気がする。

 吉田さんは何か考えているのだろうか?


「だったら、事前に頼んでおけばいいのよ」

「頼む?」

「私たちにはこの国の最高権力者と伝手があるでしょ?」

「ああ、なるほど」


 吉田さんの言いたいことは理解できた。

 相手が情報を使ってくるのであれば、事前により高位の者の庇護に入ればいいわけだ。

 私たちにはこの国の皇帝との伝手がある。

 たとえ酷い噂を流されたとしても、その程度なら皇帝の宣言で嘘だと示すことができるだろう。

 それに国の諜報部などもいるかもしれないから、私たちを陥れようとする人間を見つけることができるかもしれない。

 たしかに、有効な手立てかもしれない。


「でも、私たちの話でそんなことをしてくれるかしら? 皇帝だって、忙しいでしょう?」


 私は純粋な疑問を感じる。

 この国のトップということは、それ相応に仕事があるということだ。

 いかに下の人間が優秀だったとしても、皇帝にしかできない仕事だって存在するはずだ。

 そんな人に創造程度の話で頼みごとをするのは気が引けるのだけど……


「それは大丈夫じゃない?」

「どうして?」

「私たちは【勇者】よ? しかも、この国のピンチだからという理由で勝手に召喚された、ね。だったら、私たちの頼みぐらいは聞くのが道理じゃないかしら?」

「……それはたしかに」


 吉田さんの説明に私は納得する。

 よくよく考えれば、私たちは無理矢理呼び出された側の人間だ。

 普通はいろいろと文句を言われてもおかしくはない状況のはずである。 

 それを私たちは素直に従っている。

 不満に思っているクラスメートもいるかもしれないが、表立って言う者はいない。

 この状況なら、多少は無理を言っても聞いてくれそうな気がする。


「それに聖は【聖女】──【勇者】の中でもかなり格が上のはずよ。そんな聖やその仲間が貶められそうになった、と言う理由なら十分でしょ」

「そうね……じゃあ、明日にでも話に行きましょう」

「とりあえず、みんなが集まる前に──いや、宰相に伝えて、私たちだけ会えるようにしてもらった方が良いわね」

「たしかにその方がいいかもね」


 明日の方針は決まった。

 あくまでもこれは予想の話である。

 そんな話をわざわざみんなの前でするべきではないはずだ。

 クラスメートたちに不要な心配を与えることになりかねないし、私たちを貶めようとする人間には警戒されるかもしれない。

 まあ、後者は警戒させることで逆に安全になるかもしれないけど……






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