閑話9-16 助けられた少女は高校生になった
すぐにこの閑話を終わらせるつもりが、いろんな情報を加えていくとどんどん長くなっていく……
今後の流れと関係ない情報を入れすぎたせいかな?
「その時に集めた情報で東郷のことを知ったわけだ」
「あ、そう言えば、そんな話だったね。とりあえず、どうして高田くんが不良の事情に詳しかったのかは理解できたわ」
私が心配していたことではなかったようだ。
といっても、喧嘩もしているようだから、全く問題がないわけではないが……
しかし、気になることがさらに出来た。
「情報を得たということは、東郷くんも高田くんを襲撃する可能性があったの?」
「いや、その可能性は限りなく低かっただろうな」
「じゃあ、どうして?」
高田くんは自分を襲撃する可能性のある不良の情報を集めていたはずだ。
それなのに、どうして襲撃の可能性が低い東郷くんの情報を得たのだろうか。
その理由がわからない。
「まあ、可能性は0じゃないからな」
「たしかにそうかもしれないけど……」
「何が起こるかわからない以上、対策をして損はないだろう?」
「むむ……」
高田くんの言いたいことは理解できる。
だが、完全に納得することはできない。
それだけの理由で東郷くんの情報を集める理由にはならないと思うのだけど……
そんなことを考えていると、再び吉田さんが会話に入ってくる。
「東郷くんは不良の世界では別格の存在だったんじゃないの?」
「え?」
「普通の不良を相手なら、事前の情報で回避をしたり、襲撃されても返り討ちすることはできるでしょ。でも、東郷くんの場合、そうもいかなかった、といったところかしら?」
「それって……」
吉田さんの説明で私はようやく理解できそうな気がした。
しかし、私が話をする前に、高田くんが話を始めた。
「その通りだよ。奴は他の不良とはわけが違うんだよ」
「それって、高田くんでも喧嘩に勝てないってこと?」
高田くんの言葉に私はそんなことを聞く。
10人の襲撃をあっさりと返り討ちにしたと言っていたから、高田くんは相当喧嘩が強いと思う。
そんな彼がここまで言うのなら、どれほど東郷くんは強いのだろうか?
私の印象では、そこまで強いとは思えないのだが……といっても、普通に喧嘩は強いのかもしれないけど……
「純粋な身体能力なら、俺の方が圧倒的上だろうな。だが、喧嘩はそれだけで勝てるほど甘くはないんだよ」
「そうなの?」
「ああ、そうだ。それに、東郷の恐ろしさは喧嘩の強さじゃないんだよ」
「え?」
「言っただろう? あいつは蛇のように狙った相手を離さない、って」
「そういえば、言っていたね」
たしかにそんなことを言っていた気がする。
それは、てっきり狙った女性をどんな手でも手に入れることだと思っていたのだが……
はっ!?
「もしかして……」
「おそらく、委員長が考えていることは違う気がするな」
私が驚いたような表情を浮かべながら話す前に、高田くんから否定された。
まだ口にも出していないのに……
「なんでわかったの?」
「なんとなく、そんな気がしただけだよ。中学時代の同級生にそういう趣味のやつがいたからな」
「それだけでわかるものなの?」
「委員長がそいつが勘違いした時と同じ表情をしていたからな。流石にわかるさ」
「その人にも勘違いされたんだね」
高田くんの言葉に私は納得する。
まさか、私と同じ勘違いをする人がいたとは思わなかった。
といっても、私自身はあまりそういう趣味はないのだけど……
「でも、よくそういう勘違いしたって、わかったね。私の時はともかく、その人は勘違いを口にでもしたの?」
純粋な疑問を投げかける。
そういう趣味の人は本人に向かって、そんなことを言うものだろうか?
もっと隠したりすると思うのだが……
そんな私の質問に高田くんはげっそりとした表情になった。
一体、どうしたのだろうか?
「俺だって、知りたくなかったさ」
「え?」
「元々、そういう趣味だってことは知っていたんだよ。まあ、趣味は人それぞれだから、俺も気にしないことにしていたよ。【あれ】を見るまでは……」
「【あれ】?」
一体、なんなのだろうか?
ものすごく気になるのだけど、聞くのがものすごく怖い。
高田くんがこんな表情を浮かべるのだから、相当やばいモノなのかもしれない。
彼にとってはかなりのトラウマなのかもしれない。
ここは聞かない方が良いのかもしれない。
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