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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第七章 成長した転生貴族は冒険者になる 【学院編2】
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閑話10-34 女子高生は異世界召喚される


 それから少しの話し合いの末、私は吉田さんたちと一緒に冒険することが正式な決定になった。

 【聖女】という立場上、戦力となるためにも実戦経験を積むことが大事だとなったからである。

 帝国の貴族の一部から「【聖女】を危険な場所に向かわせるべきではない」との反対意見もあったらしいが、それは皇帝の一声で一蹴されていた。


「ふぅ……疲れた」


 私はソファに座り、息を吐いた。

 現在、私は与えられた部屋にいる。

 流石はこの世界の大国の城、クラスメートたちそれぞれに個室が与えられていたのだ。

 初めての場所でいきなり一人にされるのは心配でもあるが、それでも何の準備もなしに共同生活を送らされるよりはましかもしれない

 とりあえず、私は風呂に入ってから、ソファの上で脱力していた。

 今日一日、本当にいろんなことがあった。

 あまりにも突拍子もない事の連続なうえ、委員長という立場のせいで率先して前に出ないといけなかった。

 思っていたよりも疲れていたらしい。


(コンコン)

「はい?」


 不意に部屋の扉がノックされた。

 私は立ち上がると、扉に近づいた。

 扉を開くと……


「あら、吉田さん?」

「夜遅くにごめんね」


 そこにいたのは、吉田さんだった。

 彼女は少し申し訳なさそうな表情で私に謝罪してきた。

 友達なんだから、気にすることでもないと思うけど……


「どうしたの?」

「ちょっと話したいことがあってね」

「話したいこと? なら、中で話しましょう」

「わかったわ」


 私は吉田さんを部屋の中を招き入れた。

 部屋に備え付けのテーブルを挟んで、私たちは座った。

 そして、私は話を切り出す。


「それで話したいこと、って?」

「少し警告しておこうと思って」

「警告?」


 吉田さんの言葉に私は首を傾げる。

 いきなり不穏な言葉だったからである。

 もちろん、私には何のことだかわからない。

 そんな私の様子に、吉田さんは呆れたような表情になる。


「本当にわかっていないの?」

「うん、何のことだか……」

「本当に警告に来ていて、よかった」

「そんなに?」


 吉田さんにものすごく呆れられているのは理解できた。

 しかし、本当に何のことかわからないのだ。


「私と一緒に行動することになったわけだけど、周囲に気を付けた方が良いと思うの」

「周囲?」


 彼女の言葉に首を傾げる。

 それは当たり前のことなのだろうか?

 おそらく、これから危険な魔物たちと戦うことになるだろう。

 命の危険と隣り合わせになるはずだから、警戒するのは当然のはずだけど……


「魔物じゃないわよ?」

「え? 違うの?」

「まあ、そっちも気を付けるべきだけど……私が言いたいのは人間よ」

「人間?」


 彼女の言葉に私はさらに首を傾げる。


「とりあえず、この国の人間ね」

「え?」

「当然でしょ? 私たちはまったく見知らぬ世界から来たばかりで、この世界の常識については疎いのよ。つまり、今ならどんな嘘を言っても、信じさせることができるかもしれないわけよ」

「理屈はわからなくもないけど、陛下や宰相さんがそんなことをするような人には思えなかったけど?」


 吉田さんの言葉に私は反論する。

 今日一日話した感じ、陛下や宰相が人を騙すような悪い人には思えなかった。

 といっても、彼らのことを理解できているかは怪しいけど……


「あの二人はともかく、他の貴族たちが騙してくる可能性もあるわよ。【勇者】という強大な戦力を自身の派閥に取り込もうとして、ね」

「ああ、なるほど……それはありえそうね」


 吉田さんの言葉に納得する。

 たしかに彼女の言う通りかもしれない。

 権力に執着するような者がいれば、【勇者】を陣営に引き込むことで派閥の力を強めることができる。

 国の中枢であるからこそ、そう言う人間も現れるだろう。


「それにあの二人の言っていることもすべてが真実だとは限らないのよ?」

「どういうこと?」


 私はまた首を傾げることになる。

 それはあの二人が嘘をついているということだろうか?


「あの二人は真実だと思って話しているかもしれない。けれど、それはあの二人が常識だと思って、話しているのに過ぎないの。違う視点から見れば、真逆のことが正義になるかもしれないわ」

「それって……」

「もしかしたら、【魔族】という存在が悪くないかもしれない、ってことね」

「……」


 吉田さんの言葉を聞き、私は黙り込んでしまう。

 反論することができない。


「といっても、そう断定することができるほど情報があるわけでもないわ。もしかすると、私の取り越し苦労かもしれない」

「でも、その可能性もあることを考慮しておけ、ってことね?」

「ええ、そうよ。聖は根本的に人を信じようとしているから、警告した方が良いと思ってね」

「なるほど……たしかにその通りね」


 吉田さんの心配していた理由は理解できた。

 その点で彼女に感謝するしかないわ。







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