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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第七章 成長した転生貴族は冒険者になる 【学院編2】
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閑話10-26 女子高生は異世界召喚される


 いろいろと問題が起こったが、最終的には丸く収まったと思う。

 西園寺くんと東郷くんが【聖剣】を巡って争っていたときはどうなるかと思ったが、二人それぞれが【聖剣】を手に入れることができたので安心することができた。

 ここから私たちの異世界での生活がスタートする──と思ったのだが……


「委員長、僕たちのパーティーに加わってくれ」

「いや、俺たちと一緒に来るべきだろ」


 新たな問題が発生したのだ。

 その火種は、なぜか私だった。

 どうしてなのだろうか?

 いや、理由はわかり切っている。

 私の職業が【聖女】だからだろう。

 【聖女】は【聖属性】の魔法を使うことのできる職業であり、回復などを得意とする職業らしい。

 この異世界で戦うにあたって、当然傷を負うことになってくるだろう。

 それを回復することは必要なことであり、その回復を得意とする私を手に入れたいと二人は思っているのだろう。

 もちろん、【聖属性】以外にも回復することができる属性はあるらしいが、得意と言うだけあって【聖属性】が一番効果が高いらしい。

 手に入れるのなら、最も効果が高いものを欲しいと思うのが、人間の性というわけだ。


「君みたいな人間に委員長が付いていくとは思えないな。女性を無理矢理従わせそうな人間だし……」

「お坊ちゃんが俺の何を知っているんだ? 少なくとも、大した実力もないくせに優秀な人材を囲い込もうとするよりはマシだろ」

「……君こそ、僕の何を知っているんだい? 相手の力量もわからないくせに、よくそんなことが言えるね?」

「……弱い犬ほどよく吠える、とはよく言ったな。戦いにおいて、自分の実力を見極められないやつは真っ先に命を落とすんだぞ?」

「「……」」


 二人はお互いを罵倒し、睨みあっていた。

 せっかく問題が解決したと思ったのに、再び空気が悪くなった。

 まったく、どうしてくれるんだ。

 この二人が言い争っているせいで、クラスメートたちがどうするべきか困っているではないか。

 こんな時に先生に仲裁してもらいたいが、残念な事に先生は待機組の方を見てもらっている。

 待機組に安心して過ごしてもらうために、彼女にはそちらを見てもらっているわけだ。

 先生という立場上、そういうことは得意だろうから……

 生徒だけで未知の体験をさせることをどうかとも思っているようだったが、こちらに参加することになっても未知の体験をすることになるのは先生も一緒である。

 だったら、未知の体験を生徒たちと一緒にさせるよりは、待機組を指揮してもらった方がいいと私は考えた。

 そして、先生を説得したわけだ。

 しかし、まさかこんな序盤に先生に頼りたい場面が出てくるとは……


「勇者様方、落ち着いてください」


 言い争いをする二人に宰相がオロオロとしながら、仲裁をしようとする。

 しかし、二人が【聖剣】に選ばれた【勇者】であるせいか、あまり強く出られないようだ。

 いくら立場のある大人だからと言って、命令できるような立場ではないのかもしれない。

 宰相には頼ることは難しいのかもしれない。

 しかし、このまま何もやらないわけにはいかない。

 状況は刻一刻と悪くなっている。

 二人のせいで周囲の空気が悪くなっているし、お互いのリーダーが争っているせいでグループのメンバー同士も睨みあっている。

 このままでは取り返しのつかないことが起こってしまうかもしれない。

 その前にどうにか解決しないと……


「い、委員長はどちらと冒険したい?」

「え?」


 予想外のところから言葉が発せられた。

 私は──いや、その場にいた全員がその声の主に視線を向ける。

 声の主はクラスメートの女子だった。

 もちろん彼女のことを知っているが、仲良く話したりするような間柄でもない。

 そんな彼女がまさか私にこんなことを聞いてくるとは思わなかった。


「委員長を巡って争っているんだったら、委員長が決めたらいいんじゃないかしら?」

「ちょっと、それは……」


 彼女の言葉に私は慌てて止めようとする。

 たしかに、それは最も早く解決できる方法であろう。

 そのことについては私も理解している。

 だが、この方法を選ばなかったのには理由があるのだ。

 しかし……


「たしかにそれがいいかもね」

「ああ、そうだな」

「なっ!?」


 先ほどまで言い争いをしていたはずの二人がこの提案を受け入れた。

 私は驚いてしまう。

 先ほどまで言い争いをしていたはずなのに、どうしてこういうときだけ賛成するのだろうか。

 まあ、二人がこの提案に賛成した理由はわかる。

 自分達が選ばれると思っているからだ。

 私がどちらかを選ぶとすれば、必ず自分たちの方に来る──そう確信しているのだろう。

 自分達に自信があるからこそ、この提案を受け入れているわけだ。

 だからこそ、私はこの方法を選ぼうとはしなかったのだ。

 私がどちらかを選べば、必ずもう片方が文句を言ってくる。

 そうなれば、おそらく決定的な亀裂が生じてしまうはずだ。

 そうならないために、この提案をしなかったのに……







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