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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第七章 成長した転生貴族は冒険者になる 【学院編2】
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閑話10-9 女子高生は異世界召喚される


「我が【カイザル帝国】と【リクール王国】はこの世界において、1,2を争う大国同士だ。【聖教国】を加えて、【三大大国】と呼ばれるぐらいだな」

「大国同士、仲が良いわけではないんですか?」

「ヒジリたちの世界では、大国同士で仲がいいモノなのか?」

「……そうではないですね」


 皇帝の指摘に私は自分の言葉を恥じた。

 たしかに、地球でも大国同士が仲が良い事はなかった。

 むしろ、かなり仲が悪いのではないだろうか?

 少なくとも、数十年前までは争いをしていたはずだし、それが終わった後もかなり仲が悪いようだった。

 それを知っているはずなのに、どうしてこんなことを聞いてしまったのだろうか……


「すみません」

「いや、構わんよ。本来は仲が良い事に越したことはないからな」


 私の謝罪をあっさりと受け取る皇帝。

 失言をあっさりと流す、これも上に立つ人間に必要な度量なのかもしれない。


「では、その三国は敵同士、と?」

「いや、我が帝国と【聖教国】は同盟を結んでいる。敵は【リクール王国】だけだ」

「三大大国のうち二国が揃っているんですよね? でしたら、その一国に十分勝てるのでは?」


 私は再び質問をする。

 これは単純な数の理論である。

 別にそれぞれの国が全く同じ力を持っているとは思っていない。

 しかし、同じ【三大大国】という枠組みに属しているのであれば、決して埋めることのできないほどの大きな差があるとは思えない。

 ならば、二つの国が揃っているのであれば、十分に勝つことができる見込みがあると思うが……


「純粋な国としての規模ならば、我々の方が上になるだろうな。だが、それだけで勝つことができるほど戦いとは簡単な話ではない」

「……まあ、そうですよね」

「我が国は過去の戦争で何度も【リクール王国】に苦汁をなめさせられてきた。かつてはこの世界で最も巨大な国と呼ばれていた我が帝国が、な。奴らが我が国を侵略してきたせいで、ここまで勢力も落ちてしまったわけだ」

「……それは辛いですね」


 皇帝の悔しそうな言葉に私はそう答えた。

 本当に悔しそうである。


「それもすべて、リクール王国にいる一騎当千の奴らが原因だ」

「一騎当千、ですか?」


 皇帝の言葉に私は思わず聞き返してしまった。

 この世界にもこの言葉があるのか、と思ったが、すぐにそれが勘違いであることに気が付く。

 おそらくそう言う意味の言葉があり、それを自動的に私の知る言葉に変換してくれたのだろう。

 だが、意味は同じだ。


「ああ。先の戦争で我が国の精鋭たちのほとんどを撃退したのが、バランタイン伯爵家とマスキュラ―伯爵家の当主たちだ」

「伯爵、ですか? 失礼ですが、伯爵って貴族ですよね?」

「ああ、そうだが? どうかしたか?」

「いえ……貴族が戦争に参加する、という概念が信じられなくて……」


 皇帝の言葉に私は思わず質問してしまった。

 基本的に、地球で今まで過去に起きてきた戦争は国が徴兵した男性が戦っていたはずだ。

 詳しくは知らないが、権力のある人間が戦争に参加したとは考えづらい。

 これは世界が違うから、だろうか?


「その二家は武闘派で有名な家だからな。戦争に参加しても、なんらおかしくはない」

「そうなんですか」

「それに、基本的に戦争に参加できるほどの実力を持つ者は貴族が多い。貴族のほとんどは魔力を持っているし、幼いころから近接戦闘の教育も受けているからな」

「……なるほど」


 皇帝の説明に私は少し考え、納得した。

 たしかに、そちらの方が戦力として良いのかもしれない。

 普段は一般市民として生活をしている人間を徴兵して戦力とするより、普段から訓練をしている人間に戦わせた方がより効率的だろう。

 まあ、これも貴族という存在がいるからこそ、できることだろう。

 地球で到底できるとは思えない。

 魔法なんてものも存在していないし……


「先の戦争とはいつ頃ですか?」

「約30年前だな」

「では、その二家の活躍した人は次の戦いに出ないのでは?」

「いや、おそらく出てくるだろう」

「なぜ?」


 皇帝の言葉に私は驚いてしまう。

 30年前に活躍した人間が再び現れるとは考えづらい。

 例えば、先の戦争に参加したのが10代だと考えても、現在は40代──すでに体も衰えているだろう。

 そんな人間を戦争に参加させるほど、【リクール王国】とやらは酷い国なのだろうか?


「言っただろう? 武闘派な貴族だと……戦争が起これば、率先して参加してくるような連中だ」

「……ですが、もう高齢なのでは?」

「おそらく50代だったはずだ」

「結構な高齢じゃないですか……この世界は老人に戦わせるんですか?」


 純粋に驚いてしまう。

 いや、日本でも50歳ならまだまだ働いているだろう。

 そう考えると、おかしな話でもないかもしれない。

 だが、ここは異世界だ。

 日本で50歳でも働いているのは、国民が長生きをしているからだ。

 もし平均寿命が50歳を切っているのであれば、50歳の人が減益として働くこともないだろう。

 この世界は日本ぐらい平均寿命が長いのだろうか?


「まあ、普通はあり得ないだろうな。だが、それでも戦おうとするのが、その二家なのだよ。敵国でなければ、スカウトしたいぐらいだ」

「……」


 私は何と言えばいいのかわからず、黙ってしまった。

 これは世界の違いによる価値観の違いと言う奴だろうか?

 なら、私がとやかく言えることではないのかもしれない。







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