閑話10-23 女子高生は異世界召喚される
「お坊ちゃんは城でのんびりと過ごしている方が合っているんじゃないのか? 少なくとも、実戦経験もないような甘ちゃんが戦いなんてできないと思うが?」
「君みたいな人間が戦場に出ることの方が問題だろう? 秩序を守ろうとしない人間がいるだけで味方に悪影響が出るだろう」
二人はそれぞれ【聖剣】とは関係のない部分で相手を批判する。
嫌いな相手だからこそ、次々と非難する内容が出てくるわけだ。
しかし、本気でまずい。
このままでは、どちらが勝ったとしても遺恨が残ってしまう。
というか、片方に集中するのはまずいはずだ。
この状況を解決するためには……
「じゃあ、それぞれの主は【聖剣】自身に決めてもらいましょう」
「「は?」」
私の言葉に言い争いをしていた二人は呆けた表情を浮かべる。
周囲にいたクラスメートたちも同様である。
頭がおかしくなったのか、と思われているのかもしれない。
とりあえず、かわいそうな子を見るような目を向けられていた。
少し傷ついた。
そんな私に西園寺くんが話しかけてくる。
「それはどういうことだい、委員長? まるで武器に意思があるような言い方だけど……」
「強力な武器には意思のようなものがあるらしいわ。だからこそ、その武器に認められなければ、所有者と認められないことがあるのよ」
「本当に?」
「ええ、もちろん。宰相さんに説明してもらって、実際に目の当たりにしたから」
「……なら、本当の話かな」
私の説明に西園寺くんが納得する。
きちんと説明をすれば、受け入れることはしてくれる。
これは非常にありがたい。
それを東郷くん相手にもできれば……いや、難しいだろうな。
根本的に考え方も違うだろうし、徹底的に性格が合わないようだ。
こんな二人が協力するなんてことはない気がする。
そんなことを考えていると、東郷くんが話しかけてくる。
「所有者として認められなかったら、どうなるんだ?」
「それはわからないわ。でも、その状態で武器に触れようとしたら、手酷い反撃を受けることになるわね」
「手酷い反撃?」
「武器によるかもしれないけど、宰相は酷い火傷を負っていたわ」
「「っ!?」」
私の言葉に質問をした東郷くんだけでなく、西園寺くんも驚いた。
先ほどの自分がどれほどまずいことをしていたのか、理解したのだろう。
もし、自分が武器の所有者として認められていない状況で触れていたとしたら、その反撃を食らっていたわけだから……
【職業】はあくまでも【職業】──武器から拒否をされる可能性もあるのだ。
「どうする? 怖いんだったら、やめた方がいいと思うけど?」
二人の反応に私はそう問いかける。
別に戦うことは義務ではない。
自分に合った武器がないのであれば、今からでも待機組になっても問題はないのだ。
ましてや、二人が狙っているのは【聖剣】という最強クラスの武器だ。
万が一、所有者として認められなかったら、命の危険もあるかもしれないのだ。
そう考えたら、引いても良いと思うのだけど……
「いや、選んでもらおう」
「え?」
西園寺くんから返ってきたのは、そんな返事だった。
思わず私は呆けた声を出してしまう。
「何をそんなに驚いているんだ? 委員長から出した提案だろう?」
「そうなんだけど……怖いでしょ?」
「まあ、確かに怖いね。でも、僕は確信しているのさ」
「確信?」
西園寺くんの言葉に首を傾げる。
一体、何を言っているのだろうか?
そんな疑問を持つ私に西園寺くんは宣言する。
「あんな不良なんかより、僕の方が【聖剣】にふさわしい、ってね」
「あぁ……」
西園寺くんの言葉に私は呆れた声を漏らしてしまう。
なんてことはない、ただの自意識過剰なだけだった。
「僕は人より正義感が強いし、【聖剣使い】でもある。なら、選ばれて当然だろう?」
「……そうかもね」
「僕が選ばれない可能性もあるけど、その場合はあの不良が選ばれるわけがないさ」
「……」
西園寺くんの言葉に私は返事をするのか悩む。
彼の言っていることはわからないでもないが、それが正しいかどうかは判断できない。
これはあくまでも彼の考えであり、事実というわけではないのだ。
もしかすると、西園寺くんが選ばれず、東郷くんが選ばれる可能性もあるわけだ。
「ふん……世間知らずのお坊ちゃんは考えが甘い事で……」
そんな西園寺くんの言葉に東郷くんが馬鹿にしたように嘲笑する。
そんな東郷くんを西園寺くんは睨みつける。
「はぁ……」
そんな二人の様子に私はため息をついた。
この二人が【聖剣】に選ばれるような人間には思えないからだ。
さて、どうなることやら……
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