閑話10-20 女子高生は異世界召喚される
「う~ん……見つからないなぁ」
あれからどれだけ時間が経っただろうか?
この世界には時計がないので、正確な時間はわからない。
だが、広い部屋の半分以上を探しているはずなので、それなりの時間は経っているはずだ。
しかし、それだけ探しても、私に合う武器や防具を見つけることができなかった。
「もしかしたら、ここにはない可能性もあるんじゃない?」
「そうなのかな?」
一緒に探していた吉田さんの言葉に私は首を傾げる。
たしかに彼女の言っていることもおかしくはない。
ここにありとあらゆるものが揃っていたとしても、それがすべてというわけではない。
もしかすると、この世界のどこかに私たちに合ったものが存在している可能性もあるのだ。
「じゃあ、それまでは仮の武器とかを持った方が良いのかな?」
「まあ、そうするべきなのかもしれないけど……そもそも宮本さんに必要なの?」
「どういうこと?」
吉田さんの言葉に私は思わず聞き返してしまう。
彼女は一体、何が言いたいのだろうか?
「だって、さっきの魔法──杖とかを使わずに使っていたじゃない」
「……たしかに」
吉田さんの言葉に私は思い出した。
そういえば、私は杖を使わずに魔法を使うことができていた。
そうすると、杖の必要性はそこまでない気がする。
「この世界の魔法の使い方とかは知らないけど、杖もなしにあんなことができるんだったら、そもそも宮本さんに合う武器がないんじゃないの?」
「う~ん……その可能性も否定できないけど……」
「何かおかしなことでもある?」
悩む私を見て、吉田さんが質問をしてくる。
彼女の言っていることは別におかしくはない。
この状況からそう言う結論を導くのは当然と言っていいだろう。
しかし、私はその結論を出すのは、まだ早いと思っているのだ。
「【聖女】って、その魔法の凄さや素晴らしい人格も必要だけど、見た目とかも大事だと思うのよ。制服を着た女子高生の【聖女】ってどう思う?」
「……威厳は感じないかな?」
「でしょ? 杖はともかく、最低限ローブのようなものは欲しいかしら。魔法については杖なしで使うことができるみたいだから、見た目だけでも【聖女】らしくしないと……」
「でも、ここにはないんでしょ?」
「そうなのよね……」
必要そうなものはわかっているのだが、それが存在しないために困っているわけだ。
まさかこんなことになるとは思わなかった。
クラスメートのほとんどがすでに自分に合った武器を見つけているようだ。
自分達がこんなことになるとは思わなかった。
この話の言い出しっぺなのに……
「聖女様、どうかなされましたか?」
そんな話をしていると、宰相が話しかけてきた。
クラスメートたちの方がほとんど終わったということで、私に話しかけてきたのだろう。
「自分に合ったものが見つからなくて……」
「見つからない、ですか? ここにはありとあらゆる逸品が揃っていると思うのですが……」
「ないものもあるでしょう? もしかしたら、それが私に合ったものの可能性もありますし……」
「むぅ……確かにその可能性もありますが、考えづらいですな」
「どういうことですか?」
大臣の言葉に私は質問する。
彼は一体、何を言いたいのだろうか?
「ここには聖女様に完全に合った武器や防具がないのでしょうが、それでも聖女様にあった種類の武器や防具は絶対にあるはずなのです」
「種類、ですか?」
「はい。完全に合ったものほどではないかもしれませんが、それでも同じ種類の武器や防具であれば、普通に使いこなすことができるはずなのです。陛下も自分に完全に合った大剣以外に複数の大剣を持っておられます」
「なるほど」
宰相の説明に私は納得する。
たしかに、そう考えるとおかしいのかもしれない。
完全に合ったものがなかったとしても、種類的に問題がないものがあるはずなのだ。
しかし、私はそれすら見つけることができていない。
これは一体、どういうことだろうか?
「聖女様は魔法を使うことになるでしょうから、杖のようなものを使うことになるはずですが……」
「残念ながら、どれも合いませんでしたね」
「では、ローブは?」
「それもです」
「むむ……」
私の言葉に宰相は悩んでしまう。
ここまで困らせてしまうとは……しかし、嘘をつくのもよくない。
だが、少しは安心させないといけないか。
打開策になるかはわからないが、この情報は伝えるべきかもしれない。
「ですが、まったくの収穫がなかったわけじゃないですよ」
「本当ですか?」
私の言葉に宰相の目が輝く。
そこからこの問題を解決できると期待しているのだろう。
しかし、解決できるだろうか?
「一応、私が惹かれる武器を見つけることはできました」
「では、その武器を使えば……」
「ですが、私はそれを扱うことはできないでしょう」
「どういうことですか?」
私の言葉に宰相が首を傾げる。
言っている意味が理解できないのだろう。
たしかに、矛盾しているように聞こえるからね。
惹かれているはずなのに扱うことができない──そんなことがあるのか、と。
だが、実際にそんなことがあったのだ。
「それは【聖属性】の魔力を持った大剣でした」
「【聖属性】──まさか、【聖剣】ですか?」
私の言葉を聞いた宰相が驚愕の表情を浮かべた。
おそらく、彼の言っていることは正しいのだろう。
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