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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第七章 成長した転生貴族は冒険者になる 【学院編2】
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閑話10-21 女子高生は異世界召喚される


「聖女様が惹かれたというのは、おそらく【聖剣】でしょう」

「それは本当ですか?」


 宰相の言葉に私は思わず聞き返す。

 【聖剣】──その言葉だけで、ものすごい武器であることが理解できる。

 ファンタジーな話でもよく出てくる名前であり、そんな大物を私が使いこなすことができるのだろうか?

 いや、無理だろう。


「はい。【聖属性】を有した武器はこの世では剣しか確認されておらず、そこから【聖剣】と呼ばれております。もちろん、この国にあります」

「なるほど……ですが、それが二本あったのですが……」

「まさか、二本ともに惹かれたのですか?」

「まあ、そうですね」


 宰相が驚愕しているが、私は肯定する。 

 私は壁に掛けられている二本の大剣を見て、引き込まれるような感覚になったのだ。

 これは「惹かれている」と表現しても良いだろう。

 だからこそ、私はその武器を持とうとした。

 しかし、持つことはできなかった。

 残念ながら、私の筋力は大剣を持つほど発達はしていなかったのだ。


「ですが、持ち上げることすらできませんでした。おそらく、その武器は私に合った武器ではないのでしょう」

「なるほど……おそらく聖女様は【聖剣】の持つ【聖属性】の魔力に惹かれたのでしょう。だからこそ、「合ったのかもしれない」と錯覚したのかもしれません」

「なるほど……そういうことですか」


 宰相の言葉に私は納得する。

 まさか、そんなことがあるとは思わなかった。

 せっかく自分に合った武器を見つけることができたのに、まさか使うができないものとは……


「ですが、これは良い情報ですな」

「良い情報、ですか?」

「はい。おそらく聖女様は【聖属性】の武器しか装備できないのでしょう。つまり、【聖属性】の武器を集め、そこから見つければいいわけです」


 疑問に思う私に宰相は説明をする。

 たしかに彼の言っていることは合っているのかもしれない。

 そして、彼の手法も最も効率的な方法なのだろう。


 しかし──


「なるほど……ですが、そう簡単に見つかりますか? 【聖属性】って、かなり珍しいんですよね?」

「む……」


 私の言葉に宰相は言葉を詰まらせる。

 どうやら図星の様だ。

 たしかに手法としては正しいのかもしれないが、如何せん見つけることができる数が少なすぎる。

 そもそもそのような武器が存在するかすらわからない。

 現に古今東西ありとあらゆる武器がほとんど揃っていると言われているこの場ですら、二本の【聖剣】しかないのだから……


「まあ、私の武器は「必要ない」と考えましょう。「見つかったら、良し」とも言いますかね?」

「それでいいのでしょうか?」

「仕方がないでしょう? ないものねだりはできませんし、そのためだけに可能性の低いことをするのも時間の無駄でしょうし……」

「まあ、そうでしょうが……」


 私の言葉に宰相は残念そうな表情を浮かべる。

 【聖女】である私の役に立てないことが、悔しいのかもしれない。

 まあ、彼の立場なら仕方のない気持ちかもしれない。

 流石に宰相をそんな気持ちのままにさせるのは忍びないので、ある提案をしてみる。


「この国に一級品のローブを製作してくれる職人はいますか?」

「はい? もちろん、いますが……」

「ならば、その職人さんに注文をしてくれませんか? 【聖女】にふさわしいローブを製作するように、と。おそらく人前に出ることもあるでしょうから、最低限それらしい格好をしないといけないでしょう?」

「なるほど……でしたら、この国で一番の職人に頼むとしましょう」


 私の言葉に宰相は再び元気になった。

 私に頼られたことがそれほど嬉しかったのかもしれない。

 とりあえず、彼が元気になってよかった。

 だが、もう少し伝えておかないといけないことがある。


「あと、【聖女】らしくないローブもお願いできますか?」

「らしくない、ですか?」


 私の言葉に宰相は首を傾げる。

 なぜ、このような注文をされたのかわからないのだろう。

 明らかに矛盾しているような注文をしているのだから。

 しかし、別に矛盾はしていない。

 これは必要になってくるものなのだ。


「人前に出るときには【聖女】らしい格好が求められるでしょうが、普段からそのような格好をし続けるわけにはいかないでしょう? そういう格好であることがバレれば、その周りに人が集まってくるでしょうし」

「なるほど……普段は人にばれないような格好をしたいわけですね。ですが、意味がありますかな?」

「どういうことですか?」

「たしかに【聖女】であることを示すローブとそうじゃないローブを揃えるのはいいでしょうが、すべての人間がローブだけで貴女を判断するわけではないでしょう? おそらく、顔も見られてしまうでしょうし」

「まあ、あくまでも「ないよりはまし」程度の措置ですよ。バレたらバレたで、その時に対処をすればいいですし」

「聖女様がそういうのであれば、そのようにしましょう」

「では、よろしくお願いします」


 とりあえず、私だけ武器や防具がないという状態を避けることができた。

 まあ、専用武器ではないけど……

 しかし、ちょっと悲しいかな。

 せっかく自分用の武器や防具が手に入ると思ったのに……

 まあ、これは仕方がないのかもしれないかな。

 そんな風に諦めたような気持になっていると……


「「──っ!」」


「ん?」


 少し離れたところから、言い争うような声が聞こえてきた。

 一体、どうしたのだろうか?







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