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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第七章 成長した転生貴族は冒険者になる 【学院編2】
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閑話10-8 女子高生は異世界召喚される


「あの……この国は【勇者】を求めているんですよね? それなのに、どうして【聖女】という存在が現れたことを喜ぶんですか?」


 私は純粋な疑問を投げかける。

 【聖女】という存在はそれほどすごいモノなのだろうか?

 いや、ファンタジー系の話では【勇者】と同じぐらいメジャーであるとは理解している。

 だが、それでも求めていたものと違うのだから、ここまで喜ぶのもおかしいと思うのだが……


「きちんと【勇者】でもあるようだぞ?」

「まあ、【ステータスプレート】には書かれていましたけど……」


 皇帝の言葉に私は何とも言えない返事をする。

 たしかに、プレートには私が【勇者】であることは書かれていた。

 しかし、今はそれよりも【勇者】以外で喜んでいることについてである。

 疑問に思う私に皇帝は説明を始める。


「【聖女】とは【聖属性】の魔法を使うことのできる女性がなることのできる職業だ。かなり珍しい職業と言えるだろう」

「そうなんですか?」

「【聖属性】を持つ者が少ないからな……現在、確認されているだけでも二人だけだ」

「そんなに少ないんですか……」

「ああ。ちなみに、その二人は【聖女】ではない」

「はい? 【聖属性】の魔法を使えるんですよね? あっ、もしかして、女性じゃないとか?」


 皇帝の言葉に私はそんな仮定を口にする。

 皇帝は【聖属性】を有している人間が女性であると限定はしていなかった。

 男性ならば、【聖女】と名乗ることは不可能と思ったのだが……


「いや、どちらも女性だな」

「あれ? じゃあ、どうして【聖女】ではないんですか?」


 どうやら仮定は間違っていたようだ。

 しかし、それならおかしな話である。

 先ほどの肯定の反応から、この世界において【聖女】と呼ばれる職業は称賛されこそすれ、自分から避けるような者ではないと思うのだが……

 疑問に思う私に皇帝はため息をつきながら、説明をする。


「それは二人が所属する国が問題なのだよ」

「所属する国、ですか?」


 何ともおかしな話になってきた。

 どうして【聖女】とならないのに、国が関係してくるのだろうか?

 そういうのは個人の自由だと思うのだが……


「帝国が君たち勇者を召喚した理由にもつながるのだが、この世界には【魔王】と【獣王】と呼ばれる存在がいる」

「【魔王】と【獣王】ですか? もしかして、魔族とか獣人とか呼ばれる存在がいる、と?」

「ああ、そういうことだ。そういう種族を束ねる親玉のような存在だな」

「それが一体、どうしたんですか?」

「我が帝国にとって、そいつらは倒すべき敵なのだよ」

「敵、ですか?」


 不穏な話になってきた。

 【獣王】はともかく、【魔王】などファンタジー作品では敵側の親玉でよく出てくる名前である。

 まさに、ラスボスとして相応しい相手だとは思うが……

 私はふと気になることができた。


「もしかして、この国では人間以外の種族を基本的には認めていない、ということですか?」

「いや、そんなことはない」

「そうなんですか?」


 私の質問を否定する皇帝。

 てっきり、この国の根幹には人間以外の種族は認めないというものがあって、その考えから滅ぼそうとしていると思っていた。

 人種の違いでの争いは地球でも昔からあることだし、おかしな話ではないと思う。

 まあ、流石にそんな理由で呼び出されたのであれば、何かと理由をつけて逃げることを考えていたが……


「たしかに、人間が獣人や魔族より上の存在であるとは思っている。だが、だからといって、それだけの理由で滅ぼそうとするほど我々は狭量ではない」

「では、なぜ【魔王】と【獣王】を倒すべき、だと?」


 皇帝の話に矛盾を感じる。

 種族的に認めているのに、どうしてその親玉を倒そうとしているのだろうか?

 認めているのであれば、そんな発想になるとは思わないが……


「我々が認めているのは、あくまで【獣人】や【魔族】といった種族的な部分だ。もちろん、我々に従うならば、ではあるがな」

「その二人は従わない、と?」

「まあ、そういうことだ」

「考え方が全く違うのであれば、そういうこともあるのでは?」


 皇帝の言葉に私は思わず問いかける。

 国が違えば──いや、住んでいる地域が違うだけで、同じ国でも考え方の違いは出てくる。

 ならば、国どころか種族も違う相手に同じ考えを求めることの方がナンセンスではないだろうか?

 私はそう思い、質問したわけなのだが……


「それだけなら、我々もこんなことは言わないさ」

「他にも理由がある、と?」

「ああ、もちろんだ。奴らはあろうことか、我々にとっての憎き宿敵に与したのだ」

「宿敵、ですか?」


 どうやら新たな国が出てくるようだ。

 一体、何が出てくるのだろうか?


「【リクール王国】という国だ」

「【リクール王国】ですか?」


 まったく聞いたことのない名前である。

 まあ、未知の異世界に来たのだから、それは仕方のない事である。

 しかし、皇帝がここまで敵意を露わにするなんて、その【リクール王国】とやらは一体何をしたのだろうか?







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