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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第七章 成長した転生貴族は冒険者になる 【学院編2】
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閑話9-18 助けられた少女は高校生になった


「とりあえず、噂ではそういう方法で結果を残しているわけだ」

「それでよく周囲に認められたわね」


 高田くんの結論に私は思わずそんな言葉を口にする。

 たしかに、噂の通りであれば、結果を残すことはさほど難しくはないだろう。

 だからといって、周囲から認められるかは話が別である。

 少なくとも、身内にそんな人物がいれば、仲間として信用できる気がしない。

 しかし、そんな私の言葉に高田くんは真剣な表情で説明を続ける。


「怖かったんだろう」

「怖かった?」


 高田くんの言葉に首を傾げる。

 一体、どういうことだろうか?


「たしかに今まで説明した方法は不良としてはあまり──いや、まったくと言っていいほど褒められた行為ではないだろう」

「そうよね」

「だが、その矛先が自分に向けられるとしたら、どうだ?」

「え? ……それは怖いわね」


 高田くんから投げ変えられた質問に私は少し考えてから答えた。

 どれほど強い相手でも倒すことができる方法──それがいざ自分に向けられたと考えると、恐怖でしかないだろう。

 しかし、味方に向けることなどあるのだろうか?


「そう言う方法をとっている以上、自分も裏切られる可能性があることは自覚していたはずだ。だが、それでもそう言った話はほとんど聞かなかった」

「醜聞になるから、情報を流さなかったんじゃないの?」

「その可能性は否定できないな。だが、人の口には戸が立てられない──確定した情報じゃなくとも、噂ぐらいは聞こえてくるはずだろう」

「この話自体、高田くんが聞いた噂だけどね?」


 高田くんの言葉に私はそんな返しをする。

 今までの話はあくまでも高田くんが集めた噂話だ。

 信憑性がどれほどのものかはわからない。

 まあ、まったくの嘘とも思えないけど……


「それはそうだな。だが、今は置いといてくれ」

「わかったわ」

「とりあえず、周囲の人間が裏切らなかった理由は、その矛先──【蛇の牙】が間違っても自分に向かないように、という恐怖からだろう」

「【蛇の牙】?」


 知らない単語が出てきた。

 といっても、今までの情報から東郷くんのことだとはわかるけど……


「しつこいから【蛇】と呼ばれていたらしい。蛇の攻撃手段と言えば、【牙】だろう?」

「安直ね」

「まあ、学業をドロップアウトした人間が多い世界だから、安直になるのは仕方がないさ」

「それはそうかもね」


 高田くんの言い分は非常に納得できた。

 たしかに、ドロップアウトしたのであれば、知識も中途半端になるだろう。

 結果として、簡単で安直な表現が多くなるのも道理である。


「ちなみに、喧嘩をするときに躊躇なく刃物を使うことから、つけられたという噂もある」

「えっ!?」


 高田くんから告げられた衝撃の内容に私は思わず声を漏らしてしまう。

 その声が大きかったせいか、周囲の視線が集まる。

 私は「なんでもない」とばかりに、周囲に軽く頭を下げる。

 そのおかげか、周囲は再び自分たちのグループの会話に戻った。


「ちょっと、驚かさないでよ」

「いや、そこまで驚くとは思っていなかった」

「驚くのは当然でしょ? まさかクラスメートにそんな危険人物がいるとは思わないじゃない」


 私は思わず文句を言ってしまう。

 刃物を使う──これが事実であれば、明らかに危険だろう。

 喧嘩などで使えば、確実に無傷では済まない。

 いや、軽傷で済むはずもなく、おそらく大怪我──下手すれば、命を落とす危険だってあるだろう。

 それは周囲の人間から恐れられるわよ。


「あくまで噂の一つだ。といっても、これについては信憑性はあまり高くないだろうがな」

「そうなの?」

「もし、そんなものを使っていたなら、もっと大ごとになっているはずだろう? 噂だけじゃ済まないはずだ」

「たしかにそうだけど……」


 高田くんの言っていることは理解できる。

 だが、私は何とも釈然としなかった。

 今までの話を聞いた限り、その噂が全く信憑性がないとは思えないのだけど……

 まあ、事実であるならば、私とクラスメートになっていること自体おかしなことかもしれないわね。


「まあ、喧嘩で大怪我を負わせられた奴が「凶器でやられた」とか噂を流したのかもしれないな」

「それ、信じる人がいるの?」

「普通は信じないだろう。だが、相手が何でもやるような奴だったら、信じる人間もいるだろう?」

「……」


 私は否定できず、黙ってしまった。

 たしかに、高田くんから聞いた情報を総合すれば、その噂も信じてしまうかもしれない。

 まあ、普通の感性を持っているのなら、信じないのが当たり前ではあるけど……


「とりあえず、俺が集めた情報から「不良に関わるとしても、東郷だけには関わるな」という結論に辿り着いたわけだ」

「そうなるでしょうね」


 高田くんの言葉に私は頷く。

 たしかに、そういう結論になるだろう。

 私だって、同じ立場なら同じ結論に辿り着くはずだ。







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