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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第三章 小さな転生貴族は怪物たちと出会う【少年編2】
57/618

3-17 小さな転生貴族は名付ける

※3月6日に更新しました。


※ハーフをデュアルに変更しました。

作者としては普通にハーフでも大丈夫だと思ってますが、ご指摘を受けたのでかっこいい感じに変えてみました。

特に思い入れがあるわけでもないですし。


「えっと……なに、この状況?」


 屋敷に戻ってくると、目の前には想像もしない光景があった。

 言葉に出してはいないが、リュコも同じような気持ちだろう。

 まったく意味が分からないといった表情をしている。


「やっと帰ってきた。心配したわ」

「えっと、これは?」


 クリスが話しかけてきたので、俺は質問する。


「ん……説教かな?」

「……まあ、そうとしか説明できませんよね」


 簡潔な内容に俺は納得するしかない。

 俺の母親であるエリザベスの眼前で二人の王──つまり、【獣王】と【魔王】が土下座をしている。

 エリザベスは元冒険者で、アレンと結婚したことで貴族になった。

 つまり、元々平民──というか、貴族だったとしても男爵家の第二夫人なので、そこまで位が高いわけではない。

 そんな彼女に許しを請うよう二人の王が土下座をしているのだから、俺たちが驚いても仕方がない事だろう。

 【魔王】──つまり、ルシフェルさんが怒られている理由はわかる。

 一番の原因であることは明白だからだ。

 だが、どうして【獣王】──リオンさんまで一緒に説教をされているのだろうか?

 それが全く分からない。


「リズは【忌み子】という言葉を嫌っている。だから、それを気軽に使った二人に説教をしているの」

「ああ、なるほど」


 クリスの追加説明に俺は頷く。

 それならば、リオンさんが怒られている理由も理解できた。

 そんな会話をしていると、あちらも俺たちが戻ってきたことに気が付いた。


「あら、帰ってきたのね」

「うん、ただいま。ちゃんとリュコを連れて帰ってきたよ」

「ご迷惑をおかけしてすみません」


 エリザベスが笑顔で迎えてくれたので、俺はちゃんと報告する。

 リュコも顔を真っ赤にさせ、謝っている。


「へえ~」


 なぜかその様子にエリザベスがニヤニヤとし始めた。

 俺には彼女がどうしてそんな表情を浮かべているのか、まったくわからない。

 思わず聞いてしまう。


「その顔は何?」

「別に~」

「何かあるんだったら、言ってよ。意味もなく笑われるのはあんまり嬉しくないんだけど……」

「じゃあ、ヒントだけはあげましょうか。やっぱりアレンの子、ということよ」

「えっ!? どういうことなの?」


 俺はさらに疑問に思ってしまう。

 いや、俺は確かにアレンの息子ではあるが、決して彼と似ているわけではない。

 戦闘スタイルなら彼は脳筋であり、俺はあらゆる手段を用いるオールマイティな戦闘スタイル。

 性格的に言っても彼は思ったことをすぐに行動に移すタイプだが、俺は割といろいろ考えてから行動するタイプなのだ。

 全然違うといってもいい。

 何をもって彼女は俺とアレンが似ていると思ったのだろうか?


「……たしかにシリウスよりもその色は強いかも」

「クリス母さんまでっ!?」


 思わぬ相手側の味方がいて、俺はさらに驚愕してしまう。

 どうして母親勢は俺とアレンが似ていると思っているのだろうか?

 本当に意味がわからない。

 そんなことを思っていると、土下座をしていた二人がこちらに向く。


「(ビクッ)」


 いきなり視線を向けられ、リュコが体を震わせる。

 思わずその場から逃げ出そうとしたようだが俺が掴んでいた手で引き留める。

 彼女にはもう逃げてほしくない、そう思っているからぎゅっと握っているのだ。

 すぐに彼女も落ち着きを取り戻し、逃げることはなくなった。

 そんな俺たちに二人は話しかけてくる。


「先ほどは済まなかった。【忌み子】という言葉はもう使わないようにするよ」

「俺も不用意に使っちまったみたいで、謝るよ。すまなかった」


 ルシフェルさんとリオンさんが深々と謝罪する。

 しかも、今度は自分の娘と同年代の女の子に対してだ。

 これが一体どれほど異常な事かわかるだろうか?

 一国の王がたかが小娘に──男爵家のメイド相手に頭を下げているのだ。

 それだけで子供でもおかしいと思うだろう。

 まあ、この場でそんなことを気にしている奴はほとんどいないだろうが……


「そもそも、もう【忌み子】を迫害する社会ではなくなってきつつあるんだ。私たちは元々使っていたから、思わず口にしてしまったが……」

「えっと……それって?」

「別に【忌み子】だからという理由で君が迫害されるということはないんだよ。まあ、その名で呼ばれることはあるかもしれないけどね?」

「ビストでも同じだな」

「はぁ……」


 彼らの言葉にリュコが呆けた声を出してしまう。

 あまりのスケールの話に理解が追い付かないのだろう。

 彼女は【忌み子】本人ではあるが、それが分かったのは先程の話なのだ。

 だから、国の内情とか言われても、全く理解できないわけである。

 そんな状況でエリザベスが話に入ってくる。


「とりあえず、【忌み子】って言葉があまり良くないわね。疎ましく思われている感じが強いから、それだけで迫害されているように思うし」

「ああ、たしかにそうかもしれないね」


 彼女の言葉に俺も賛同する。

 この言葉は迫害を意識してつけられている言葉だ。

 迫害を禁止していくならば、この名前を変えないといけないと思う。


「でも、新たな呼び名が思い浮かばないわね? 元々の【忌み子】はいろんな種族が混ざっていることが多いから、一概に同じ種族とは言えないし」


 エリザベスは少し困ったような表情を浮かべる。

 まあ、そう簡単に名前なんか思いつかないか。

 しかも、【忌み子】がかなり広まっている状態で生半可な名前を付けても浸透しない可能性の方が高い。

 なので、下手な名前は付けられないわけだ。

 それは他の人たちも同様で、どんな名前を付けていいのか決めかねているようだ。

 ならば、俺が提案させてもらおう。


「じゃあ、【デュアル】というのはどうかな?」

「「「「「【デュアル】?」」」」」


 俺の提案にその場にいた全員が疑問に思ったようで、説明させてもらう。


「いや、だって違う種族の両親のもとに生まれる子供なんでしょう? それで親から半分ずつ特性が遺伝されるわけだから……」

「なるほど……だから【デュアル】か」


 俺の説明にまずシリウスが納得してくれた。

 まあ、彼が一番に納得してくれることは予想していた。

 そして、彼を皮切りに他の人たちもどういう意味か理解してくれたようだ。


「よし、国に帰ったらお触れを出すとしよう。今後は【デュアル】という呼び名に変更する、と」

「ええ、それがいいですね」


 リオンさんとルシフェルさんがそれぞれ宣言する。

 二つの国の王が決めたのであれば、すぐに【デュアル】という言葉は広がってくれるだろう。

 そうすれば、自ずと差別的な意識も減っていくはずだ。








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