閑話10-4 女子高生は異世界召喚される
皇帝が【勇者の証明】をすると言って数分後、謁見の間に大量の石が運ばれてきた。
といっても、河原に転がっているような形ではない。
すべて形が整えられた、板のような形をしていた。
あれは石板というものだろうか?
皇帝はその一つを取った。
「これだ」
「なんですか、それ?」
皇帝の言葉に私は思わず聞き返してしまった。
そんな私の反応に先生が少し慌てたような反応をする。
私の態度が良くないと思ったのかもしれない。
待っている間に彼女の気持ちも落ち着いたのか、目の前にいる相手が本物の皇帝であるとしっかり認識できるようになったようだ。
そして、それに合った対応をしないといけないと思ったようだ。
皇帝を相手に無礼を働けば、自分達の頭が胴体とお別れすることになりかねないからだ。
実際にそんなことをするかはわからない。
だが、何もわからないこんな状況では、そうなる可能性もあると考えても仕方がない。
だからこそ、私の無礼な態度はまずいと思ったのかもしれない。
「これは【ステータスプレート】と呼ばれる石板だ」
「【ステータスプレート】? その石板に私たちの能力が写し出されるんですか?」
「ほう……よくわかったな」
私の言葉に皇帝が驚いたような表情を浮かべる。
まさか正解を言い当てられるとは思っていなかったような表情だ。
そして、この反応からおそらく正解なんだろう。
「ええ。名前から推測しただけですよ」
「ヒジリたちにとって、これは知らない世界の未知の物体であろう? それなのに言い当てるとは、相当頭が良いのではないのか?」
「まあ、頭が悪いわけではないですが……」
皇帝から褒められ、私は何とも言えない気持ちになる。
頭が良い事を褒められることは嬉しいのだが、先ほどはここまで褒められるようなことなのだろうか?
その名称を聞けば、それぐらいはすぐに考え突くことだと思うが……
と、ここで私はあることに気が付いた。
あることを確かめるために、ポケットに入れていたあるものを取り出した。
「陛下」
「なんだ?」
「こちらを読めますか?」
「む?」
私は皇帝にあるものを差し出した。
それは文字を書いた紙である。
私がポケットから取り出したのは、メモ帳とボールペンである。
万が一の時のために常に持ち歩いているものだ。
まあ、まさかこんなことになるとは思っていなかったけど……
「文字であることはわかるのだが、残念ながら読むことはできないな。これは【ニホン】とやらの言葉か?」
「はい、その通りです」
「なんと書いてあるのだ?」
「【ステータスプレート】と書いています」
「ふむ」
私の言葉に皇帝は顎に手を当てる。
まったく見知らぬ文字が自分の言った言葉と同じであることに驚いているのかもしれない。
そんな彼に私は近づいた。
「陛下」
「今度はなんだ?」
「次は陛下が書いてください」
「書く? 何を?」
「もちろん、【ステータスプレート】という言葉です。このペンを使ってください」
「む? まあ、いいが……」
私はペンを渡し、皇帝に文字を書くように頼んだ。
頼みの意図がわからないが、それでも私の頼みを皇帝は受けてくれた。
サラサラと文字を書いていった。
「書けたぞ」
「見せていただけますか?」
「ほら」
皇帝から紙を受け取る。
私はそこに書かれてある内容を確認する。
私の書いた【ステータスプレート】という文字の下に見たことのない文字の羅列が書かれている。
別に私は外国語に精通しているわけではない。
日本語のほかにせいぜい高校入学レベルの英語しか話すことはできない。
当然、ここに書かれてある文字など、読めるはずがなかった、のだが……
「っ!?」
「どうした?」
突然の私の反応に皇帝が驚く。
まあ、いきなり体を震わせたのだから、驚くのは当然だろう。
しかし、驚いたのは私も同じである。
まさか、こんなことになるとは……いや、これで何が起こっているのか、理解することができた。
「陛下、わかりましたよ」
「何がだ?」
「どうして、私が皇帝の言葉をあっさりと理解できたか、がですよ」
「なに?」
私の言葉に皇帝が怪訝そうな声を漏らす。
まあ、こんな小娘の言葉をあっさりと受け入れることの方が難しいか。
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