閑話9-12 助けられた少女は高校生になった
「つまり、こんな美人四人と仲が良いだけでなく、弁当を作ってもらうことでさらに多くの嫉妬を買うということね?」
「まあ、そういうことだな」
与えられた情報から結論をまとめると、高田くんも頷いた。
どうやら正解のようだ。
しかし、理由がしょうもないなぁ……
「でも、それだったら高田くんも嫉妬されるんじゃないの?」
ふと私は疑問に思ったことを聞いた。
丸山くんが嫉妬されるのであれば、同じようによく話す高田くんだって嫉妬の対象になってもおかしくはない。
しかし、高田くんはどこか他人事のように振舞っている。
なぜだろうか?
「多少の嫉妬はされているだろうが、俺は脅威にもならないと思われているんだろうな」
「脅威にならない?」
ちょっと不穏な言葉が出てきた。
いや、否定されているから、不穏ではないのかもしれないが……
一体、どういうことだろうか?
「これでも俺は野球部の一年生にして、ベンチ入りのレギュラー候補だ。つまり、男としてのランクはかなり高いというわけだ」
「あぁ……嫉妬の気持ちはあるけど、そのレベルだったら仕方ない、と?」
「そういうことだな。まあ、優男なイケメンと比べたら、まだ嫉妬はある方かもしれないけどな」
「高田くんはイケメンって柄じゃないもんね?」
「はっきり言うなぁ、おい」
「自覚してるんでしょ?」
「否定はできないな」
私の言葉に高田くんはため息をつく。
高田くんのルックスを一言で表すなら、「熊」である。
高身長なうえに肩幅も広く、女子どころか男子相手でも一回り大きいぐらいだ。
顔は優男と言うよりは、どう猛な獣のような雰囲気を醸し出している。
整っていないとは言わないが、イケメンとは言えないだろう。
どちらかというと、丸山くんの方が女子に人気はありそうだ。
「とりあえず、もてる要素のある高田くんはともかく、それもない普通の丸山くんが私たちと仲良くしていることが嫉妬の原因なわけね」
「そういうことだ。その状況で手作り弁当なんか作られてみろ」
「……嫉妬がいじめや嫌がらせに?」
「その可能性もある、ってだけだがな。流石にそんなことがないと信じたいが……」
私の言葉に高田くんが苦笑する。
流石に高校生にもなって、そんな理由でいじめが起こると思わないのだろう。
だが、私としては否定はできない。
いじめが起こるのに、理由はないのだ。
いや、正確に言うと理由はあるかもしれないが、あくまでも一因なだけだ。
「とりあえず、棗が注意するのは二つのグループだな」
「二つ?」
高田くんが右手の人差し指と中指を立てる。
まさかそんな具体的な数字が出てくるとは思わなかった。
思わず驚きの声を漏らしてしまった。
「まずは、西園寺だな」
「ああ、西園寺くん?」
高田くんの言葉に私は視線だけを教室の窓際前の方に向ける。
そこには爽やかな雰囲気のイケメンを中心にグループができていた。
あれが件の西園寺くんである。
成績優秀、スポーツ万能でルックスも整っている。
さらに、実家が金持ちのようで、女子生徒の間でも人気が高いらしい。
まあ、私は好みではないので、興味はないが……
話したことも数えるほどしかないはずだ。
「奴は高校に入るまでほとんど負けることを経験せずに過ごしてきた。まあ、ほとんどのものが揃っているからな」
「そうなの?」
「といっても、高校入学してからは成績が吉田さんと委員長に負け、体力テストには総合で俺に負けているな」
「まあ、上には上がいるからね」
高田くんの言葉に私は納得する。
今まで、西園寺くんの周りにそういう存在がいなかっただけだ。
別におかしな話ではないだろう。
「残ったルックスもあまり意味をなしていなかった。女性のトップクラスである四人に見向きもされていないからな」
「そんなこと、気にしない方がいいと思うけど……」
高田くんの言葉に私は思わず呟いた。
別に西園寺くんのルックスが整っていることは周知の事実だ。
それはたとえ私たちが興味を持っていなくても、変わらないことだ。
たまたま私たちが興味がないだけで……
「まあ、負け知らずだったからこそ、それが許せないんだろうな」
「そういうものなのね」
高田くんの言葉に私はとりあえず納得することにした。
負け知らずの人間の気持ちなどわからないが、そういう考えをする人もいるのだろう。
だからといって、私が気にかける理由にはならないけど……
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