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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第七章 成長した転生貴族は冒険者になる 【学院編2】
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閑話9-3 助けられた少女は高校生になった


 高校入学から1ヶ月が経った。

 私の高校生活はさほど悪くはないだろう。


 勉強もついていくことができる。

 いや、まだ入学してから1ヶ月なので、大した内容はしていないのでそれぐらいは当然だろうか?


 友人もできた。

 いじめられていた中学2年生の時に比べれば、信じられない生活である。


 クラスの中での立ち位置も定まった。

 真面目なタイプだからだろうか、成績が良いからだろうか、委員長という立場になった。

 誰も立候補しないので、先生から任された。

 これが中学時代であれば、いじめの可能性も考えただろう。

 しかし、高校生にもなって、そんないじめをする人はいないようだ。

 そもそも、まだまだ周囲に知らない人が多い状況で。そんないじめをする理由もない。

 とりあえず、先生は純粋に私に頼みたかったのだろう。

 その気持ちが分かったからこそ、私は受け入れた。

 頼られることは嬉しいと思っているからだ。


 こんなに楽しい高校生活も全く問題がないわけではない。

 一番の問題は私の隣である。

 私の隣──吉田さんと私は最低限しか話すことができていなかった。

 あの人の妹さんということで、話しづらいとは思っている。

 それでも何度か話しかけたりしているのだ。

 だが、彼女はまるで何の興味のないように返事をしてくる。

 人の話を聞く態度ではないと、普通は怒るべきかもしれない。

 しかし、私はそうすることはできなかったのだ。

 彼女がこのようになった理由は私も関係しているかもしれないからだ。

 あの事件のせいで、彼女はこのように……と。


「どうしたの?」

「えっ!?」


 いきなり吉田さんに声を掛けられ、私は驚いたような声を上げる。

 彼女から話しかけられるのは初めてだったからだ。

 そんな私に彼女は告げてくる。


「私のことを見ているようだったから……」

「あ、ごめん」


 吉田さんの言葉に私は謝罪をする。

 どうやら、彼女が気になるほどじっと見つめてしまっていたようだ。

 これは失礼かもしれない。

 彼女とはまだ友人にはなっていない。

 ただのクラスメートに対して、不躾な視線を向けるのは失礼だろう。

 だからこそ、私は謝罪したわけだ。


「別に、気にしていない」

「……」


 しかし、吉田さんから帰ってきたのはそんな言葉だった。

 私はどう反応していいかわからなかった。

 そして、ふと彼女の手元に視線を向ける。

 そこにはなぜか教科書があった。

 いや、高校生なのだから、手元に教科書があってもおかしくはない。

 しかし、科目がおかしいのだ。

 次の授業は数学──しかし、彼女の手元にあるのは日本史なのだ。


「どうして日本史の教科書?」


 私は思わずそんなことを呟いてしまった。

 別に質問をしたつもりはない。

 純粋な疑問を口にしただけである。 

 しかし、これだけ近くに居れば、当然そんな言葉も耳に入る。


「もちろん、勉強するためだけど?」

「予習で? でも、次の時間は数学よ?」


 吉田さんの言葉に私はそう切り返した。

 授業を予習するのであれば、数学の勉強をするのが普通だろう。

 それに、復習をするにしても日本史はない。

 少なくとも、ここ数日は日本史の授業がなかったからである。

 そんな私の疑問に吉田さんは答える。


「予習じゃないわ」

「じゃあ、復習?」

「それも違うわ」

「……何をしているの?」


 予習でも復習でもない──彼女が何を言っているのかわからなかった。

 一体、彼女は何のために教科書なんか読んでいるのだろうか?

 日本史が好き?

 それなら可能性はあるのかもしれないが……


「受験勉強よ」

「受験勉強?」


 予想外の言葉に私は驚いてしまう。

 高校入学したばかりなのに、偉く意識の高い事を言っている。

 ここは別に進学率がさほど高いわけでもない。

 当然、進学する場合も有名私立大学へは毎年数名程度行くレベルである。

 そんな学校に進学をして、この時期にこんな言葉を聞くとは……


「私、法学部志望なの」

「法学部?」

「検事になりたいの」

「それはまた……」


 また予想外の言葉だった。

 女子高生から到底聞くことのできない言葉だった。

 まだ弁護士とかだったら、理解はできる。

 子供でもよく聞く職業だからである。

 といっても、自分でなりたいという子供は少ないと思うけど……

 しかし、検事となってくるともっと数が減ってくるだろう。

 もし子供が「検事になりたい」と言うのであれば、有名アイドルが主役をやっていたドラマでも見たのかと思ってしまうぐらいに……

 おそらく、彼女はそんなことはないと思うが……






ブックマーク・評価・レビュー等は作者のやる気につながるので、是非お願いします。

勝手にランキングの方もよろしくお願いします。


弁護士・検事についての子供の印象はあくまでも想像です。

作者の子供時代(せいぜい中学時代まで)もあまりそういう職業に興味はなかったからです。

まあ、作者は一般的な子供とはかけ離れていたかもしれませんが……

実際には弁護士・検事になりたいと思う子供もいるかもしれませんね。


ちなみに、なぜ日本史を勉強しているのかと言うと、作者が一番好きな科目だからです。

一応、法学部にも日本史の受験科目もあるみたいですし、おかしなことはないと思います。

これを重点的に勉強をする人がいるのか知りませんが……作者は理系ですので。

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