閑話10-13 女子高生は異世界召喚される
「どうしてだ? 戦争に参加したくない者たちの待遇は良い方が良いだろう?」
皇帝が驚きながらも質問をしてくる。
無理矢理召喚したからこそ、しっかりともてなしをしたいと思っているのかもしれない。
彼の立場からすれば、その考えは間違いではないだろう。
しかし、私はそれが良くないと思っている。
「過ぎたるは猶及ばざるが如し──行き過ぎたことは逆に良くないんですよ。これは戦いに参加しない人たちのためでもあります」
「なに? どういうことだ?」
私の言葉に皇帝が質問をしてくる。
何を言っているのか、理解できないのだろう。
これは彼が皇帝と言う立場の人間だからであろう。
常に好待遇で受け入れられるので、それが当たり前となっているわけだ。
皇帝と言う立場なら、それは当然のことだろう。
しかし、それは私たちのような平民にとっては毒になりかねないのだ。
「私たちは召喚される前は一般人──この世界で言うところの平民と言ったところですかね?」
「そうなのか? だが、ヒジリたちは学生──つまり、一定以上の家庭に生まれているのでは?」
「この世界では学校に通うのは貴族ばかり、平民で通うのは珍しいということですね?」
「ああ、そうだ」
「まあ、国どころか世界が違うので、常識が違うのは当然でしょう。私たちがいた国は基本的に子供たち全員に教育を受けさせるのが当たり前になのですよ」
「ほう……それは気前のいいことだな」
「子供は宝──将来のために必要な存在ですからね。そのために必要な投資なわけです」
「なるほどな」
私の説明に皇帝は納得する。
世界は違えども、子供が大事であることは共通だろう。
だからこそ、納得してくれたわけだ。
といっても、これは本題ではないわけだが……
「とりあえず、私たちは基本的に平民のような存在なわけです。つまり、金持ちが普段受けているような好待遇をされ続けるのは恐縮する結果となるわけです」
「……それはヒジリだけの考えでは?」
「否定はできません。ですが、考えてみてください」
「何をだ?」
皇帝は首を傾げる。
何を考えるべきなのか、わかっていないのだろう。
まあ、彼は人の上に立つ人間なのだ。
本来は私と同じような考えなど持っているはずがないのだ。
「他の仲間たちが戦争に参加しているのに、自分達だけが安全な場所で安穏と好待遇を受ける──どう思いますか?」
「……申し訳ない気持ちになるな」
「そういうことです。全員がそのようなことを思うかはわかりませんが、確実に一部はそのようなことを思うでしょう。そう言う人の精神衛生のために、何らかの仕事、もしくは学業を与えてほしいわけです」
「なるほど……よく考えているな」
私の説明に皇帝が感心したように呟いた。
ちなみに、これは戦争に参加したくない人たちのためだけではない。
むしろ、参加をする人たちのためでもある。
自分達が戦争で戦っているのに安全な場所にいる、それだけで批判される材料となってしまうわけだ。
クラスの中でそのようなことになるのはまずい。
こんな全くわからない場所に召喚されたのだから、少しでもクラスメート同士で協力するようにしなくてはならないと思う。
だからこそ、この提案をしたわけだ。
「わかった、その提案を受け入れよう。だが、どの程度の待遇にすればいいのだ?」
「そうですね。この世界の生活基準はわかりませんが……とりあえず、城の外で生活している一般的な人並みの生活を基準に考えればいいと思います」
「それでいいのか?」
「あくまで基準ですよ? 私は帝国のことを知りませんから、実際に生活を送って調節をするべきだと思います」
「たしかにそうか」
流石に私だって、今の私の言葉が絶対に正しいとは思っていない。
実際にどのレベルの待遇にするかは、実際に生活してみないことにはわからない。
それはおいおい決めるべきことだ。
「とりあえず、全員の希望を聞くべきでしょうね。あと、全員の【ステータスプレート】も確認しておくべきでしょうね。それもどちらにするかを考える指標になるでしょうから」
「なるほど。では、そうしよう」
私の言葉に皇帝は頷いた。
こうして、話は進むことになった。
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