閑話10-24 女子高生は異世界召喚される
「一つ聞いておきたいことがあるんだけど……」
「何だい?」
「何だ?」
私の言葉に二人が反応をする。
二人とも自信があるせいか、早く選びたいと思っている雰囲気がありありだった。
気持ちはわからないでもないが、重要なことを聞かないといけない。
「二人は何か気になる感じはないかしら?」
「気になる感じ? どういうことかな?」
私の言葉に西園寺くんが首を傾げる。
質問の意味が分からなかったのだろう。
まあ、私も抽象的な説明をしてしまったので、仕方がないのかもしれない。
といっても、私もこれ以上の説明ができるわけではない。
だが、少しでもわかってもらうように伝えるしかない。
「この部屋の中に惹かれるような感覚とかあるかしら?」
「……よくわからないな」
「そしたら、その二本の【聖剣】のうち、どっちの方が良い?」
「……こっちかな?」
西園寺くんが右側の【聖剣】を指さした。
白を基調としたどちらかというと細身の剣だった。
といっても、分類上は大剣の様で、かなりの大きさではあるが……
「東郷くんは?」
「俺はこっちだな」
私が問いかけると、東郷くんは左側の【聖剣】を指さす。
黄金色を基調としており、右側よりも大きい大剣だった。
この質問をして良かった。
もしかしたら、両方が武器に選ばれていない可能性、片方に二本ともが集中している可能性、二人ともが同じ【聖剣】を選んだ可能性──などと問題になる可能性もあったのだ。
だが、それぞれが別々の【聖剣】を選んでくれたおかげで、それらの問題は亡くなったわけだ。
まあ、二人が納得してくれるかは別の話ではあるが……
「じゃあ、それぞれの惹かれた【聖剣】を手に取ってみて」
「え?」
私の言葉に西園寺くんが驚きの声を漏らす。
一体、どうしたのだろうか?
「どうしたの?」
「選ばれなかったら、代償を払うことになるんだろう?」
「まあ、そうね」
「だったら、そう簡単に手にすることは難しいと思うんだけど……」
西園寺くんの言葉に私は納得する。
たしかに、私は代償の話はした。
しかし、それはあくまでも選ばれなかった武器や防具に無理矢理触れようとした場合である。
「それなら、大丈夫だと思うわ」
「どうしてそんなことが?」
私の言葉に西園寺くんが聞き返してくる。
何の理由もなしに言っていると思っているのかもしれない。
たしかに、この状況での私の言葉に信用できる点はあまりないだろう。
だが、私は大丈夫だと思っている。
「二人が【聖剣】を使うことができる職業であり、それぞれ別々の【聖剣】を選んだからよ」
「それだけ?」
「ええ、それだけね。これが同じ【聖剣】を選んでたり、一人で二本を選んでいたら、話は別だけど……」
「む……」
私の言葉に西園寺くんが考え込む。
私の話を信じるか悩んでいるのだろう。
まあ、彼が悩むのも仕方がない事である。
しかし、西園寺くんはこれ以上悩むことはできなくなった。
「はっ、流石はお坊ちゃんだ。度胸が足りないな」
「なに?」
悩む西園寺くんに対し、東郷くんが馬鹿にしたように告げた。
そんな東郷くんの言葉に西園寺くんは負けじと睨みつけた。
「委員長の言っていることが正しいかどうかはわからないが、間違ったことを言っているようには思えない。だったら、言ったとおりに【聖剣】を手に取るべきだろう」
「……それで代償を支払うことになってもか?」
「そんなもの怖くはないさ」
「は?」
東郷くんの言葉に西園寺くんが驚きの声を漏らす。
信じられないと思っているのだろう。
もしかしたら、取り返しのない怪我を負う可能性があるのだ。
いや、命を落とす可能性もあるぐらいだ。
それなのに、どうして恐怖を感じないのだろうか、と。
驚く西園寺くんに東郷くんがはっきりと宣言した。
「選ばれなかったら、それまでだ。まあ、俺は選ばれると思っているがな」
「……」
「むしろ、この程度のことで怖がっているような奴が【聖剣】に選ばれるとは思わないがな。これは二本とも俺が選ばれている可能性が高いか?」
「なんだとっ!」
東郷くんの言葉に西園寺くんが怒りだす。
片方だけならまだしも、二本とも奪われる可能性が出てきたからだろう。
流石にそれはまずいと思ったのだろう。
西園寺くんは意を決して、宣言した。
「君に【聖剣】を二本とも渡すわけにはいかない。やってやろうじゃないか」
「怖いんだったら、やらなくてもいいと思うぜ?」
「ふん。いまさらそんなことを言っても無駄だ」
東郷くんの挑発を西園寺くんは受け流す。
どうやら覚悟はできたようだ。
西園寺くんは自分の選んだ【聖剣】の方へ足を進めた。
続いて、東郷くんも自分の【聖剣】の前に立った。
そして、二人は同時に【聖剣】の柄を掴み……
「「っ!?」」
その瞬間、二人が驚いたような反応をした。
だが、それから特に何かが起こる様子もなかった。
二人も、周囲も黙り込んでしまう。
「これは選ばれた、ってことでいいのかしら?」
そんな中、私はそう告げた。
そうとしか、言いようがなかったのだ。
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