閑話10-11 女子高生は異世界召喚される
「私たちが強力な力を得た【勇者】であることは理解できました」
「では……」
「ですが、あくまでも力を得ただけの【一般人】です。そんな人間が知らない場所で戦争に参加するという要請を受けると思いますか?」
「む?」
私の言葉に皇帝が喜びから一転、難しい表情を浮かべる。
私の指摘にようやくそのことに思い至ったようだ。
戦いに参加したことのない一般人にとって、戦争に参加することなど恐怖以外の何者でもない。
しかも、見知らぬ人間の頼みならなおさら受け入れることは難しいだろう。
「私たちを元の世界に戻してくれませんか? この帝国のことは同情しますが、流石に私たちに同行できるとは思えません」
私は皇帝にそう問いかけた。
これは私の本心である。
勇者として召喚され、得た力を使いたいという気持ちはある。
だが、それだけを理由に戦争に参加したいとは思わない。
それに、私が参加すると決めてしまえば、他のクラスメートたちも必然的に参加させられるだろう。
私の一存でそんなことになるのは駄目である。
しかし、そんな私の気持ちを裏切るような言葉が皇帝から返ってきた。
「すまないが、それは難しい」
「はい?」
皇帝の言葉に私は呆けた声を出してしまう。
一体、この人は何を言ったんだ?
そんな私の反応を見て、皇帝は申し訳なさそうな表情で話を続ける。
「我々ができるのは、この世界に【勇者】と呼ばれる存在を召喚することだけだ。その存在を元の世界に送り返す方法はわからない」
「なっ!?」
皇帝の言葉に私は言葉を失ってしまう。
後ろにいたクラスメートたちからも同じような反応があった。
しかも、ざわざわとし始めた。
視線を向けると、誰かが倒れたようだ。
元の世界に帰れないという情報に驚きのあまり気絶してしまったのかもしれない。
私だって、気絶できるのならしたい。
だが、それでこの状況が変わるとは思えなかった。
委員長として、率先して状況を把握しないといけないと思っているのだ。
「そんな一方的な方法で私たちを呼んだのですか? 私たちにも元の世界での生活があるのですけど?」
「それについては本当に申し訳ないと思っている。だが、帝国も危機に瀕しているのだ。このような方法に頼らざるを得ないほど、な」
「だからといって、私たちのような子供に頼るのですか?」
申し訳ないという言葉に私は棘のある質問をする。
先ほどまではこの皇帝を器の大きい人だと思っていた。
しかし、この話を聞いてから、一気に評価が下がることになってしまった。
少なくとも、子供を戦争に参加させるような外道だと思うほどに……
「なに? 子供なのか?」
「子供ですよ。なんだと思っていたんですか?」
「だが、年齢は15なのだろう?」
「そうですが?」
「この世界では基本的に年齢が15を超えると大人として認められる。だったら、子供を戦争に参加させるとは……」
「ならないと思いますか?」
「ぐうっ!?」
言い訳をしようとする皇帝の言葉をバッサリと切る。
言い分はわからないでもないが、流石にそれは暴論だろう。
この世界で15歳の人間が大人として認められるのは、この世界での生き方や考え方、常識などからそういうようになっただけだ。
それを全く考えの違う異世界で育った私たちに当てはめるのはおかしい。
「ここにいる者たちは人を殺すことなどまったくしたことがない人間たちですよ? いくら力を得たからといって、そんな人間が戦争に参加できると思いますか?」
「むぅ、それは……」
「陛下が同じ立場であれば、戦争に参加すると言いますか? まったく縁のない見知らぬ世界で「戦ってくれ」と言われて」
「……」
私の言葉に皇帝が黙り込んでしまった。
かなりきつく言ってしまったかもしれない。
だが、私の言っていることはもっともなはずだ。
こんな状況に巻き込まれれば、ほとんどの人間が同じことを言うはずだ。
ここで戦争に参加することを容認するのは、状況を判断できない馬鹿か、人を殺すことを喜ぶような人間に違いない。
もしくは、気の弱い人間か……
ブックマーク・評価・レビュー等は作者のやる気につながるので、是非お願いします。
勝手にランキングの方もよろしくお願いします。




