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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第七章 成長した転生貴族は冒険者になる 【学院編2】
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閑話9-9 助けられた少女は高校生になった


 須藤さんによる脅し(勘違い)事件から数日が経った。

 あれから私たちは一緒に行動するようになった。

 真面目な委員長と優秀ではあるが若干陰のある女子生徒、違うタイプのギャル二人の計四人が一緒に行動しだしたものだから、周囲からは怪訝そうな目で見られることがあった。

 現に、先生からは心配されてしまった。

 だが、私がしっかりと説明すると、納得してくれた。

 信頼というのは本当に大事である。


「え? これ、須藤さんが作ったの?」


 とある日の朝、私は思わずそんな声を漏らしてしまった。

 なぜ、こんな風に驚いているのかというと……


「そんな驚くことじゃないだろ?」

「いや、これは驚くわよ。全然、想像つかないし……」


 私が驚いたことが気に入らなかったのか、若干ふくれっ面になった須藤さんの言葉に吉田さんも驚いたような反応をした。

 やはり、彼女も同様に驚いているようだ。


「ふふん、すごいでしょ?」

 そんな私たちの反応を見て、仁川さんが自信満々に胸を張る。

 その動きで彼女の果実が大きく揺れる。

 教室にいた男子生徒のほとんどと一部の女子生徒の視線が集中する。

 だが、それを気にした様子もなく、仁川さんは話を続けた。


「灯はね、料理がとっても上手なのよ。正直、いつお嫁に行っても良いぐらい──いや、私が嫁に貰いたいぐらいね」

「何言ってるのよ、杏。というか、なんで杏が自慢げなのよ」


 仁川さんの言葉に須藤さんがツッコミを入れる。

 これが私たちが驚かされた原因である。

 先ほど、私たちは須藤さんが作ったという弁当の写真を見せてもらったのだ。

 それがとても須藤さんの雰囲気からは想像できない──いかにも料理上手な女の子が作るような弁当だったのだ。

 一般的な女子高生が使っているような弁当箱という狭い空間の中で、色彩豊かなうえに栄養のバランスを考えられていた──そして、とても美味しそうなお弁当であった。

 ギャルっぽい雰囲気の彼女が作ったとは想像が全くつかない。


「これ、お母さんが作った、とか?」


 吉田さんがそんな失礼なことを呟く。

 だが、まだそちらの方が想像がつく気がする。

 母親にとって、娘という存在はいつまだ経っても子供である。

 可愛がっているのであれば、このようなお弁当を作ってもおかしくは……


「失礼ね。全部私が作ったわよ」

「「えっ!?」」


 須藤さんの言葉に私と吉田さんは声をそろえて驚く。

 その反応に須藤さんの眉間に青筋が浮かんだ(気がする)。

 そんな私たちの会話に仁川さんが笑いながら入ってくる。


「まあ、信じられなくても仕方がないよね。どう見ても料理とか全くしなさそうなギャルがこんな可愛らしい弁当を作っているなんて、天地がひっくり返ってもありえないよね?」

「いや、流石にそこまでは……」


 仁川さんの言葉に私は否定する。

 流石の私もそこまでは思っていなかった。

 別にギャルでも料理をする人ぐらいいるだろう。

 私が驚いたのは、須藤さんのようなクールな雰囲気の女性がこんな可愛らしいお弁当を作っていることなのだ。


「ちなみに、前日からしっかりと仕込みをしたうえ、朝の5時起きで弁当を作っているのよ。しかも、ほとんど毎日」

「「っ!?」」


 さらに須藤さんからは想像がつかない情報を仁川さんから聞かされた。

 家族の弁当を作る母親はそれぐらい早起きであることは知っている。

 現に私の母親だって、早起きをして弁当を作ってくれている。

 だが、それでももう少し手抜きである。


「ちなみに、同時に朝食と家族の弁当を作っているわ」

「す、すごいわね」


 仁川さんの言葉に私は素直に驚くしかなかった。

 長い付き合いの彼女が言うのだから、これは本当のことなのだろう。

 お弁当の写真だけでなく、細かな描写まで伝えられれば信じざるを得ない。


「これだけ料理ができれば、もう立派なお嫁さんになれるわね」

「ええ、そうね。私が男だったら、すぐにでもお嫁に貰いたいぐらいよ」


 吉田さんの言葉に私は賛同する。

 本当にそれほど素晴らしいお弁当だった。

 しかし、そんな私たちの反応に仁川さんが呆れたような声を上げる。


「まあ、これほどすごいのに、灯は本命には作っていないんだけどね」

「「え?」」

「ちょっ、杏っ!?」


 仁川さんの言葉に私たちは呆けた声を出し、須藤さんが止めようとする。

 しかし、もうすでに私たちは気付いてしまった。


「須藤さん、こんだけ料理が上手なのに、本命のお弁当を作っていないの?」

「こんなお弁当を渡したら、それだけで胃袋を掴めそうなのに……」


 私たちは別の意味で驚いてしまった。

 これほど料理が上手いのであれば、それを武器に好きな人にアタックをすれば成功すると思う。

 ルックスもギャルっぽい雰囲気に選り好みはあるかもしれないが、かなり整っている部類に入るだろう。

 彼の好きな人の好みがどうかはわからないが……私に告白している時点で、若干危ない気もするが……


「だって、いきなりお弁当なんか渡しても、重いと思われるでしょ?」

「……たしかにそうね」


 須藤さんが恥ずかしそうに告げた言葉に私は納得する。

 たしかに彼女の言う通りかもしれない。

 いくら好きだからと言って、お弁当を作ってくる女は男からしたら怖いのかもしれない。

 何らかの理由があれば、別なのかもしれないが……


「何の話をしているんだ?」

「「「「っ!?」」」」


 いきなり声を掛けられ、四人とも驚いてしまった。

 視線を向けると、そこには二人の男子生徒が立っていた。







ブックマーク・評価・レビュー等は作者のやる気につながるので、是非お願いします。

勝手にランキングの方もよろしくお願いします。


女子のお弁当についてはあくまで作者の個人的見解です。

別に弁当ぐらいは男でも作りますし、現に作者も普通に料理します。

まあ、栄養も色味もあれですが……男弁当は茶色が多くなりますよね?

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