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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第七章 成長した転生貴族は冒険者になる 【学院編2】
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閑話10-31 女子高生は異世界召喚される


「……つまり、俺たちを怪我させずに止めることができると思ったわけか?」


 西園寺くんが口ごもったのを見て、東郷くんが会話に入ってきた。

 一応、彼も被害者の一人である。

 文句を言う権利があるだろう。


「ええ、そうね」

「だが、君は初めてその武器を持ったはずだろ? それなのに、どうしてそんなことができると思ったんだ? というか、大剣でそんなことができるとは、普通思わないと思うが……」


 東郷くんが気になったことを質問する。

 たしかに、彼の疑問はもっともである。

 先ほどまで日本の女子高校生をやっていたはずの吉田さんがどうして大剣を自在に扱うことができるのか、普通は疑問に思うだろう。

 日本にも剣を扱うことに近い剣道などはあるが、それは竹刀である。

 大剣とは似ても似つかないもののはずなので、たとえ吉田さんが剣道の経験者だったとしてもおかしいと思うはずである。


「なぜかできると思ったのよ」

「なぜか? 理屈ではない、と?」

「まあ、そういうことね。この【魔剣】を持ったら、できると思ったのよ」

「……」


 吉田さんの言葉に東郷くんは黙り込む。

 明らかにおかしいと思っているのだろう。

 普通、武器を持っただけでできるとは思わないだろうし……

 東郷くんが黙ると、宰相が再び話に入ってくる。


「おそらく、それは職業による補正でしょう」

「補正、ですか?」


 宰相の言葉に私は聞き返した。

 また、聞いたことのない話が出てきた。

 そんな私の反応に宰相は答えてくれた。


「いくら職業で適性があると言っても、素人がその武器を持っていきなり扱えると思えますか?」

「……思わないわ」


 宰相の言葉に私は首を横に振る。

 そんなこと、到底できるとは思えないからだ。

 しかし、宰相から返ってきたのは予想外の言葉であった。


「普通はそうでしょう。ですが、その職業の者は自分の適性武器の補正が起こるのですよ」

「つまり、最初から自在に扱える、と?」

「完全に、というわけではないですね。職業や才能によって、扱うことができるレベルも変わってきますが……」

「そんなことが……」


 宰相の説明に私は驚く。

 まさか異世界にそんな法則があるとは……

 日本──いや、地球では考えることのできないことだった。


「彼女はグラムを扱うことができるほど、高位の職業のようです。ならば、その補正はかなりのものだと思われます」

「どんな職業かわからないんですか?」


 宰相の言葉に私はそう質問する。

 そんな私の質問に宰相は首を横に振る。


「残念ながら、この国では彼女の職業を判明することはできないでしょう。人智を超えた職業であることらしいです」

「吉田さんはそういう職業だ、と?」

「ええ、そういうことです。とりあえず、我が国にある最高の技術を使ったとしても、できないことでしょう」

「……なるほど」


 とりあえず、吉田さんの職業は不明なままの様だ。

 落ち込む私に宰相は追加の情報をくれた。


「ですが、唯一判明する方法が……まあ、これは推測なのですが……」

「そんなものがあるんですか?」


 宰相の言葉に私は反応する。

 まさかそんな方法があるとは……

 可能性があるのであれば、それに期待したい。


「強力な【鑑定】を使うことができる者に見てもらえばいいのですよ」

「【鑑定】ですか?」

「はい。その名前の通り、物事の本質を見ることができる力です。あの【ステータスプレート】もその力を元に作られております」

「……オリジナルの力ならば、見ることができるというわけですね?」

「はい、そういうことです。しかし……」

「何か問題が?」


 宰相の顔が曇ったので、私は質問をする。

 一体、どうしたのだろうか?

 せっかく期待をしたのに……


「実は、すでにこの国の最も強力な【鑑定】ができる者に頼みました。ですが、それでも判明しませんでした」

「……つまり、この国ではわからない、ということですか?」

「そうなりますね」

「……他の国により強力な【鑑定】を使うことができる者は?」

「いるでしょうが、強力な【鑑定】を使うことができる者は国にとっても必要な人材──そう簡単に会うこと、ましてや【鑑定】してもらうことは難しいでしょうね」

「……なるほど」


 宰相の表情が曇った理由は分かった。

 方法はあるのかもしれないが、期待はできないというわけだ。

 ならば、結局吉田さんの職業はわからないままで……


「唯一、考えられる方法はあります」

「え?」


 だが、宰相は指を一本立てて再びそう言った。

 落ち込んでいた私は顔を上げた。







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