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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第七章 成長した転生貴族は冒険者になる 【学院編2】
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閑話8-2 第二王女と公爵令嬢の会話


「ふうん……【魔力吸収効果】ね。それで私の身を守るように、と?」

「ええ、そういうことよ。シャルロットは敵が多いから、少しでも守る手段が多い方がいいから」


 シャルロットの言葉にイリアが頷く。

 グレインからネックレスを送られた理由についてイリアが説明をし、シャルロットが納得したわけだ。

 しかし、シャルロットは少し不満そうである。


「グレイン君は私のことを見くびっているのかしら?」

「どういうこと?」


 シャルロットの言葉にイリアが聞き返す。

 想定外の言葉が聞こえてきたからである。


「私だって、学院に入学してから三年──魔法の制御も大分うまくなったでしょう? 少なくとも、魔法だけなら同級生の中でも上位に入るはずよ」

「ああ、そういうこと」


 シャルロットの言葉にイリアが納得する。

 彼女が言いたいのは、グレインがシャルロットのことを評価していない、ということなのだろう。

 まあ、イリアはシャルロットの怒りもわからないわけではない。

 だが、グレインの気持ちを無碍にするようなことはシャルロットにはしてほしくなかった。


「生半可な相手だったら、私一人でも対処できると思うわ。シリウス君たちと一緒に訓練もしているんだから」


 シャルロットは自信満々に胸を張る。

 彼女の自信の表れだろうか、威圧感のような者を感じる。

 そのせいでイリアは苦しくなってしまう。

 しかし、今はそんなことを気にしている時ではない。


「生半可じゃない相手が来たときが困るんでしょう?」

「え?」


 イリアの言葉にシャルロットが呆けた声を出す。

 これは本気で言っているのだろうか?

 イリアはかなり心配になってしまう。

 シリウスたちと一緒に訓練をするようになって自分の力に対して自信を持つようになったことは良い事ではあるが、それにより弊害も出てしまっている。

 なまじシリウスたちがグレインの──ひいてはアレン=カルヴァドスの身内ということで、一緒に訓練していることでかなりの実力を持っていると勘違いするようになってしまったのだ。

 おそらくではあるが、シャルロットの実力はそこまで高くはないと思う。

 といっても、世間一般の平均よりは高いはずである。

 グレインはともかく、シリウスたちに比べると大分劣るということだ。


「暗殺をしようとしているのに、大した実力のない奴を雇う?」

「え……雇わない?」

「そうよ。普通は実力のある──なんらかの実績を持っている奴を使うでしょうね。そんな奴にシャルは勝てるの?」

「う……」


 イリアの言葉にシャルロットは言葉を詰まらせる。

 指摘がもっともだったからだ。

 自信をつけたとしても、流石に名のある暗殺者を相手に立ち回ることなどできるとは思えなかった。

 若干、涙目になってしまっている。


「じゃあ、どうすればいいの? 私はむざむざやられないといけないの?」

「……そのためのネックレスでしょう? 魔法による暗殺だったら、防いでくれるみたいだし」

「あっ、そうか」


 イリアの指摘にシャルロットも気付いた。

 いつの間にか、涙も引っ込んでいた。

 しかし、イリアは注意もしておく。


「でも、しっかりと対策を立てておいた方が良いわね」

「対策?」


 イリアの言葉にシャルロットは首を傾げる。

 どうやら思い至っていないようだ。


「シャルが暗殺されそうになった、と仮定しての対策よ」

「ああ、そういうことか」


 はっきりと言うと、シャルロットも納得する。

 納得してくれたということで、イリアもそのまま話を進める。


「とりあえず、そのネックレスは肌身離さずつけておくべきね」

「え? どんなときも?」

「当たり前じゃない。それじゃないと、持っている意味がないじゃない」


 イリアは呆れたように告げる。

 いくらネックレスに【魔力吸収効果】があったとしても、実際に身に付けていなければ意味がない。

 その効果が発揮されないからだ。

 いや、ネックレスに魔法を向けられれば、効果もあるだろう。

 しかし、それでは意味がない。

 シャルロットに向けられた魔法を防ぐことはできないのだから……


「でも、これに合わないドレスとか着ることになったら……」

「ファッションなんて、どうでもいいでしょ! 命の方が大事なんだからっ!」

「ひゃうっ!?」


 シャルロットの発言に思わずイリアが怒鳴る。

 こんな話をしているときに、何を考えているのだろうか?

 イリアは本気で心配になってしまう。

 危機感というものが足りないのではないだろうか?

 しかし、シャルロットにも言い分があった。


「で、でも……私は王女だから、それ相応の格好をしないといけないのに……」

「はぁ……それは否定しないわ。私だって、同じような悩みはあるんだから」


 再び涙目になったシャルロットを見て、イリアはため息をつく。

 流石に怒鳴ったのはやりすぎだと感じたようだ。

 シャルロットには彼女なりの考えがあったのだ。

 王女であるシャルロットにとって、きちんと着飾るのは大事なことである。

 下手な服装でもしようものなら、正妃派の人間に批判の付け入る隙を与えてしまうことになる。

 そうならないためにも、シャルロットは人一倍身だしなみに気を付けている。

 それこそ、公爵令嬢であるイリアですら及ばないほどに……






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