閑話8-1 第二王女と公爵令嬢の会話
王立学院のとある空き教室──そこに二人の女子生徒がいた。
一人はシャルロット=リクール──この国の第二王女である。
もう一人はイリア=キュラソー──キュラソー公爵令嬢で、シャルロットの数少ない友人でもあった。
そんな彼女たちがなぜこんなところにいるのかというと……
「シャルロット、これ」
「なに?」
イリアに何かを渡され、シャルロットが首を傾げる。
それは袋だった。
片手で持てるほどの大きさしかなく、中には小さな何かが入っているようだった。
シャルロットは中身を確認する。
「これは、ネックレス? 見たことがない宝石だけど……」
中身を確認し、シャルロットは呟く。
そして、あることに気が付く。
「イリアも持っているのね?」
同じネックレスがイリアの首にあるのを見て、そう質問した。
しかし、同じネックレスをくれる理由がわからなかった。
別にペアルックとかをする間柄でもないからである。
疑問に思うシャルロットにイリアは説明をする。
「それはグレイン君たちからのプレゼントよ」
「え? なんで?」
予想外の言葉にシャルロットは呆けた声を出してしまう。
親しい知人ではあるが、個人的にプレゼントをもらうような間柄ではないからだ。
「その宝石は【魔石】らしいわ。しかも、魔法を吸収してくれる効果があるみたいよ」
「え? それって、かなり高級なものなんじゃ……」
「まあ、そうね。魔石自体がまだ貴重なのに、こんなすごい力があるのならかなりの値段になるでしょうね」
「そうでしょ? それなのに、どうして私なんかに?」
シャルロットは慌ててしまう。
ただでさえプレゼントをもらったことに驚いているのに、その品物がかなり高価な者なのだ。
王族ではあるが、生まれのせいで比較的謙虚に生きてきている。
だからこそ、物の値段などには敏感なのだ。
しかし、そんなシャルロットにイリアは真実を告げる。
「値段を心配する必要はないわよ。その魔石はグレイン君たちが倒した魔物から採集されたものだから、魔石自体にお金はかかっていないわ」
「そうなの? じゃあ、よかったかな」
イリアさんの説明にシャルロットは安堵の息を吐く。
自分に送るために高価な買い物をしたのなら、申し訳なくて仕方がなかったからだ。
とりあえず、その心配をする必要はなかったようだ。
しかし、気になることがある。
「でも、どうしてこれを私に?」
「正確に言うと、私も、よ」
「それはどうでもいいでしょう? というか、イリアはまだわかるわよ」
「どうして?」
今度はイリアが質問をする番だった。
シャルロットの言葉の意味がわからなかったのだ。
「だって、グレイン君の婚約者の一人じゃない。ネックレスを送られるには十分な間柄でしょ?」
「ああ、そういうことね」
シャルロットの説明にイリアは納得する。
婚約者の女性にプレゼントとしてネックレスを送る──そう考えるのなら、たしかにおかしくはないのかもしれない。
グレインがそんなことをするタイプであるかは置いておくとして……
だが、ここでシャルロットはある可能性に気づく。
「はっ!?」
「どうしたの?」
「もしかして、グレイン君は私のことも……」
「それはないわね」
「否定が早いっ! 最後まで言わせてよ」
すべてを告げる前にイリアに否定され、シャルロットは思わず文句を言ってしまう。
シャルロットが言おうとしたのは、グレインが彼女も婚約者にしようとしているかもしれない──ということだ。
グレインの事情を知っている者であれば、彼の婚約が基本的に相手側からされていることを理解している。
しかし、シャルロットはそんな事情を知らないので、そういう考えに至ってしまったわけである。
といっても、あっさりと否定されてしまったが……
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