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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第七章 成長した転生貴族は冒険者になる 【学院編2】
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閑話10-16 女子高生は異世界召喚される


「では、ここから各々の武器や防具を選んでください。ここには帝国の歴代皇帝たちが集めた素晴らしい逸品が収められています」


 私たちを謁見の間に連れて行った男性がそう告げた。

 彼は宰相──権力的には王族の次にあるらしい。

 今回の勇者召喚も彼の主導で行われているらしい。

 数百年前の技術を再現したわけだから、意外と優秀な人かもしれない。

 そんな人がどこに連れてきたのかというと、城の中にある宝物庫らしい。


「いろんなものがあるんですね」

「ええ、もちろん。帝国の長い歴史の間に集めたものですから、古今東西のほとんどのものが揃っていると自負しています」

「そんなに、ですか」


 自信満々な宰相の言葉に私は驚いた。

 おそらく、彼が言っていることはあながち嘘ではないのだろう。

 すべてを集めていると言えばウソにはなるが、ほとんどの物だと言えばウソにはならない。

 そして、その言葉通りの光景が目の前に広がっている。


「私はこれかしら?」

「はやっ!?」


 私が宰相と話している間に仁川さんが近くにあるものを手に取った。

 彼女が手に取ったのは一本の古い木製の棒──いわゆる杖と言う奴だろう。

 某世界的有名な魔法使いの物語に出てくる枝のような杖ではなく、上の部分が丸まった形をしている少し大きめの杖である。

 どちらかというと、

 いくらなんでも、決めるのが早すぎるのではないだろうか?

 ここにあるものはおそらく一級品が多いだろう。

 だが、だからといって、なんでもいいというわけではないはずだ。

 自分に合った武器や防具を選ぶべきだと思うのだが……


「色々見て回るのは得意じゃないの」

「いや、それでも一回ぐらいは全部を見た方がいいんじゃないの?」


 私は心配になり、そう告げた。

 しかし、仁川さんは私のそんな言葉に首を振る。


「なんとなく、この杖が気に入ったのよ」

「気に入った? 仁川さんが気に入るようには思えないけど……」


 彼女の言葉に私は首を傾げた。

 別に彼女の趣味嗜好を知っているわけではない。

 だが、彼女の持っている杖は到底女子高生が好むような見た目をしていないのだ。

 なんというか、渋い。

 仁川さんがそのような嗜好を持っているとは思えないのだけれど……


「おそらく、武器に選ばれたのでしょうな」

「はい? どういうことですか?」


 そんな私たちの会話に宰相が入ってきた。

 そういえば、先ほどまでこの人と話していたんだったな。

 しかし、彼は何を言っているのだろうか?


「強力な武器の中には、自らの意思で所有者を決める者があります。生半可な実力の持ち主に使われるのが気に入らないから、とも言われております」

「……まるで武器に意思があるような言い草ですね?」

「まあ、ここに来たばかりでは信じられないでしょう。ですが、実際にそのような現象が起こっているのも事実なのですよ?」

「へぇ……」


 宰相の説明に私はどういえばいいのかわからなかった。

 彼が嘘をついているとは思えない。

 しかし、今まで日本に住んできた身からすれば、到底信じられるような現象ではないからだ。

 そんな私の反応に宰相は苦笑いを浮かべた。


「どうやら信じられないようですね」

「あっ!? すみません」

「いえいえ、構いませんよ。私だって、貴女方の世界の常識を聞かせられれば、同じような反応をしているでしょうから」

「そう言っていただけると、ありがたいです」


 宰相が大人でよかった。

 短気な人間であれば、かなり文句を言われていただろうし……

 そんな宰相が仁川さんの方に振り向き、話しかけた。


「一度、その杖を貸していただけますか?」

「え? 別に良いけど……」


 宰相の提案に仁川さんはあっさりと渡そうとする。

 まったく疑う様子もない。

 彼女らしいと言えばそれまでなのだが、もう少しは人を疑った方がいいと思う。

 もしかしたら、彼女を騙そうとしているかもしれないのだから……

 まあ、この状況で宰相が仁川さんを騙すメリットなんてないだろうから、気にする方がおかしいのかな?

 私がそんなことを考えている間に仁川さんの手から宰相の手に杖が渡り……


(バチッ)

「むっ!?」

「きゃっ!?」

「っ!?」


 宰相の手が杖に触れた瞬間、静電気のようなものが発生した。

 それにより、宰相は痛みをこらえるような声を漏らした。

 仁川さんは短い悲鳴を口にしていた。


(コロコロ……カッ)

「っ!?」


 二人の手から離れた杖は転がったかと思うと、仁川さんの足元で止まった。

 その光景に私は再び驚かされた。

 これは偶然か?







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