閑話10-19 女子高生は異世界召喚される
「吉田さん、さっきはありがとう」
「別に構わないわ。友達が困っているんだから、助けるのは当たり前でしょ?」
「と、友達……」
彼女の言葉に私は何とも言えない反応になってしまう。
当たり前の言葉のはずなのに、私はそれをあっさりと受け入れることはできない。
これは私の過去のトラウマが原因なのだろうか?
「私たち、友達じゃないの?」
そんな私の反応に吉田さんが心配げな表情を浮かべる。
クールな雰囲気が心配げな表情を浮かべると、そのギャップがかなりの可愛さを引き出している。
正直、イケナイ趣味に目覚めそうなほどに……
いや、友達と言ってくれた相手にそんなことを考えるのは駄目だ。
「もちろん、友達よ。ちょっと、そんなことを言われたことがなかったから、驚いてしまっただけで……」
「そう、よかったわ」
私の言葉に吉田さんは安心したように息を吐く。
どうやら、彼女を不安にさせてしまったようだ。
これは反省である。
彼女は私と同じ──いや、私以上のトラウマを持っている。
そんな彼女に不安を与えるのは、あまりやってはいけないことだと思う。
今後は注意していかないと……
とりあえず、話題を変えよう。
「そういえば、吉田さんは自分に合った武器を見つけた?」
「残念ながら、まだね。何の手掛かりもないと、簡単に見つからないわ」
私の質問に吉田さんは首を横に振った。
彼女の答えには理由があった。
彼女の【ステータスプレート】の職業の欄にはこう書かれていた。
・職業:【???】
と。
明らかにおかしい。
これは誰も読むことができなかった。
言葉にできない、ということだったのだろうか?
皇帝に聞くと、今まではこんなことがなかったらしい。
そして、吉田さんには何らかの職業が当てられていることは間違いないらしい。
なぜなら、職業がないものには【なし】と表記されるらしいので……
しかし、此処で一つ問題が出てくる。
基本的に私たちは自分の職業に見合った武器や防具を選ぼうとしている。
だが、職業が分からない彼女にはその方法が使えない。
だから、彼女は一からすべて見ないといけないわけだ。
それは人一倍面倒な事だろう。
「まあ、私も見つけていないんだけどね」
「といっても、大体の方向性はわかるでしょ? 【聖女】様だったら、杖みたいな武器かローブのような防具でしょ?」
「ちょっと、吉田さんまで職業で呼ぶのはやめてよ。結構恥ずかしいんだから……」
「まあ、一介の女子高生が呼ばれるような職業じゃないわよね? 普通の感性だったら、かなり恥ずかしいだろうし……」
「勇者の方は全員にあるから問題はないけど、【聖女】は私だけだからなぁ……」
「心中お察しするわ」
私の困った反応に何とも言えない表情で返してくる吉田さん。
たしかに、こんなことを言われても困ってしまうか。
これは私がどうにかしないといけない問題だし、それを吉田さんに聞くのはおかしいかもしれない。
とりあえず、話を変えよう。
「今は自分に合った武器を探すことにするわ。そうすれば、気もまぎれるだろうし……」
「そうするべきね。私もついていくわ」
「え? 吉田さんも?」
「もしかしたら、私の職業も魔法使い系かもしれないしね? だったら、同じようなところに合う武器があるかもしれないわ」
「たしかにそうね。じゃあ、行きましょう」
そんな会話をしながら、私たちは目的の場所を探し始めた。
さて、どこにあるかな?
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